
Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 病理・細胞09
p16/Ki-67二重免疫染色が保険収載——LSIL患者の次の一手を支える新たな検査
LSIL対象のp16/Ki-67二重免疫染色、保険収載 2026年7月1日、「p16/Ki-67タンパク二重免疫染色(免疫抗体法)病理診断標本作製」が新たに保険収載された 1-3) 。 今回の保険適用では、子宮頸部細胞診で軽度扁平上皮内病変(LSIL)と判定された患者に対し、コルポスコピー(拡大鏡検査)や生検を行う必要があるかを判断するためのトリアージ検査として位置づけられている 1-3) ( 図1 )。 図1 p16/Ki-67タンパク二重免疫染色を用いた軽度扁平上皮内病変患者のトリアージ〔筆者作成〕 病理・細胞検査のエキスパートレビュー 1.p16/Ki-67二重免疫染色とは p16/Ki-67二重免疫染色は、p16とKi-67の2種類の抗原を1枚の標本上で同時に検出する免疫細胞化学的手法である 4) 。 p16: 細胞周期を抑制するタンパク質。子宮頸部では高リスクHPV感染により細胞周期の制御が乱れることで、過剰に発現する。 Ki-67: 細胞増殖時に発現する代表的なタンパク質。 高リスクHPV感染などによって細胞周期の正常な制御が破綻すると、これら2つのタンパク質が同一細胞内で共発現する現象が起こる。本検査はこの共発現を捉えることで、高リスクHPV感染によって細胞周期制御の異常が生じた細胞を可視化する手法である 4) 。使用するのは「ベンタナ CINtec PLUS Cytology Dual Stain」で、子宮頸部細胞診標本上でp16タンパクとKi-67タンパクを同時に検出する二重免疫染色キットである。p16は茶色、Ki-67は赤色に染色され、同一細胞内で両者が共発現している細胞(CINtec PLUS陽性細胞)を検出することで、細胞周期制御の異常を評価する 4) ( 図2 、 表1 )。 図2 p16/Ki-67二重免疫染色の染色像〔筆者作成〕 表1 p16/Ki-67二重免疫染色の判定基準 〔ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社:ベンタナCINtecPLUSCytology Dual Stain,添付文書(2025年9月作成,第1版)/厚生労働省:第651回中央社会保険医療協議会総会 資料3;医療機器及び臨床検査の保険適用について(令和8年6月24日)を基に筆者作成〕 HPV検査が主に「HPVが存在するか(感染の有無)」を調べるのに対し、本検査は「実際に細胞周期の制御異常が生じているか」を評価できる点に大きな特徴がある 4) 。 臨床性能については、IMPACT Studyにおいてp16/Ki-67二重免疫染色の有用性が検討されている。このうち、LSIL 741例を対象とした解析において、従来のHPV DNA検査と比較してCIN2以上あるいはCIN3以上の病変の検出について高い感度を維持しながら特異度の向上が実証されている( 表2 ) 3, 4) 。 表2 p16/Ki-67二重免疫染色とHPV DNA検査の臨床性能 〔ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社:ベンタナCINtecPLUSCytology Dual Stain,添付文書(2025年9月作成,第1版)より〕 2.保険点数と施設要件 今回の保険適用では、p16タンパクの所定点数720点と、HPV核酸検出の所定点数347点を合算した1,067点を準用して算定する 2, 3) 。なお、算定には施設要件があり、婦人科または産婦人科の経験を5年以上有する医師が配置されていること、当該医療機関が婦人科または産婦人科を標榜し、当該診療科に常勤医師が配置されていることなどが定められている 2) 。 さらに、病理・細胞診に携わる医療者にとって注目したいのが、病理診断料の取り扱いである。日本病理学会が厚生労働省に疑義照会を行ったところ、所定の要件を満たす保険医療機関において診断が行われた場合には、N006 病理診断料「1 組織診断料」の算定が可能であり、さらに要件を満たした場合には「注4 病理診断管理加算」も併せて算定可能との回答が示された 5) 。 細胞診から得られる情報を次の診療へ 今回の保険収載は、p16/Ki-67二重免疫染色という、単に2つのタンパク質を染色する新しい染色法が加わったというだけではない。これまで子宮頸部細胞診は、細胞や核の形態を観察し、その異型の程度から病変を評価する「形態診断」を中心として発展してきた。 一方、p16/Ki-67二重免疫染色では、同一細胞における2つのタンパク質の共発現を捉えることで、形態だけではわからない細胞周期制御の異常という生物学的情報を、細胞診標本から得ることができる 3, 4) 。 特に今回、LSILと判定された患者に対して、コルポスコピーや生検の要否を判断するためのトリアージ検査として保険診療に位置づけられた意義は大きい。形態学的にLSILと判定された患者を一律に扱うのではなく、細胞が示すバイオマーカーの情報を加えることで、より精査が必要な患者を適切に選別し、次の診療へつなげることが期待される。つまり、細胞診標本は「異常な形態を示す細胞を見つけるための標本」から、「病態を客観的に可視化して患者のその後の診療方針を考えるための情報を得る標本」へと、その役割をさらに広げつつある。 今回の保険収載は、細胞診標本から得られる情報を「次の診療」へつなげる、新たな選択肢の誕生といえる。 引用文献 1)日本産科婦人科学会:「p16タンパク/Ki-67タンパク二重免疫染色 病理診断標本作製」保険収載と検査の取り扱いに関するお知らせ.2026(https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/fujinkashuyo_20260701_02.pdf,アクセス日:2026年8月19日) 2)厚生労働省「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について」(令和8年6月30日保医発0630第7号) 3)厚生労働省:第651回中央社会保険医療協議会総会 資料3;医療機器及び臨床検査の保険適用について(令和8年6月24日) 4)ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社:ベンタナ CINtec PLUS Cytology Dual Stain,添付文書(2025年9月作成,第1版) 5)日本病理学会:「p16/Ki-67タンパク二重免疫染色(免疫抗体法)病理診断標本作製」の保険収載および病理診断料、病理診断管理加算の算定について.2026(https://pathology.or.jp/news/members/iryou-gyoumu/20260714.html,アクセス日:2026年8月19日)

藤田医科大学病院
Accuraseed SG720 検査業務の省力化に貢献
関連4病院で装置統一、精度管理にメリット 藤田医科大学病院(愛知県豊明市、1376床)の臨床検査部は2025年5月に検査室を再構築し、免疫機器として 自動化学発光酵素免疫分析装置Accuraseed SG720 (以下、Accuraseed SG720)4台を導入した。前機種で実現した免疫検査でのTAT(検査結果報告時間)短縮に加え、試薬・消耗品の搭載量が拡充されたことで利便性が向上した。臨床検査技師の業務負担軽減と、繁忙時間帯や夜間での安定運用に貢献し、同院が掲げるスマートホスピタル構想を支える検査装置としての存在感を高めている。 高度急性期医療を担う同院は、国内最大規模の1376床を有し、県内外からの外来患者数は1日約2700人、救急外来患者数は年間約3万人を受け入れる。病院運営では、医療DXを軸にした「スマートホスピタル構想」を掲げ、臨床検査部門も含めた病院インフラ全体の再構築に取り組んでいる。 先駆的な取り組みを進める同院の検査部門は、検体、生理、病理、輸血部門などに分かれ、臨床検査技師は177人が所属。検査部門の国際標準規格ISO 15189を取得し、多くの臨床検査技師が専門分野の認定資格を持つ。 検体検査部門のうち、生化学・免疫検査部門の1日平均検体数は約1500検体。数年前までは複数の免疫検査装置を運用していたが、業務効率化とTAT短縮に向けて装置集約化と、最新装置への更新が必要と判断。免疫検査部門では2020年5月に、富士フイルム和光純薬株式会社の 自動化学発光酵素免疫分析装置Accuraseed (以下、Accuraseed)を3台導入し、3機種6台体制とした。さらに2025年5月にはAccuraseed(3台)を、最新モデルAccuraseed SG720(4台)に更新。同時に、免疫検査装置をそれまでの3機種6台から、2機種5台体制に変更し、さらなる装置の集約化を進めた。臨床検査部技師長の星雅人氏は「以前は、免疫装置が7、8種類もあり、消耗品や保守費用がかさみ、管理面での負担も大きかった」と説明。一方で、免疫検査装置の更新は検査データの変更が懸念されるが、免疫検査を担当する臨床検査部課長の齊藤翠氏は、「思ったよりも互換性は良好であった」と述べる。 免疫検査を支える「Accuraseed SG720」 約10分測定で診療を支援 Accuraseed SG720は、免疫検査42項目に対応し、全項目約10分で測定できるのが最大の強みだ。齊藤氏は、「一昔前は30分が当たり前だったが、免疫検査が10分で結果が出せるとは思わなかった。採血から報告まで、以前は1時間以上かかっていたが、それが40分程度になった。患者様を待たせる時間が短くなった」と導入効果を語る。臨床側からのスピード向上への評価も高い。甲状腺ホルモンや前立腺特異抗原(PSA)など、診察前に結果が必要な免疫検査では、迅速な結果報告により、検査結果を確認しながら治療方針を判断できるようになっているという。また、術中インタクトPTH測定や副腎静脈サンプリング等、迅速な結果報告により手術の成功可否判断にも役立っている。Accuraseed SG720(4台)は現在、メイン機を担っている。2台を1組としたミラー構成で、1台はホルモン系検査、もう1台は腫瘍マーカーを中心に測定項目をバランスよく稼働させている。 図:検査結果平均報告時間 安定した検査運用の実現 Accuraseed SG720は、測定時間がいずれの項目も約10分という基本性能を継承し、さらに試薬・消耗品搭載数が拡充されたのが大きな特徴だ。同時測定項目数が24項目から36項目に増え、試薬搭載数も480テスト(24カセット、1カセット:20カートリッジ)から720テストに、搭載チップ数も約3倍に増強された( 表 )。より多くの試薬や消耗品を搭載可能となったため、ウォークアウェイ時間が従来の約1.6時間から約4時間と約2.5倍に延長された。これにより、繁忙時間帯や夜間でも安定した連続運転を実現させている。 表:「Accuraseed SG720」と「Accuraseed」のスペック差 星氏は、Accuraseed SG720導入前後について、「忙しい時間帯の午前9時から午後1時まで試薬・消耗品の追加不要で連続稼働ができる。現場としては非常に大きい」と話す。加えて、齊藤氏は「画面構成がシンプルで、メンテナンスの手間がかからない点も貢献している」と評価は高い。 関連4病院でも順次導入 藤田医科大学病院を運営する藤田学園では昨年から、グループ病院である同大学ばんたね病院(名古屋市、370床)、同大学岡崎医療センター(岡崎市、400床)、三重県の同大学七栗記念病院(津市、218床)の免疫検査部門にもAccuraseedシリーズを順次導入している。ばんたね病院と岡崎医療センターはAccuraseed SG720、七栗記念病院はAccuraseedが稼働中だ。 関連4病院で同じ免疫検査装置を運用することで、検査データの互換性を確保できるメリットは大きい。齊藤氏は、「免疫検査では試薬のロット変更時に、精度管理データが変化することがあるが、4病院で同じ装置、試薬を用いることで変化を確認し合える」と説明。関連病院で装置と試薬を統一したことで、グループ全体で精度管理を行う体制も整った。臨床検査技師の教育、装置運用上の課題も共有しやすくなった。 齊藤氏は「関連病院同士で定期的なミーティングも行っており、装置運用で気になる点を共有したり、毎月施設間差を確認したりしている」と説明する。 Accuraseedシリーズのモノテスト試薬への評価が高いという。齊藤氏は、本院と比べて規模の小さい関連病院から「検体数がそこまで多くないこともあり、ボトルタイプの試薬に比べ、項目ごとに独立したカートリッジ方式の試薬は使い勝手がいい。モノテスト試薬は日常的なメンテナンスの負担も少なく、安定性を含めて管理しやすい」と意見があったと語る。本院に関しても「検体数の少ない項目でも院内導入がしやすい」と話す。 検査業務の省力化で人的資源を有効活用 藤田医科大学病院ではAccuraseed SG720を含め、検体検査部門での装置・システム更新で、検査業務の効率化、省力化が進む。臨床検査部長の伊藤弘康氏は、こうした取り組みを通じ、「以前は約65人体制だった検体検査部門で7人分の省力化が可能になった。その分、救急や治験、病棟などに出向させるなど、臨床検査技師の活躍の場を広げることにも貢献できている」と手応えを感じている。同院では今後もスマートホスピタル構想の下、医療DXやAI、ロボティクスを組み入れた検査部門再構築を進める方針だ。Accuraseed SG720は、免疫検査の効率化だけでなく、臨床検査技師の役割の拡大を支える基盤の一つにもなっている。 臨床検査部の皆さん、右端が伊藤検査部長、左から3人目(奥)が星技師長、左から2人目(奥)が齊藤課長 自動化学発光酵素免疫分析装置Accuraseed SG720(医療機器届出番号:14B1X10022000134) 自動化学発光酵素免疫分析装置Accuraseed(医療機器届出番号:27B3X00024000015)

インフルエンザ増加続く
週刊 感染症サーベイランスレポート #2026年第35週(2026.8.24 - 8.30)
2026年第35週の全国的なトレンド 2026年第35週(8月24~30日)の急性呼吸器感染症(ARI)の定点当たり報告数は40.48(報告数15万196例)で、前週から増加しました。前週を上回った都道府県は42都道府県でした。 疾患別では、 インフルエンザの定点当たり報告数は1.76で、第26週以降増加が続いています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は1.47で、2週連続の増加 となりました。入院サーベイランスでは、インフルエンザの新規入院患者数は213例で前週から46例増加しました。一方、COVID-19は271例で45例減少しました。 小児科定点では、RSウイルス感染症が0.78となり、前週から増加しました。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は1.28、感染性胃腸炎は3.67で、いずれも2週連続で増加しています。ヘルパンギーナも0.87で増加しました。 一方、咽頭結膜熱は0.20で減少し、手足口病も2.00で第30週以降、減少が続いています。水痘は0.19で減少しましたが、過去5年間の同時期の平均と比べてやや多い状況です。 都道府県別の発生動向 インフルエンザの定点当たり報告数 は、 沖縄県(8.50)が最も高く 、 岩手県(4.33) 、 新潟県(3.58) と続きます。 COVID-19は島根県(3.60) 、 新潟県(3.29) 、 鳥取県(3.28) 、RSウイルス感染症は福井県(2.28)、島根県(2.09)、佐賀県(2.08)が上位となっています。 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は愛媛県(4.00)、佐賀県(3.33)、山口県(3.00)、感染性胃腸炎は宮崎県(7.33)、群馬県(6.48)、岐阜県(6.44)で多く報告されています。また、手足口病は岩手県(7.96)、北海道(7.30)、宮城県(6.84)が上位です。 注意すべき感染症——インフルエンザ インフルエンザの定点当たり報告数は、2026年第16週以降1.00未満で推移していましたが、第34週に1.11となり、感染症法施行後では2009年に次いで2番目に早い流行入りとなりました。第35週は1.76(報告数6543例)まで増加し、 全国47都道府県のうち39都道府県で前週を上回っています。 入院サーベイランスでは、第31~35週の報告数が57例から213例へ増加しました。第35週の入院患者を年齢群別にみると、80歳以上が62例で最も多く、70代46例、5~9歳24例、1~4歳23例となっています。 病原体サーベイランスでは、直近5週間に検出された37例のうちAH1pdm09が36例(97%)を占めています。 表 第35週における主要感染症の定点当たり報告数(全国) 主要感染症 定点当たり報告数 前週からの増減 インフルエンザ 1.76 ↑ COVID-19 1.47 ↑ 感染性胃腸炎 3.67 ↑ A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 1.28 ↑ RSウイルス感染症 0.78 ↑ 咽頭結膜熱 0.20 ↓ 水痘 0.19 ↓ 手足口病 2.00 ↓ ヘルパンギーナ 0.87 ↑ マイコプラズマ肺炎 0.41 ↓ 〔IDWR感染症週報 第35号/急性呼吸器感染症サーベイランス週報 第35週を参考に作成〕

JACLaS EXPO 2026 / 株式会社日立ハイテク〈ブースNo.C-8〉
「医療を止めない」強い想いで未来を描く
開発中のデジタルソリューションも参考展示 日立ハイテクの今年度の出展テーマは「医療を止めない」。「検査を止めない」から一歩踏み込み、臨床検査は医療の基盤であり、検査関連製品やサービスの提供を通して医療を支えるという強い想いを表現した。展示ブースでは、デジタル技術を活用したソリューションを展示。既存の製品・システムに加え、開発中の参考製品も交えて来場者と意見交換し、未来の検査室を共に描いていきたいとしている。 同社はこれまで、生化学自動分析装置をはじめとする検査機器や関連サービスの提供を通じて、検査室の安定稼働を支えてきた。製品の開発・提供の基盤には「検査を止めない」という想いがあるが、今回の展示ではその考え方をさらに発展させ、「医療を止めない」をテーマに掲げた。医療現場では、検査結果が診断や治療方針の決定を支えている。検査が滞れば医療全体にも影響が及ぶことから、「検査を止めない」の先にある「医療を止めない」を前面に打ち出し、メーカーも医療従事者と共に強い覚悟を持って臨む姿勢を示した。 デジタルソリューションを中心に紹介 本出展テーマをより具体的に示すものとして、同社は「ミッションクリティカル」の考え方を整理している。検査室に求められる価値を、①故障の未然防止・予兆保全の適用、②ワークフローの最適化・業務効率化、③異常値原因の解析・検査データの価値向上の三つの観点で捉え、装置・システム・デジタルソリューションを通じて、検査業務の安定稼働と医療への貢献を支えていく考えだ。 今回展示する各ソリューションも、この三つの観点と関連づけて紹介する。単なる製品機能の説明にとどまらず、検査室の課題解決や医療現場への価値提供という視点から、来場者に活用イメージを提示する。 展示ブースでは、検査室業務を支援するデジタルソリューションを中心に紹介する。反応過程近似解析ツール「 MiRuDa 」(ミルダ)、ISO 15189に対応した業務支援システム「 LaboQ 」(ラボック)、臨床検査システム「 Lavolute 」(ラボリュート)などの既存の製品・システムに加えて、開発中のデジタルソリューションも参考展示する。「病態アセスメントシステム」は、RCPC(Reversed Clinico-Pathological Conference:検査値から病態を推論する学習手法)の考え方を取り入れ、信頼性の高い検査データを基に病態を読み解くプロセスを支援する。提出された検査データから病態を推定する考え方や解釈の流れを示すことで、臨床検査技師が病態理解を深め、学びを通じて新たな気づきを得られるよう促す。こうした支援を通じて、検査データの活用価値を高め、臨床への貢献を目指す。 また、装置から出力されるログデータ(ランプなど装置内の部品や消耗品の状態)をモニタリングし、トラブルや故障の予兆を捉えてメンテナンスを提案する仕組み「CBM(Condition Based Maintenance)」を提案する。メンテナンスの時期は従来、装置の使用回数や使用時間などを基に把握していたが、部品や消耗品などの状態を基にメンテナンスを実施できるようにし、故障の未然防止にもつなげる。 同社は、これらのソリューションのコンセプトや主な機能を展示会で紹介し、来場者から直接意見を伺うことで、現場のニーズに即した製品・システムへと磨き上げていく考えだ。 ※AI生成による未来の検査室のイメージです 自動分析装置の個別相談ブースも設置 生化学自動分析装置「 LABOSPECT 008 α 」と「 LABOSPECT 006 α 」については、各施設の運用などに合わせた相談に応じるため、個別相談ブースも設ける(事前予約制)。個別相談では、営業担当者だけでなく、開発設計者なども同席する予定だ。 また、展示ブースの壁面に設置した大型モニターでは、搬送ラインの映像をほぼ原寸大で投影する。病態解析システムなどの参考展示品については来場者に解説するプレゼンテーションの時間を設け、開発のコンセプトや活用のイメージを分かりやすく紹介する。 同社は、今回の展示を単なる製品紹介の場ではなく、検査室が抱える課題や将来像について来場者と対話する場と位置付けている。医療の現場から寄せられる声を受け止め、次の製品開発やサービス提供へつなげることで、臨床検査の新たな価値を創出したいとしている。 LABOSPECT 006 α 日立自動分析装置(医療機器製造販売届出番号:13B1X10436000043) LABOSPECT 008 α 日立自動分析装置(医療機器製造販売届出番号:13B1X10436000041)

JACLaS EXPO 2026 / 栄研化学株式会社〈ブースNo.C-5〉
「OC-SENSOR R70」、運用性と検査効率を向上
「LZテスト‘栄研’FER II」、ワイドレンジ化で再検率低減へ 栄研化学は今夏、便潜血自動分析装置「 OC-SENSOR R70 」(以下、R70)と、フェリチンキット「 LZテスト‘栄研’FERII 」(以下、FERII)を発売した。いずれも前モデルを改良した製品で、R70は試薬保冷機能を新たに搭載するなど運用性と検査効率の向上を実現した。 FERIIは測定レンジを大幅に拡大し、希釈再検査の削減など検査室の業務効率化に貢献する製品だ。 R70は、同社を代表する便潜血自動分析装置「OC-SENSOR」シリーズの最新モデル。これまでの神話などを由来とした装置名から、海外展開や商標対応を見据えた型番を取り入れ、「R70」と名付けた。 試薬保冷機能など搭載し運用改善 R70は、前モデル「OC-SENSOR PLEDIA」の320テスト/時という処理能力はそのままに、試薬の保冷機能を新たに搭載し、試薬搭載量も約2倍の最大1440テスト分まで拡充した。測定項目はヘモグロビン、カルプロテクチン、トランスフェリンの3項目に変更はないが、多項目測定時に処理能力が低下する点や、同時測定が2項目までといった前モデルの課題を解消。3項目同時測定でも320テスト/時を維持した。 OC-SENSOR R70 マーケティング統括部マーケティング推進一部一課の志賀常雄課長は、数々の改良が加えられたR70について、「保冷機能で試薬の安定性も確保され、今までのように試薬を保管する冷蔵庫と、装置とを行き来する手間がなくなる。試薬搭載量も増え、大量検体に対応する病院や施設では連続稼働できる点も大きなメリットだ」と語る。 R70ではそれ以外にも、現場の使い勝手を高めるための改良が加えられている。自動希釈再検に加え、ラックや試薬のバーコードを自動で読み取る機能も備え、従来必要だった手動スキャン作業を不要にした。志賀氏は、「煩雑だった手作業全般を自動化させ、臨床検査技師らの業務の省力化を図った。ヒューマンエラーのリスク低減にもつながる」と説明する。 一方で、検査現場で定着しているOC-SENSORシリーズの装置フォルムや操作性などは引き継ぐ。志賀氏は「OC-SENSORシリーズに慣れ親しんでいただいているユーザーも多いので、運用やデザインは継承している。R70は処理能力が劇的に進化したというよりも、日常運用をより楽に、より確実にすることを目指したのがコンセプト」と語る。現場の安定運用と負担軽減を両立する次世代装置として、健診センターや検査センター、大規模病院などを対象に販促展開を図る方針だ。 測定レンジ2,500 ng/mLで再検率低減へ 今回の展示のもう一つの目玉となるのが、FER IIだ。フェリチンを測定するラテックス凝集比濁法試薬で、従来試薬の「LZテスト‘栄研’FER」(以下、従来試薬)をバージョンアップさせたフェリチン改良試薬となる。 LZ FER II ボトルラインアップ フェリチンは体内の鉄貯蔵タンパク質で、高値、低値ともに臨床的な意義を持つ。鉄欠乏性貧血などで低下する一方で、急性肝炎による組織障害や、悪性腫瘍、再生不良性貧血などで高値を示すため、これらの疾患の診断、経過、予後判定で活用されている。 FER IIの最大の強みは、従来試薬で「5~1,000 ng/mL」だった測定範囲を、ユーザーからの強い要望を受け「5~2,500 ng/mL」のワイドレンジに改良した点だ。これまで1,000 ng/mLを超える高濃度検査はレンジオーバーになり、希釈再検査が必要だったが、2,500 ng/mLまで測定できるため、こうした手間を大幅に軽減。再検率の低減、TAT短縮に貢献する。 また、低濃度域でもラテックス粒子を工夫することで再現性を向上させ、鉄欠乏診断で重要な領域での信頼性を強化した。最新の国際標準品であるWHO 4th International Standard for Ferritinにも準拠しており、国際標準との整合性を図ったのも特徴だ。 従来試薬からは、リウマトイド因子(RF)や異好性抗体の影響を受けにくい設計も受け継いでおり、フェリチンをより特異的に測定できる。営業本部マーケティング統括部マーケティング推進四部一課(免疫・生化学)の綿引健介課長は、「フェリチンだけを正確に測定するための独自設計は、従来試薬から継承している大きな強みの一つだ」と説明する。 FER IIは、従来試薬と同様、各社の生化学分析装置での活用を見込む。綿引課長は、「従来試薬は、LZシリーズの中でも検査現場からの需要の高いアンカープロダクトだ。ユーザービリティーを向上させたFER IIを後継試薬として大きく育てていきたい」と強調する。 栄研化学の皆さん(左から2人目が志賀氏、3人目が綿引氏) 一般医療機器 OC-SENSOR R70(医療機器製造販売届出番号:09B1X10007000009) 体外診断用医薬品 LZテスト‘栄研’FER II(製造販売届出番号:09E1X80001000006)

編集部 Pick Up ニュース[9月11日号]
忙しい臨床検査技師のための注目ニュースまとめ
臨床検査技師が押さえておきたい今週注目の5本 誤った患者輸血で3回目の注意喚起 医療機能評価機構が、輸血用の血液製剤を患者との照合を行わないまま、別の患者に投与した事例について注意喚起。07年10月、16年1月に続き3回目。20年1月~26年6月末までに17件の報告。 自動血球計数装置、解析法など解説 医療検査科学会が、「血液検査に役立つ自動血球計数装置の基礎知識と症例解析」を発行。装置の特徴や症例解析をまとめたもので、国内で使用されている6社の装置の測定原理や特徴など紹介。 品質保証施設認証、新たに265施設 日臨技が、品質保証施設認証制度の2025年度審査結果を公表。新たに265施設を認証し、前年度の認証施設を併せ、認証施設数は計604施設に。新制度移行後5年目。 2025年の結核罹患率、8.0に低下 厚労省が、2025年の結核登録者情報調査年報を発表。結核罹患率(人口10万対)は8.0で、前年から0.1低下。結核低まん延国の水準である「10.0以下」を2021年以降、維持。 第73回検査技師国試、試験日2月17日 厚労省が、第73回臨床検査技師国家試験について官報告示。試験日は27年2月17日。北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、香川、福岡、沖縄の9都道府県で。受験書類受付は26年12月14日から。

Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 輸血03
緊急輸血をどう最適化するか——検査モニタリングに基づく目標指向型管理
外傷性大量出血管理の基本戦略 本ガイドは、欧州の麻酔科、集中治療、救急、外傷外科など6学会からなるTask Force for Advanced Bleeding Care in Trauma(ABC-T)によって作成された 1) 。本ガイドの特徴は、外傷患者の管理を受傷直後から退院後の血栓予防まで、時系列に沿った一連のプロセスとして捉えている点にある。 基本理念は、受傷から止血までの時間を最小限に短縮し、迅速な止血(damage control resuscitation)と凝固障害の早期診断・補正を行うことにある。初期評価ではFAST(focused assessment with sonography in trauma)/POCUS(point-of-care ultrasonography)や造影全身CTを用いた出血源の検索を推奨するとともに、Hb、乳酸、base deficit(base excessのマイナス方向)、PT/INR、フィブリノゲン、血小板数などを繰り返し評価することを求めている。循環管理では、頭部外傷を伴わない患者に対し、過剰輸液を避けた許容的低血圧(収縮期血圧80〜90mmHg)を基本戦略とし、赤血球輸血はHb 70〜90g/L(7.0g/dL〜9.0g/dL)を目標とした制限的輸血戦略を採る。凝固管理では、ROTEM(rotational thromboelastometry)やトロンボエラストグラフィ(TEG)などの粘弾性検査やフィブリノゲン値を用いた目標指向型凝固管理(goal-directed coagulation therapy)を重視し、フィブリノゲン低下に対する早期補充を推奨するほか、トラネキサム酸の受傷3時間以内投与を求めている。 これらの推奨に共通するのは、あらかじめ定めた固定比率での輸血〔例:赤血球液(pRBC):新鮮凍結血漿(FFP):血小板(PC)=1:1:1〕に頼るのではなく、患者ごとの凝固異常を検査値に基づいて評価し、必要な血液製剤・凝固因子製剤を個別に選択する治療への転換である。この点は、現在の欧州における外傷性大量出血管理の標準的な考え方を示すものといえる。 輸血検査のエキスパートレビュー 1.出血の"見えにくさ"を検査値で補う——Hb/Hctと乳酸/base deficit 従来、急性出血初期ではHb/Hctは、患者が全血を失うことや、体液シフト(transcapillary refill)および輸液による血液希釈がまだ十分起こっていないため、出血評価には有用性が低いと考えられてきた。 しかし、最近では病院前のPOC-Hbも限定的ながら有意出血の予測に寄与し、病院到着後の検査室Hbはさらに高い予測能を示すことが報告されている 2) 。本ガイドでは、単回値ではなく経時的な変化を追うことの重要性が強調されている。 乳酸値は出血性ショックの重症度を反映する感度の高い指標であり、測定できない場合はbase deficitが代替となる。ただし、飲酒歴がある患者では乳酸の信頼性が低下する点も注意が必要である。 2.凝固モニタリングの選択肢——従来検査、POC、粘弾性検査 PT/INR、フィブリノゲン、血小板数といった従来検査に加え、POC-PT/INRやROTEM/TEGなどの粘弾性検査(VEM)を組み合わせたモニタリングが推奨されている。 VEMは、凝固時間、血栓強度、線溶を含めた凝固状態をリアルタイムに評価でき、従来型凝固検査では捉えられない凝固障害を検出でき、特に線溶の評価が可能である 3) 。一方で、VEMには複数の解析プラットフォームが存在するため、機器間の測定値の一致性や標準化について検証が進められている 4) 。 血小板機能検査(POC platelet function test:POC-PFT)については、ルーチンでの使用は推奨されない。抗血小板薬服用の検出には一定の有用性が報告されているものの、外傷後の転帰予測や治療方針決定への活用は、現時点でエビデンスが十分に確立していない。 3.見落とされがちな検査項目——イオン化カルシウム 大量輸血時ではクエン酸によるキレート作用で低カルシウム血症を来すことがあり、イオン化カルシウムを個別に評価する必要がある。 来院時のイオン化カルシウム低値は、死亡率ならびに24時間以内の複数回輸血および大量輸血の増加と関連し、多変量解析では赤血球5単位以上の輸血を必要とすることの独立予測因子とされた 5) 。 4.抗血栓薬服用患者への対応——DOAC/VKAの検査室での評価 PT、抗Xa活性、トロンビン時間の3種の検査で、ビタミンK拮抗薬(VKA)、Xa阻害薬、トロンビン阻害薬のいずれの薬剤による抗凝固かを鑑別できる。 Xa阻害薬の拮抗薬(中和薬)であるアンデキサネットアルファ投与後は、希釈の影響で通常の抗Xaアッセイが過大評価となるため、希釈を抑えた専用アッセイが必要である 6) 。 目標指向型管理を支える検査体制 本ガイドが一貫して示しているのは、あらかじめ定めた固定比率(例:pRBC:FFP:PC=1:1:1)で機械的に輸血を進める管理から、検査値に基づいて患者ごとの凝固異常を評価し、必要な血液製剤・凝固因子製剤を都度選択する目標指向型の管理への転換である。固定比率輸血は、初期の判断が遅れがちな超急性期を乗り切るための一時的な戦略として位置づけられており、それ自体を最終目標とすべきではない。検査部門に求められているのは、この目標指向型システムを臨床側とともに機能させるための土台づくりである。 1.検査結果が出るまでの時間を、システムの一部として管理する 目標指向型管理は、検査値が迅速かつ継続的に提供されて初めて成立する。本ガイドが示す質の管理指標( 表 ) 1) には「病院到着から、血算、PT、フィブリノゲン、カルシウム、粘弾性検査(可能な施設)一式が揃うまでの時間」が明記されており、これは単なる検査室内部の効率指標ではなく、目標指向型管理そのものが機能しているかを測る診療の質指標として位置づけられている。自施設の緊急検査の所要時間(turnaround time:TAT)を定期的に把握し、遅延が生じている場合はどの工程がボトルネックになっているかを臨床側と共有する視点が求められる。 表 外傷患者に提供されるケアの質を評価するための基準 出血性外傷患者に提供されるケアの質を評価するために、以下の基準で評価しうる 初期蘇生に反応しない低血圧患者において、出血制御のための介入(手術または塞栓術)開始までの、受傷からの時間 病院到着から、血液検査一式[全血算、プロトロンビン時間、フィブリノゲン、カルシウム、粘弾性検査(可能な場合)]が揃うまでの時間 血液検査結果に応じた適切な治療を受けた患者の割合 受傷後3時間以内にトラネキサム酸の投与を受けた患者の割合 Damage control surgeryの適応基準に沿ってdamage control手術手技の実施状況 血栓予防に沿った血栓予防の開始 〔Rossaint R, et al : Crit Care, 27 : 80, 2023より一部改変/© The Author(s)2023, CC BY 4.0.〕 2.「固定比率」から「トリガー値」への意識転換を、院内プロトコルに落とし込む 初期の凝固支持療法としては、フィブリノゲン濃縮製剤またはクリオプレシピテートとpRBCを組み合わせる戦略、あるいはFFPをpRBCに対し少なくとも1:2の比率(pRBC 2単位につきFFP 1単位以上)で投与する戦略のいずれかが示されている。さらに、大量出血にフィブリノゲン値150mg/dL以下の低フィブリノゲン血症(または粘弾性検査での機能的フィブリノゲン欠乏所見)を伴う場合には、フィブリノゲン濃縮製剤またはクリオプレシピテートによる補充が推奨されている。 検査部門としては、この「固定比率から個別化へ」の切り替えポイントとなる迅速検査、POCの導入について検討していく必要がある。漫然とした固定比率輸血の継続は、不要な血液製剤の消費や個々の患者の凝固異常を見逃すリスクにつながりかねないことも輸血管理部門としては認識しておきたい。 3.「見えない出血」「見えない凝固障害」を検査項目として意識的に拾い上げる Hb/Hct値が正常範囲であっても早期の出血をマスクしうる点、通常の凝固検査ではイオン化カルシウムの低下が反映されない点は、いずれも「検査値が正常=問題なし」という誤った安心につながりやすい落とし穴である。大量輸血が想定される症例では、血液ガス分析にイオン化カルシウムをあらかじめ組み込むなど、目標指向型管理の網から漏れやすい項目を意識的に運用に組み込む工夫が有効である。 引用文献 1) Rossaint R, et al : The European guideline on management of major bleeding and coagulopathy following trauma: sixth edition. Crit Care, 27 : 80, 2023 2)Figueiredo S, et al ; Traumabase group : How useful are haemoglobin concentration and its variations to predict significant haemorrhage in the early phase of trauma? A multicentric cohort study. Ann Intensive Care, 8 : 76, 2018 3)Gratz J, et al : Protocolised thromboelastometric-guided haemostatic management in patients with traumatic brain injury: a pilot study. Anaesthesia, 74 : 883-890, 2019 4)Neal MD, et al : A comparison between the TEG 6s and TEG 5000 analyzers to assess coagulation in trauma patients. J Trauma Acute Care Surg, 88 : 279-285, 2020 5)Magnotti LJ, et al : Admission ionized calcium levels predict the need for multiple transfusions: a prospective study of 591 critically ill trauma patients. J Trauma, 70 : 391-397, 2011 6)Bourdin M, et al : Measuring residual anti-Xa activity of direct factor Xa inhibitors after reversal with andexanet alfa. Int J Lab Hematol, 43 : 795-801, 2021

サクッと解説! 検査技師必見トピックス #22
睡眠検査技師の育成、なぜ今課題に?
睡眠医療の需要拡大と検査技師の役割の広がり を背景に、PSGの実施・解析だけでなく、CPAP導入支援や患者対応まで担える人材の育成が求められている。 現状の卒後教育は 施設ごとのOJTに依存し、施設間・地域間で教育機会に差 があるため、技量を段階的に高められる共通の教育体制づくりが課題となっている。 日本睡眠学会では 「指導検査技師」による地域横断的な育成支援 が検討されており、卒前教育から専門資格取得後まで継続して学べる仕組みの整備が重要になっている。 睡眠医療を担う臨床検査技師をどう育てるか―。7月に開かれた日本睡眠学会などの合同大会で、検査技師の教育と質の確保が話題になった。背景には、睡眠医療へのニーズが高まり、検査が多様化する一方、専門的な技術を身に付ける卒後教育が施設ごとのOJTに依存しているという事情がある。卒前教育から専門資格取得後まで、教育を「仕組み」として整える必要性が高まっている。 睡眠医療への関心が高まる中、技師教育も大きなテーマとなった学会の合同大会 睡眠検査の代表格である睡眠ポリグラフ検査(PSG)は、脳波や眼球運動、筋電図、心電図、呼吸、血中酸素飽和度などを同時に記録する。正確な検査・解析には幅広い知識と技術が必要で、患者対応やCPAP療法への支援など、検査以外の能力を求められる場面も多い。 タスクシフト・シェアの推進により、CPAP導入時の陽圧調整は、医師の指示の下で検査技師が担える業務として明確に位置付けられた。睡眠医療の現場で検査技師に求められる役割は、検査の実施・解析にとどまらず広がっている。 OJT依存、施設・地域で教育格差 ところが、検査技師が経験できる症例や教育環境は勤務先によって異なる。睡眠専門施設、大学病院、中規模病院などではPSGの実施状況や検査技師の関わり方に差がある。このため、個人の経験に依存せず、技量を初級、中級、上級などと段階的にレベルアップしていく仕組みや、特殊症例の解析や患者指導、後輩の指導までできる中堅層を増やすことが重要になっている。 背景には、CPAP市場が拡大し、その対応が急務になっていることがある。近年は簡便な携帯型睡眠検査装置の使用も拡大。睡眠障害が標榜科に追加されたこともあり、睡眠医療に取り組む施設は今後さらに増えるとみられる。 しかも睡眠障害は多様な疾患だ。非専門施設による睡眠医療への参入が広がる中、睡眠時無呼吸症候群以外の睡眠障害を十分に考慮しないまま、検査やCPAP管理が行われることを懸念する声もある。 日本睡眠学会には、睡眠検査の専門的な知識・技能を評価する「専門検査技師」の認定制度がある。しかし、専門検査技師を目指す技師の教育は、学会のセミナーや各施設でのOJTに頼る部分が大きいという。指導者や経験できる症例の偏りから、施設間、地域間で教育機会に差が生じている。 「指導検査技師」で地域の育成支援へ こうした中、浮上しているのが経験豊富な専門検査技師を教育者として活用する「指導検査技師」構想だ。同学会では、認定後10年以上の専門検査技師を指導検査技師として位置付ける方向で制度設計が進む見通しだ。自施設の後進育成だけでなく、地域の施設への教育支援や症例共有、ウェブを使った指導などを担ってもらい、所属施設を超えて技師を育てる仕組みを目指す。 教育を巡る変化は卒後だけではない。臨床検査技師の養成課程では、2021年のカリキュラム改正で「睡眠時無呼吸症候群検査」が教育項目として明記された。今年7月の合同大会では、現場の認定技師が養成校の講義や実習に関わるなど、教育機関と臨床現場をつなぐ必要性を指摘する声も上がった。 睡眠検査の質を一定に保つには、個々の検査技師の経験だけに頼らず、卒前から卒後、専門資格取得後まで学び続けられる環境が欠かせない。睡眠医療の広がりとともに、「検査を担える人をどう育てるか」が次の課題になっている( 表 )。(中) 表 睡眠検査技師の教育を巡る主な課題と方向性 今起きていること 課題 今後の方向性 睡眠検査が多様化 PSGやCPAPなど幅広い知識・技術が必要 検査レベルに応じた教育を整備 教育はOJT中心 施設・地域で指導者や症例に差 学会や地域を含めた教育体制へ 専門検査技師制度がある 新規受験や更新、後進育成が課題 「指導検査技師」構想で教育を支援 卒前教育も変化 学校で学べる内容・実習には限界 養成校と現場の認定技師が連携 精度管理の充実が必要 PSG判定などの標準化は難しい 標準手順書やサーベイなどを検討 〔編集部作成〕






















































