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キャリア・学び2026.10.30 06:00ロックアイコン

Voice of Lab. file 12 西脇 啓太(刈谷豊田総合病院臨床検査・病理技術科)

神経生理が“わかる”から“できる”へ——現場で学び続けられる環境を目指して

神経伝導検査や脳波検査、術中モニタリングなどの神経生理検査は、知識だけでなく「実際にできる」ことが求められる分野だと感じています。 私は現在、「“わかる”から“できる”へ」をテーマに、神経生理検査を中心とした若手教育や研究活動に取り組んでいます。大切にしているのは、実際に手を動かしながら学び、“できるようになるまで支える”ことです。 今回は、神経生理分野で取り組んでいる教育活動や研究、そして今後目指していきたい教育環境についてご紹介します。 私、こんなことしてます! 1.「教える」のではなく、「できるまで支える」 神経伝導検査(NCS)は、教科書で知識を学ぶだけではなかなか身につきません。 実際に手を動かし、経験を積むことで理解が深まる検査 だと感じています。得られた波形の背景を考え、自分なりに答えを導いていく。その過程にこそ、NCSの面白さがあります。 私自身、若手の頃に多くの先生方や先輩技師の皆さんと出会い、検査技術だけでなく、波形の考え方や患者さんとの向き合い方まで教えていただきました。その経験が、今の自分の土台になっています。 現在私が主催している「あいちNCS教室」は、毎回定員4名という少人数制の実習型研修会です。この教室で大切にしているのは、講師がデモンストレーションを見せるのではなく、実技の時間をしっかり確保し、参加者自身に実際に検査をしてもらうことです。うまくいかない場面も含め、その場で一緒に考え、直接フィードバックしていく—— その繰り返しが、知識として「わかる」から、実際に「できる」ことへと変えていく と考えています。 あいちNCS教室講義の様子 NCSは、「見る」だけでは身につきません。実際に手を動かし、思うようにいかない経験を重ね、その理由を一緒に考える。その積み重ねの先に、検査への理解と自信が育っていきます。 この考え方は、院内での後輩指導でも変わりません。ただ検査を任せるだけでも、手技を見せるだけでもなく、一人ひとりが自信を持って検査に臨めるよう、 できるようになるまで一緒に考え、成長を支える ことを心掛けています。 私が目指しているのは、「教えること」ではなく、「できるようになるまで支える教育」です。 2.現場の「なぜ?」を、そのままにしない 日本臨床神経生理学会でのポスター発表 教育と同じように、 研究も現場から生まれる もの だと考えています。 現在は、手根管症候群の運動障害を、より実際の病態に近い形で評価できないかという視点で研究に取り組んでいます。きっかけは、日々の検査の中で抱いた「従来の評価だけでは説明しきれない症例があるのではないか」という小さな疑問でした。 その疑問を出発点に新たな評価方法を検討し、得られた成果を学会で発表するとともに、国際誌『Journal of Clinical Neurophysiology』への論文掲載にもつながりました。 研究は、論文を書くことが目的ではありません。 現場で感じた疑問を客観的なデータとして示し、 その成果を教育や臨床へ還元することに意味がある と考えています。 現場で生まれた疑問が研究につながり、その研究成果が再び現場へ返ってくる。この循環を続けることが、神経生理検査の質を高め、より良い医療につながると信じています。 3.学べる環境を整えることも、役割の一つ 神経生理検査は、 施設によって経験できる症例や検査手技に差が生じやすい分野 です。 私自身、さまざまな施設の方と関わる中で、「学びたくても学べない」「相談できる人が近くにいない」と感じている若手技師が少なくないことを実感してきました。 そうした課題を少しでも解決したいという思いから、現在は愛知県臨床検査技師会生理検査研究班の部門長として、研究会や研修会の企画・運営に携わっています。「翌日から現場で実践できる内容」を意識し、質問しやすく参加しやすい雰囲気づくりを心がけています。 また、AiCCLS(愛知県臨床検査標準化協議会)では、脳波検査の手引書作成に委員長として携わり、「読んで理解する」だけでなく、「実際に検査ができるようになること」を目指して、電極装着や記録条件など実務に直結する内容をまとめました。 若手技師が安心して学び続けられる環境は、一人の力ではつくることができません。 施設の垣根を越えて学び合い、支え合える環境を育てていくこと も、自分の大切な役割の一つです。 —{明日のリーダーが今、考えていること}— 明日のリーダーが今、考えていること 神経生理検査は、知識だけでなく、経験を積み重ねながら学んでいく分野です。だからこそ、「知識を伝えること」以上に、「できるようになるまで支えること」を大切にしています。 自分自身も、多くの先生方や技師の方々との出会いに支えられ、数え切れないほど多くのことを教えていただきました。振り返ってみると、今の自分があるのは、根気強く向き合い、見守ってくださる方々がいたからだと思います。これからは、 自分が受け取った知識や技術、そして学ぶ楽しさを次の世代へつないでいきたい と考えています。 教育、研究、地域活動は、一見すると別々の取り組みに見えるかもしれません。しかし、私の中ではすべてが「現場でより良い検査を実践できる臨床検査技師を育てる」という一つの目標につながっています。 国際学会ポスター発表質疑の様子 これからも「“わかる”から“できる”へ」という想いを大切にしながら、 若手技師が安心して挑戦し、成長できる環境づくり を続けていきます。 一人ひとりと向き合える小さな学びの場から、自分の力で波形を読み解ける技師が一人でも多く育っていく。そんな循環を、これからも地道につくっていきたいと思います。

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業界ニュース2026.10.30 05:00ロックアイコン

編集部 Pick Up ニュース[10月30日号]

忙しい臨床検査技師のための注目ニュースまとめ

臨床検査技師が押さえておきたい今週注目の5本 「穿刺血」検査薬のOTC化、議論再開へ 厚労省の部会が30日、低侵襲性の穿刺血など、血液検体を用いた検査薬のスイッチOTC化について議論を再開する。26年度中の結論を求めた政府の規制改革実施計画などを踏まえた対応。 「微生物検査の精度確保」も論点に 厚労省が感染症部会で、薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの次期改定に向け、微生物検査の精度確保を論点の一つに提示。「全国で一定水準の検査体制をどう確保するか」提起。 結核罹患率の30年目標「8以下」 厚労省が、結核の人口10万人当たりの罹患率について、2030年の目標を「8以下」とすることを関係部会に提案。委員の反対意見はなく、今年度内に改正予定の予防指針に明記する見通し。 サテライト施設・対面授業の在り方検討 文科省の会議が、臨床検査技師らの養成校を含む専修学校の質向上について対策を議論。人口減少地域での専門人材の確保に向け、サテライト施設や通信制課程の対面授業の在り方を優先的に検討。 【新製品】中型の免疫測定装置「AIA-CL600」 東ソーが、中型の全自動化学発光酵素免疫測定装置「AIA-CL600」の国内販売を開始。既存シリーズの準大型機と小型機の間を補完する機種で、専用試薬による国内検査項目63項目に対応。

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キャリア・学び2026.10.28 06:00ロックアイコン

AI×循環器検査 AI 解析の臨床応用とマネジメント #5

AI時代の心エコー自動計測——使いこなすためのポイントと注意点

はじめに 経胸壁心エコー図検査(TTE)は、薄暗い部屋で患者さんと二人きり、限られた時間の中で「やり直しのきかない」判断を迫られる孤独な検査です。診断に足る画像を描出し、必要な項目を計測することが、私たちソノグラファーの基本的な役割となります。 近年は、構造的心疾患に対する精密検査、新たな治療薬の適応判断や薬効評価など、TTEの果たす役割と臨床的な重要性は以前よりも格段に増しています。そのようなTTEにおいて、「診断や治療に直結する重要な所見の見落としがないか」「限られた検査時間内で多くの項目を漏れなく正確に計測できているか」といった不安は、経験年数を問わず、多くのソノグラファーが共通して抱えるプレッシャーの一つではないでしょうか。 こうした私たちの不安に対し、近年のAIや自動計測機能は、単なる自動化を超えて私たちに寄り添い、ミスを防ぐ「最高のパートナー」としての役割が期待されています。本稿では、TTEで自動計測機能を活用する際のポイントや注意点について解説します。 自動計測の精度を左右する画像取得と結果確認 計測を行うにあたり最も大事なことは、①断層像では適正断面を描出し、心筋や血管などの組織境界を明瞭にすること、②ドプラ法では血流方向とドプラビームの入射角を意識し、適切な画像を描出すること——です。AIや自動計測機能がどんなに優れていても、これらの撮像条件が満たされなければ、ソノグラファーの意図した計測値を得ることは困難です。 また、近年の自動計測機能はノイズを自動で識別・除外する性能が向上していますが、誤トレースを完全に排除できるわけではありません。そのため、適正な画像を描出できたとしても計測結果を鵜呑みにせず、必ず計測ポイントやトレースラインなどを確認する必要があります。この“どのような断面で、どこをどのように計測するか”は、手動計測でも自動計測であってもガイドラインに沿って行うことが基本です 1,2) 。 1.断層像計測——適正断面が自動計測の前提 ソノグラファーの目視で計測部位の判断に迷うような断層像では、どんなに優れたAIや自動計測機能であっても適正な計測はできません。 例えば、傍胸骨長軸断面で左室内腔を計測する場合には、乳頭筋や腱索が描出されていると、それらを内膜境界面と誤認識して計測されることがあります。そのような場合、自動計測後に計測ポイントを確認し、ソノグラファーによって適正な位置に修正する必要があります。 また、装置やアプリケーションによっては拡張期/収縮期の時相を自動認識し、それぞれの心腔計測までフルオートでできるものもあります。このような機能を活用することで、検査時間の短縮につながります( 動画1 )。 2.ドプラ計測——心拍の選択、入射角、設定感度がポイント ドプラ計測における自動計測の最大の利点は、複数波形の自動認識と平均化です。 特に、心房細動症例では自動計測が有用です。手動計測の場合、心房細動症例のドプラ計測では、5心拍以上の平均値を用いることが推奨されています 1) 。しかし、この方法を用いると臨床現場では計測に時間がかかってしまうため、代表心拍やindex beat * が代用的に用いられています 3) 。 動画2 および 動画3 に、心房細動例における左室流出路血流のVTI(velocity time integral)、三尖弁逆流波形をそれぞれ自動計測した例を示します。いずれも一部修正を行っていますが、瞬時に波形の認識・計測が行われ、最大血流速度や平均値が算出されます。このように、心房細動の症例において自動計測を活用すれば、手動計測に比べ、ガイドラインに沿った計測を短時間で行うことができ、再現性の高いデータが得られます。 ただし、その前提となるのは適切な画像の描出です。ドプラ計測では、血流方向とドプラビームの入射角に注意する必要があります。血流方向とドプラビームの入射角は20°以下であれば、血流速度の測定誤差は6%以下とされ、無視できる範囲といわれています 4) 。 もう一つ注意したいのが、自動計測の設定感度です。髙比良らによると、自動計測の設定感度によって計測値は変わり、手動計測に比べ、低感度では高値傾向、高感度では信号密度の高い内側のみをトレースするため低値傾向となりうることが示唆されています 5) 。この特性を理解し、適切なエンベロープが描画されるように感度の調整が必要となります。 図 は、経皮的僧帽弁接合不全修復術(TEER)後のフォローアップ時の僧帽弁圧較差を計測した例です。 A R波以降の収縮期のノイズを含めてトレースされている B 拡張期の時相でトレースすると、正しい圧較差が計測できる(手動計測) 図 TEER後のフォローアップ時の僧帽弁圧較差〔筆者作成〕 自動計測のトレース結果( 図A )は、一見すると良好なトレース結果と思われるかもしれませんが、選択された心拍ではR波以降の収縮期のノイズを含めてトレースされています。左室流入波形は、拡張期のみに認められる血流波形です。本来であれば、手動計測( 図B )のように拡張期の時相でトレースをすることが、正しい圧較差の計測となります。このように適正な画像調整を行い、一見すると正しく計測されているように見えても、心周期なども考慮して計測結果に矛盾がないかをソノグラファー自身の目で確認することが重要です。 おわりに AIや自動計測機能は万能な「魔法」ではありませんが、上手に付き合えば「最高のパートナー」になります。画像取得時には超音波検査の基本原理を忘れず、自動計測が出力した結果をガイドラインという確かな尺度とソノグラファー自身の目で確認することが必要です。 最終的に計測結果をレポートに記載できるかの判断は私たちソノグラファーに委ねられています。日々進化するAIや自動計測機能を適切にマネジメントし、臨床現場での安全性と効率性を両立させることが、これからのTTEを支える私たちの使命と考えます。 *:連続3心拍で、最後の心拍と1心拍前とのRR間隔(RR1)と、1心拍前と2心拍前とのRR間隔(RR2)の比率がほぼ等しい(RR1/RR2≒1)場合の最後の心拍 引用文献 1)Lang RM, et al : Recommendations for cardiac chamber quantification by echocardiography in adults: an update from the American Society of Echocardiography and the European Association of Cardiovascular Imaging. J Am Soc Echocardiogr, 28 : 1-39.e14, 2015 2)日本心エコー図学会ソノグラファー委員会・編 : 心エコー図の診断・計測精度管理の手引き.2023(https://www.jse.gr.jp/contents/guideline/data/guideline_seido2023_v4.pdf,アクセス日:2026年8月2日) 3)Suzuki S, et al : Ventricular contractility in atrial fibrillation is predictable by mechanical restitution and potentiation. Am J Physiol, 275 : H1513-H1519, 1998 4)種村正,他・編 : 心臓超音波テキスト 第3版.医歯薬出版,p38,2021 5)髙比良直,他 : 経胸壁心エコー図検査における断層法とドプラ法の自動計測精度の検討.超音波検査技術,47 : 479-489,2022

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キャリア・学び2026.10.26 06:00

臨床検査×人文学のWebエッセイ「見えないものを読もうとして」 #01

ロビーを眺めるその理由

「読む」という言葉について考えたことはあるだろうか。 私は臨床検査技師として働く傍ら、大学院で文学を学んでいる。以前の私は、本を読むことと、空気を読むことが、同じ「読む」という言葉で表現されていることを不思議に思ったことはなかった。 しかし、文学を学ぶ中で、「読む」とは文字を追うことだけではなく、その背後にある意味や関係性を汲み取ろうとする営みでもあると考えるようになった。小説を読む。広告を読む。街並みを読む。あるいは、人を読む。「読む」という言葉は、私が思っていた以上に広い世界を持っていたのである。 そう考えたとき、私はふと思った。では、検査室で私たちが「データを読む」とき、本当はなにを読んでいるのだろうか。 検査室へ戻る前に 先日の夜勤明けのことである。その日は輸血業務を担当したのだが、実に慌ただしい一晩だった。夜勤の“相方”として検体検査に従事した後輩技師は、状況を察して何度もフォローに入ってくれた。朝になり、引き継ぎを終えた私は、その後輩を誘って売店にアイスを買いに行った。 「鈴木さん、俺ね、仕事に入る前に必ずやることがあるんすよ」 病院1階のロビーで、検査室に戻るエレベーターを待っているときだった。 「おう、なにをしとるんだ?」 そう尋ねると、彼は多くの患者で混み合うロビーへ視線を向けた。 「一度、このロビーを眺めるんです。そうするとね、自分の仕事が実際にあの人たちの生活に繋がってるんだなぁ、って思えるんすよね」 ちょうどエレベーターが到着した。扉が閉まると、患者たちの姿は視界から消えた。 「それだけでね、めっちゃ忙しくても、まあ頑張ろうかなって踏ん張れるんすよ」 その言葉が胸に残った。 検査結果の向こう側を読む 臨床検査業務は、ともすれば無骨な仕事である。忙しくなればなるほど、その無骨さは増していく。提出された検体には患者名が記されている。それでも気づけば採番された番号だけを見て業務を進めてしまう。採血業務でも、生理機能検査でも、「誰々を担当した」という感覚は薄れ、「今日は何件こなした」という言葉に置き換わってしまうことがある。しかし、本来私たちが読んでいるのは、数値だけではないはずだ。 私は、「データを読む」という行為には、数値を受け取る以上の営みがあると思っている。提出された検体を測定し、結果を報告する。その一連の流れの中で、「この患者さんになにが起きているのだろう」と想像すること。それもまた、「読み」の一つではないだろうか。 もちろん、検査には客観性がなにより重要である。思い込みで結果を歪めてしまっては、臨床検査ではなくなってしまう。しかし、患者の状態を想像し、違和感を持つことは、客観性と矛盾するものではない。 この値は本当に妥当だろうか なにかおかしい 患者背景を考えると、この検査結果には違和感がある そう問い続ける姿勢があるからこそ、客観的なデータを臨床に生かすことができるのではないだろうか。 なんとなく検査を行うことと、患者を思い浮かべながら検査を行うこと。その差は、測定値そのものには現れないかもしれない。しかし、「なんか、変です」と医師へ伝える一言や、その理由を筋道立てて説明する姿勢には、確かな違いとなって現れる。 近年、AIは目覚ましい進歩を遂げている。決められた手順を正確にこなす能力だけを競うのであれば、人間はAIにかなわない日も来るだろう。それでも私は、人だからこそ担える仕事は残ると思っている。その検査結果が患者にとってなにを意味するのか。そう問い続けることは、やはり人の仕事なのではないだろうか。 「 この検査結果は、なにを語っているのだろう 」 そう立ち止まり、見えないものを読もうとすること。それは、データの向こうにいる患者の背景に目を向けることでもある。検査室にいると、患者は数字になりやすい。だからこそ、後輩はロビーを眺めるのだろう。「誰のための検査なのか」を忘れないために。 「読む」という行為は、文字だけに向けられるものではない。私たちは毎日、検査データを読み、患者を読み、同僚の表情を読み、ときには自分自身の心まで読もうとしている――。 さて、この文章をここまで読んでくださった皆さんは、今日一日の業務で、なにを読んでいただろうか。検査結果だろうか。患者だろうか。それとも、臨床検査技師として働く自分自身だろうか。

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