
新人臨床検査技師の歩き方 [第22回]
確定申告と副収入に関する知識
90 確定申告は何のために、いつ行うの? 確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得と、それにかかる所得税を自分で計算し、税務署へ申告する手続きです。病院や検査センターなどに勤務し、勤務先で年末調整を受けている人は、原則として必要ありません。申告期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。国税庁のウェブサイトを利用すれば、スマートフォンやパソコンからも申告できます。確定申告は経営者だけのものではありません。就職先や働き方、収入の得方が変わったときには、自分にも必要か確認しましょう。 —{91 医療職でも確定申告が必要になるケース}— 91 医療職でも確定申告が必要になるケース 臨床検査技師などの医療職でも、働き方や収入によっては確定申告が必要です。例えば、複数の医療機関から給与を受け取っている場合、年末調整を受けていない場合、給与以外の所得が年間20万円を超える場合などです。講演料、原稿料、動画配信による収益なども副収入に含まれます。また、医療費控除などを利用し、納め過ぎた税金の還付を受けるために申告することもあります。「勤務先がすべて手続きしてくれる」と思い込まず、毎年、源泉徴収票や副収入の金額を確認し、自分が申告の対象になるかを調べましょう。 —{92 副収入は「収入」ではなく「所得」で考える}— 92 副収入は「収入」ではなく「所得」で考える 副業や兼業を始めたら、受け取った金額と、その仕事のために使った費用を記録しましょう。税金を考える際には、「収入」と「所得」の違いが重要です。例えば、講演料や原稿料として30万円を受け取り、交通費や資料代などの必要経費が8万円かかった場合、所得は22万円です。一定の給与所得者は、給与以外の所得が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。20万円以下でも、住民税の申告が必要になる場合があります。入金記録、請求書、領収書などを日頃から整理し、確定申告の時期まで保管しておきましょう。 —{93 制度と勤務先のルールを自分で確認する}— 93 制度と勤務先のルールを自分で確認する 副業や兼業を始める前には、勤務先の就業規則を確認することが大切です。副業が認められていても、事前の届出や許可が必要な場合があります。また、税金や社会保険の制度は変更されることがあるため、SNSや個人のブログの情報だけで判断しないようにしましょう。国税庁、自治体、日本年金機構など、公的機関が発信する最新情報を確認することが基本です。分からないことがあれば、勤務先の人事・給与担当者や税務署などに相談しましょう。源泉徴収票や給与明細に目を通し、自分から調べる習慣が、「知らなかった」による失敗や損を防ぎます。 —{本日までの歩み}— 本日までの歩み 一般社団法人 臨床検査×わくわくプロジェクト 臨床検査業界を“わくわく”する場にすることを目的に、有志が集まって立ち上げた活動です。まずは自分たちがわくわくすることを探し、そして周囲を巻き込み一緒にわくわくし、最後には業界を巻き込みわくわくした場を広げていく、そんな流れをつくっていこうと活動をしています。詳しい活動の内容は こちら をご覧ください。

変わり続ける検査の現場 #35 京都桂病院
検査室を飛び出し救急の現場へ 段階的参画で広がる検査技師の役割
京都桂病院(京都市、551床)検査科は、臨床検査技師を救急外来に派遣し、心電図や超音波検査、採血、静脈路確保、検体採取・搬送などを担っている。認定救急検査技師の横山健輔氏の提案をきっかけに2023年7月、週1回の活動からスタート。救急医や看護師などと連携しながら段階的に業務を広げ、若手検査技師の育成にもつなげてきた。検査室の外へ活動の場を広げることで、タスクシフト・シェアにとどまらない職種間の相互理解と、新たな専門性の確立を目指している。 京都桂病院は、桂川以西では数少ない大規模総合病院として、京都市西部・乙訓・京都中部エリアにわたる地域医療を担っている。近年は救急医療にも注力。現副院長・救急科部長の寺坂勇亮氏が赴任した2015年に救急科を立ち上げ、2023年1月には新救急集中治療病棟が稼働を開始した。救急医は現在15人体制となり、救急車の受け入れ台数は年間約2500台から大幅に増加。直近では年間約7400台を受け入れるなど、京都市内でもトップクラスの救急病院となっている。 小山賢科長が率いる検査科の臨床検査技師は56人(非常勤含む)。生理検査部門に約20人、その他は検体検査部門などに配属されている。 参画から生まれるニーズ 救急医療への需要が高まる中、検査科が取り組んできたのが、救急外来への臨床検査技師の派遣だ。活動の中心となった横山氏は、生理検査部門で心エコーなどを担当し、救急医療に関心を持っていた。認定救急検査技師の資格を取得した2023年に救急派遣を提案。小山氏も理解を示し、寺坂氏も「一緒に可能性を広げれば病院のアピールにもなる」と快諾した。 ただ、検査科内には当初、人員を救急に出すことに慎重な意見もあった。小山氏は「検査室は内にこもりがち。外へ出てさまざまな職種と交流することは、臨床検査技師にとってプラスになる」と考え、まずは無理のない範囲から始めることを決めた。 2023年7月、週1回午後2時から5時半まで、横山氏1人を派遣する形で活動を開始。この時間帯は救急外来に入り、救急車の受け入れを知らせるホットラインが鳴る段階から、医師や看護師と共に患者対応に加わった。 当初の課題は、救急側が臨床検査技師に何ができるのかを十分に把握していなかったことだった。それは横山氏も同様で、どの業務を担えばよいのか手探り状態でスタート。まず自身の専門性を生かせる超音波検査を強みに、心電図、採血、静脈路確保と少しずつ業務を広げていった。 静脈路確保については、日本臨床衛生検査技師会のタスクシフト・シェアに関する講習を受けた上で、救急外来の看護師から実地指導を受けた。横山氏は、短時間の講習だけでは実際の患者への対応を身に付けるのは難しく、現場で経験を積む必要があったと振り返る。 検査科では、横山氏による週1回の派遣を約1年間続けた後、検体検査部門に所属する経験3~4年程度の若手技師を加え、4人体制へと拡大した。新たに参加した検査技師は、超音波検査や心電図の経験がなかった。まず救急外来の見学から始め、心電図も訓練し、それぞれの習熟度に応じて業務を分担した。派遣日も月・水・金曜日の週3日に増やし、ローテーションを組んで午後の時間帯に1人ずつ配置する運用とした。 救急のスタッフと検査技師(後列、右から寺坂副院長、小山科長、横山氏) 相互理解で「顔の見える」関係に 検査技師の救急外来での活動は、医師や看護師にも変化をもたらした。寺坂氏は「横山さんがエコーをできるのはみんな知っていたので、現場へのアピールとして分かりやすく入ってもらえた。研修医への指導など、われわれにとっても大きなメリットがあった」と振り返る。今ではICUベッドサイドのエコーラウンドにも携わっており、「救急のエコーの質も向上した」と評価する。 こうした変化は、救急派遣後の院内アンケート(対象は看護師、救急救命士)にも表れた。看護師からは心電図や鼻咽頭検体採取、シリンジ採血の検体分注などの業務について高い満足度が示され、「今の業務で十分助かっている」との回答が多かった。 寺坂氏は「私自身も、最初は検査技師がどこまで業務できる職種なのか理解していなかった」と率直に語る。一方で、検査技師も救急外来やICUで何が起きているのかを知る機会は少ない。「実際に一緒に働くことで、お互いの仕事が見えるようになった。検査技師は患者さんをより身近に感じられるようになり、医師側も検査技師の専門性を理解できるようになった。『顔の見える関係』ができたことが一番大きい」と強調する。 横山氏は「実際に救急外来に行って、検査技師ができることを示せば、『ぜひお願いしたい』と需要が生まれることを実感している。参画しないと需要は生まれない」と話す。院内アンケートでは「検査技師ができる業務がよく分からない」という指摘もあったため、具体的に「医師の指示なしでできる業務」「医師の指示の下、できる業務」「教育を受ければ実施可能な業務」を整理して救急スタッフと共有し、さらなる役割の拡大につなげている。 現在、検査技師は救急外来で超音波検査、心電図検査、採血、静脈路確保、検体採取・搬送などを担っている。小山氏は「ほとんどの救急患者は点滴や採血、心電図が必要になる。それらを検査技師が担当することで、医師や看護師は他の業務に専念できる。タスクシフト・シェアの効果を実感してもらえているのではないか」と話す。 活動は検査科にも変化をもたらした。週1回から段階的に始めたことで理解が広がり、今では批判的な声もなくなった。救急外来を経験した検査技師が心電図検定を取得したり、外来採血室でも活躍したりするなど、人材育成の面でも効果が現れている。 静脈路を確保する横山氏(左)と鼠径部から動脈採血する医師(中央) 平日常駐目指し次のステージへ 現在は機器更新やISO 15189関連業務などの影響で、一時的に救急派遣は横山氏を含めた2人体制へ縮小している。小山氏は「できることなら技師全員が関わってほしい」として再度増員したい考えで、将来的には平日午後、救急外来で検査技師1人が常駐できる体制を目指す方針だ。 寺坂氏は「すでに救急では、救急救命士や臨床工学技士など、いろんな職種が連携するのが当たり前になっている。今後、AIや自動化が進むことが予想されるが、人と直接関わる仕事は代替されにくい。検査技師も現場に出て可能性を広げていくことが、これから重要になる」とエールを送る。 ただ、救急への検査技師参画はまだまだ全国的に少ないのが実情だ。横山氏は「最初から同じことを目指す必要はなく、できることから始めればいい。需要があるからではなく、自分たちを必要としてほしいから救急へ行く。自分から売り込んでいく姿勢が大切だ」とアドバイスする。 「需要を待つのではなく、自ら現場へ踏み出す」。その姿勢から始まった京都桂病院検査科の挑戦は、救急医療を支えるだけでなく、臨床検査技師の新たな可能性を切り開こうとしている。 ※『THE MEDICAL & TEST JOURNAL』2026年10月1日号に掲載された記事の再掲です。

Voice of Lab. file 12 西脇 啓太(刈谷豊田総合病院臨床検査・病理技術科)
神経生理が“わかる”から“できる”へ——現場で学び続けられる環境を目指して
神経伝導検査や脳波検査、術中モニタリングなどの神経生理検査は、知識だけでなく「実際にできる」ことが求められる分野だと感じています。 私は現在、「“わかる”から“できる”へ」をテーマに、神経生理検査を中心とした若手教育や研究活動に取り組んでいます。大切にしているのは、実際に手を動かしながら学び、“できるようになるまで支える”ことです。 今回は、神経生理分野で取り組んでいる教育活動や研究、そして今後目指していきたい教育環境についてご紹介します。 私、こんなことしてます! 1.「教える」のではなく、「できるまで支える」 神経伝導検査(NCS)は、教科書で知識を学ぶだけではなかなか身につきません。 実際に手を動かし、経験を積むことで理解が深まる検査 だと感じています。得られた波形の背景を考え、自分なりに答えを導いていく。その過程にこそ、NCSの面白さがあります。 私自身、若手の頃に多くの先生方や先輩技師の皆さんと出会い、検査技術だけでなく、波形の考え方や患者さんとの向き合い方まで教えていただきました。その経験が、今の自分の土台になっています。 現在私が主催している「あいちNCS教室」は、毎回定員4名という少人数制の実習型研修会です。この教室で大切にしているのは、講師がデモンストレーションを見せるのではなく、実技の時間をしっかり確保し、参加者自身に実際に検査をしてもらうことです。うまくいかない場面も含め、その場で一緒に考え、直接フィードバックしていく—— その繰り返しが、知識として「わかる」から、実際に「できる」ことへと変えていく と考えています。 あいちNCS教室講義の様子 NCSは、「見る」だけでは身につきません。実際に手を動かし、思うようにいかない経験を重ね、その理由を一緒に考える。その積み重ねの先に、検査への理解と自信が育っていきます。 この考え方は、院内での後輩指導でも変わりません。ただ検査を任せるだけでも、手技を見せるだけでもなく、一人ひとりが自信を持って検査に臨めるよう、 できるようになるまで一緒に考え、成長を支える ことを心掛けています。 私が目指しているのは、「教えること」ではなく、「できるようになるまで支える教育」です。 2.現場の「なぜ?」を、そのままにしない 日本臨床神経生理学会でのポスター発表 教育と同じように、 研究も現場から生まれる もの だと考えています。 現在は、手根管症候群の運動障害を、より実際の病態に近い形で評価できないかという視点で研究に取り組んでいます。きっかけは、日々の検査の中で抱いた「従来の評価だけでは説明しきれない症例があるのではないか」という小さな疑問でした。 その疑問を出発点に新たな評価方法を検討し、得られた成果を学会で発表するとともに、国際誌『Journal of Clinical Neurophysiology』への論文掲載にもつながりました。 研究は、論文を書くことが目的ではありません。 現場で感じた疑問を客観的なデータとして示し、 その成果を教育や臨床へ還元することに意味がある と考えています。 現場で生まれた疑問が研究につながり、その研究成果が再び現場へ返ってくる。この循環を続けることが、神経生理検査の質を高め、より良い医療につながると信じています。 3.学べる環境を整えることも、役割の一つ 神経生理検査は、 施設によって経験できる症例や検査手技に差が生じやすい分野 です。 私自身、さまざまな施設の方と関わる中で、「学びたくても学べない」「相談できる人が近くにいない」と感じている若手技師が少なくないことを実感してきました。 そうした課題を少しでも解決したいという思いから、現在は愛知県臨床検査技師会生理検査研究班の部門長として、研究会や研修会の企画・運営に携わっています。「翌日から現場で実践できる内容」を意識し、質問しやすく参加しやすい雰囲気づくりを心がけています。 また、AiCCLS(愛知県臨床検査標準化協議会)では、脳波検査の手引書作成に委員長として携わり、「読んで理解する」だけでなく、「実際に検査ができるようになること」を目指して、電極装着や記録条件など実務に直結する内容をまとめました。 若手技師が安心して学び続けられる環境は、一人の力ではつくることができません。 施設の垣根を越えて学び合い、支え合える環境を育てていくこと も、自分の大切な役割の一つです。 —{明日のリーダーが今、考えていること}— 明日のリーダーが今、考えていること 神経生理検査は、知識だけでなく、経験を積み重ねながら学んでいく分野です。だからこそ、「知識を伝えること」以上に、「できるようになるまで支えること」を大切にしています。 自分自身も、多くの先生方や技師の方々との出会いに支えられ、数え切れないほど多くのことを教えていただきました。振り返ってみると、今の自分があるのは、根気強く向き合い、見守ってくださる方々がいたからだと思います。これからは、 自分が受け取った知識や技術、そして学ぶ楽しさを次の世代へつないでいきたい と考えています。 教育、研究、地域活動は、一見すると別々の取り組みに見えるかもしれません。しかし、私の中ではすべてが「現場でより良い検査を実践できる臨床検査技師を育てる」という一つの目標につながっています。 国際学会ポスター発表質疑の様子 これからも「“わかる”から“できる”へ」という想いを大切にしながら、 若手技師が安心して挑戦し、成長できる環境づくり を続けていきます。 一人ひとりと向き合える小さな学びの場から、自分の力で波形を読み解ける技師が一人でも多く育っていく。そんな循環を、これからも地道につくっていきたいと思います。

遺伝子検査の質保証「見解」を改定
NGS確認項目を提示、LDT開発手順も
日本衛生検査所協会はこのほど、「遺伝子関連検査の質保証体制についての見解」を2年ぶりに改定した。LDTsの厚生労働省通知(2025年12月)や、造血器腫瘍の遺伝子パネル検査の保険収載などを受けて、NGS検査などの遺伝子関連検査を受託する際の留意事項を充実させたことがポイント。 検体採取から結果報告までの全14の検査工程に計約100の確認事項、計約280の「考慮すべき事項」を示した。NGS解析等の質を確保するための指針として加盟各社に活用を促している。 本ニュースは、後日発行の「THE MEDICAL & TEST JOURNAL」より、一部を先行してお届けしています。より詳しい内容をご覧いただきたい方は こちら (無料試読・年間購読のお申込み)





























































