Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 臨床化学・免疫血清02
HBV再活性化対策の現状と課題——電子カルテデータからみたスクリーニングの実態


B型肝炎治療ガイドラインに対する日本の現状1, 2)
2022年に改訂された日本肝臓学会(JSH)の『B型肝炎治療ガイドライン(第4版)』では、がん化学療法や免疫抑制療法(IST)の治療開始前にHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体を全例測定すること、さらに既感染者(HBc抗体またはHBs抗体陽性者)では1〜3カ月ごとのHBV-DNAモニタリングを行うことがスクリーニング体制のポイントとして示されている1)。
しかし、2026年2月に発表された大規模調査の結果、がん化学療法を受けた患者、つまりはスクリーニングの対象者16万2,040例のうち、HBs抗原検査を受けた患者は57.9%(9万3,801例)にとどまった。さらにHBs抗原陰性患者(9万171例)のうち、その後のHBc抗体およびHBs抗体検査に進んだ割合はわずか29.4%(2万6,532例)に過ぎず、HBc抗体またはHBs抗体陽性患者(8,331例)におけるHBV-DNA検査実施率も56.0%(4,669例)であった2)。
臨床化学・免疫血清検査のエキスパートレビュー
近年、がん化学療法やIST、さらには分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)などの新規治療薬の目覚ましい進歩に伴い、B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化が臨床現場において極めて重要な課題となっている。かつては主にHBs抗原陽性、いわゆるキャリアからの再活性化が問題視されていたが、現在では既往感染例、すなわちHBs抗原陰性かつHBc抗体またはHBs抗体陽性から再活性化する「de novo B型肝炎」の発症予防が急務とされている。
1.スクリーニング・モニタリング体制の課題
本調査の数値は全体集計であり、施設間の格差が存在することは考慮すべきである。
しかし、前述したとおり、ICIや分子標的薬における再活性化リスク3)、さらにHBs抗原陰性例のリスクは低いもののHIV治療薬変更に伴う再活性化リスク4)についても報告されており、スクリーニングならびにモニタリングの重要性は今後より一層高まることが予想される。そのような中で、本調査の実施率は医療安全の観点から看過できない課題を示している。
2.国際ガイドラインとの方針の違い
2025年に発表された米国消化器病学会(AGA)および欧州肝臓学会(EASL)の最新のガイドラインにおいては、ISTによる再活性化リスクの層別化がより明確化されている。高リスク患者には抗ウイルス薬の予防投与を推奨し、中・低リスク患者においてはHBV-DNA検査などの定期的なモニタリングを推奨するなど、リスクに応じた個別化医療が強調されている5,6)。
HBV再活性化対策における検査体制構築と臨床検査技師の役割
HBV再活性化対策において、AGAやEASLが「リスク層別化に基づく予防投与」へと舵を切る中、JSHは「高精度な検査に基づく厳格なモニタリングと先制治療」を維持している。この日本独自のスタンスは、国内の臨床検査技術の高さと報告の迅速性が基盤となって成立している。
しかし臨床現場では、入り口となるスクリーニング検査自体が適切に依頼されないケースが散見され、これを臨床検査技師の測定技術のみでカバーすることは困難である。臨床検査技師には、検査のアルゴリズムを熟知するだけでなく、リスクマネジメントの要として、アラートシステムやリフレックステストの導入、フォーローアップ漏れの防止策といった「オーダー漏れを防ぐ院内システムの構築」に積極的に参画することが求められているのではないだろうか。
引用文献
1)日本肝臓学会・編:B型肝炎治療ガイドライン 第4版(https://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/jsh_guidlines/hepatitis_b.html).2022
2)Hattori M, et al : Prevention of hepatitis B virus reactivation according to hepatitis B surface antigen status in patients receiving systemic chemotherapy in Japan using an electronic medical record database. Int J Clin Oncol, 31 : 695-702, 2026
3)Jin Y, et al : HBV reactivation during immunotherapy for hepatocellular carcinoma: risk factors and clinical management. Front Immunol, 17 : 1765054, 2026
4)Swaine T, et al : Use of dual ART in individuals with different HBV serological patterns. Curr Opin HIV AIDS, 21 : 259-264, 2026
5)Ali FS, et al : AGA clinical practice guideline on the prevention and treatment of hepatitis B virus reactivation in at-risk individuals. Gastroenterology, 168 : 267-284, 2025
6)European Association for the Study of the Liver : EASL clinical practice guidelines on the management of hepatitis B virus infection. J Hepatol, 83 : 502-583, 2025
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