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キャリア・学び2026.08.28 06:00ロックアイコン

Voice of Lab. file 10 力丸 峻也(福島県立医科大学附属病院輸血・移植免疫部

研究未経験の技師が英文論文を書き上げるまで——「まずはやってみる」と、周囲の支えがくれた一歩

研究経験も浅く、英文論文を書くことなど想像もしていなかった私が、新たな装置の評価をきっかけに研究へ挑戦しました。臨床業務との両立やデータの解釈、英文執筆、査読対応など、壁にぶつかるたびに支えとなったのは、教授や共同研究者、先輩技師の存在でした。周囲の力を借りながら一歩ずつ進み、論文掲載と学術奨励賞の受賞に至るまでの経験を振り返ります。 私、こんなことしてます! 私は福島県立医科大学附属病院の輸血・移植免疫部に所属し、輸血検査をはじめ、造血幹細胞の採取や処理、凍結・管理、抗血小板抗体検査、新生児同種免疫性血小板減少症(NAIT)の検査などに携わっています。 1.乾式FFP融解装置の評価を研究へ こうした臨床業務に携わる中で、私は「45℃の乾式融解装置を用いることで、新鮮凍結血漿(FFP)の凝固活性を維持しながら迅速に融解できる可能性」を検証する研究に取り組みました。その成果は、学会発表を経て英文誌『Transfusion』に原著論文として掲載され、 第74回日本輸血・細胞治療学会学術総会では第31回学術奨励賞を受賞 しました。 『Transfusion』に掲載された原著論文 研究のきっかけは、当院で新型の乾式FFP融解装置を評価する機会をいただいた際、教授から「研究としてまとめ、論文にしてみないか?」と声をかけていただいたことでした。当時は研究経験も浅く、自分が主体となって研究を進め、英文論文を書くことなど想像もしていませんでした。それでも、貴重な機会を逃したくないという思いから、 まずは挑戦することを決めました 。 2.研究遂行と英文論文執筆で直面した課題 研究では、乾式融解装置と従来の恒温槽を用いて、FFPの融解時間や各種凝固因子活性を比較しました。しかし、装置の有用性と安全性を示すために何を測定すべきか、限られた研究用FFPをどう効率的に用いるか、正確な温度測定をどう行うかなど、次々と課題が生じました。そのたびに教授や共同研究者と議論を重ね、研究の目的に立ち返りながら、一つずつ方針を決めていきました。 特に苦労したのは、 臨床業務と研究の両立 です。実験が計画通りに進まないことや、追加検証が必要になることもありました。また、複雑なデータをどのように解釈し、図表や文章でわかりやすく伝えるかという壁にも直面しました。研究内容を人に説明することで、自分の論理の飛躍やデータ不足に気づき、研究への理解を深めることができました( 図 )。 図 講演スライドで使用した論文結果の一部 〔Rikimaru S, et al : Transfusion, 65 : 2024-2033, 2025を基に筆者作成〕 英文論文の執筆では、先行研究を読み込み、得られた結果をどのように位置づけるかを考えることにも苦労しました。日本語で考えた内容をそのまま英語に置き換えるのではなく、論理の流れを整理し、読み手に伝わる表現へ何度も修正しました。査読で指摘された点を一つずつ検討し、追加解析や文章の修正を重ねた経験も、研究を客観的に見直す大きな学びとなりました。 3.研究経験を輸血・細胞治療の実践へ 研究を最後までやり遂げられたのは、教授や共同研究者、先輩技師をはじめ、多くの方々が支えてくださったからです。この経験から、挑戦する過程そのものが学びとなり、成長につながることを実感しました。 今後は、研究を通じて培った課題を見つける力、データを正しく捉える力、わかりやすく伝える力を日々の輸血・細胞治療の現場へ還元するとともに、今度は自らの視点で一から研究を立ち上げることにも挑戦していきたいと考えています。それらの活動を通じて、より安全で質の高い医療に貢献できる臨床検査技師を目指したいと思っています。 —{明日のリーダーが今、考えていること}— 明日のリーダーが今、考えていること 若手の頃は、「知識が足りない」「自分にはまだ早い」と考え、挑戦を先延ばしにしがちです。しかし、すべての準備が整うのを待っていては、最初の一歩を踏み出せません。 研修会、学会での発表や研究の機会が巡ってきたときは、まず「やってみる」ことも大切です。最初から一人で完璧にこなす必要はありません。周囲に相談して力を借りながら学ぶと同時に、自ら考え、調べ、粘り強く取り組む姿勢も欠かせません。 また、学会や研修会での出会いも大切にしてください。そこでの意見交換や人とのつながりが、新たな気づきや次の挑戦を生むこともあります。 一歩を踏み出す勇気と日々の努力、人とのつながりの積み重ね が、臨床検査技師としての強みとなり、自分自身の価値を高めてくれるはずです。

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業界ニュース2026.08.28 05:00ロックアイコン

編集部 Pick Up ニュース[8月28日号]

忙しい臨床検査技師のための注目ニュースまとめ

臨床検査技師が押さえておきたい今週注目の5本 大腸がん45%に大腸菌産生毒素 大阪大、東大などの研究グループが、日本人の大腸がんの約45%で、一部の大腸菌が作る毒素「コリバクチン」によるDNA損傷の痕跡が確認されたと発表。便検査によるリスク評価につながる可能性も。 会報広告料を情報公開対象に 臨薬協が、会員企業と医療機関との透明性確保のための行動基準を改訂。従来、対象外だった▽賛助会費▽学会などの会合開催に付随しない広告料-を公開対象に追加。27年度支払分から適用へ。 GL周知で、赤血球製剤の廃棄率が低下 輸血・細胞治療学会が、血液製剤の使用ガイドラインの周知状況と、製剤使用量・廃棄率との関連を調査。200床以上の約5~7割でGLが周知されており、赤血球製剤では周知施設での廃棄率が低い傾向に。 JCCLSの外部精度管理、来月2日から 臨床検査標準協議会(JCCLS)が、外部精度管理の申込受付を来月2日から開始。小規模検査室を対象にしたもので、「臨床化学」と「血球検査」の2領域。どちらか1領域の参加も可能。 【新製品】「LZテスト‘栄研’FER2」 栄研化学が、新たなフェリチンキット「LZテスト‘栄研’FER2」を発売。既存品の高感度性能などを維持した上で測定範囲を拡大。高濃度検体の再検率低減と、低濃度域の再現性を向上させた。

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キャリア・学び2026.08.26 06:00ロックアイコン

AI×循環器検査 AI 解析の臨床応用とマネジメント #3

AIによる心房細動リスクの可視化

はじめに——心房細動の早期発見における課題 心電図は日常診療において不可欠な診断ツールであり、不整脈から虚血性心疾患まで、幅広い疾患の診断において極めて重要な役割を果たしています。 なかでも、心房細動(AF)は臨床で遭遇する最も一般的な不整脈であり、心不全、脳卒中、さらには心臓突然死のリスクを増大させると報告されています 1) 。AFの有病率は年齢とともに増加する 2) ことが知られているため、高齢化の進展に伴い、今後さらに患者数が増加することが予測されます。 AFの発症初期は持続期間が7日以内の発作性心房細動(PAF)を呈しますが、発作を繰り返すうちに心臓に電気的・構造的リモデリングが引き起こされ、持続性AFへと移行していきます。つまり、AFの持続そのものが、さらなるAFが発生・持続しやすい病態を作り出すことになります。したがって、AFの適切な管理治療を行うためにも早期発見と介入が必須となります。 しかし、PAFもしくは無症候性AFの場合では、12誘導心電図はもちろん携帯型心電計を用いても発作を記録できないことはしばしば経験されます。当然ながら臨床において発作時の心電図を記録できなければ確定診断することはできません。いくつかの報告から、AFによる電気的・構造的リモデリングは洞調律時の心電図にも微細な変化として反映されることが示唆されていますが、不整脈のプロフェッショナルであってもこれを目視で捉えることは困難です。 一方で、AIは人間の目には感知できない波形情報を検出する可能性を秘めています。本稿では、AIを用いて洞調律から隠れたAFリスクを検出・可視化する最新技術について概説します。 AIによる心房細動リスクの推定機能とは? 2024 年、フクダ電子より AI 解析機能を搭載した 12 誘導心電計がリリースされました。この解析機能は、洞調律時の 12 誘導心電図を入力して学習済みの AI モデルによって隠れ AF リスクを推定するものです。有症候・無症候にかかわらず、発作時心電図の記録がなく診断がついていない患者であっても、洞調律心電図から AF リスクを推定することが可能です。本機能はリスクを可視化し、携帯型心電計などを用いた精査へとつなげることで、 AF の早期発見を目指す機能になります。 洞調律心電図から心房細動リスクを検出する仕組み AFは引き金となるトリガーにより発生し、心臓の電気的・構造的リモデリングにより形成される不整脈基質により持続します。AF患者の心電図には洞調律時であっても、この不整脈基質の特徴が潜在的に反映されていると考えられています。 AI解析機能は、膨大なPAF患者と非PAF患者の洞調律心電図を学習データとした深層学習により構築されました。人間では判別不能な心電図波形の潜在的特徴を自動的に抽出し、AFのリスク分類を行います。AFを過去に発症していたリスクを「L(Low)< ML(Middle Low)< MH(Middle High)< H(High)」の4段階に評価されます。Lでは過去にAFを発症した可能性が非常に低い、Hでは過去にAFを発症した可能性が高いとされます。その診断精度は、感度72.3%、特異度77.7%と良好な成績が報告されており、スクリーニングツールとしての有効性が示されています。 なお、本機能には適切な解析を行うための除外基準( 図1 )が設けられており、すべての波形に適用できるわけではない点に留意する必要があります。 図1 適切な解析を行うための除外基準 〔フクダ電子株式会社:CardiMax9 with AI technology;隠れ心房細動リスク推定機能.p4より〕 症例からみるAI解析機能の有用性 市立四日市病院(以下、当院)において、AI解析機能を用いた2症例をお示しします。 症例 1 心電図所見からも心房細動リスクが推測された症例(図2) 75歳男性、AFリスク推定結果:H 図2 症例1(心電図所見からもAFリスクが推測された症例) 〔筆者作成〕 心電図所見としては、左房負荷、心房間伝導ブロック(Baye’s症候群)、右脚ブロック、左室肥大が挙げられます。 詳細は割愛しますが、Baye’s症候群はAF発症の強力な予測因子であり 3) 、心臓超音波検査でも左房容積係数が87.9 mL/m 2 と高度の左房拡大を認めました。実際過去にAFを発症しており、人間の目でも洞調律時の心電図からAFリスクが高いことを推定可能な症例に対し、AIが正当に「隠れ心房細動リスク推定結果:H」と評価した例になります。 症例 2 AIのみが心房細動リスクを検出した症例(図3) 52歳女性、AFリスク推定結果:H 図3 症例2(AIのみがAFリスクを検出した症例) 〔筆者作成〕 心電図所見としては特記すべき異常はなく、心臓超音波検査でも左房容積係数は30.0と正常です。 しかし、AI解析機能は「隠れ心房細動リスク推定結果:H」を示しており、実際に過去にAF診断歴が確認されました。本症例の洞調律時の心電図からは心房拡大や、心房の伝導障害など、目視レベルでのAFリスクを示唆する所見は見られませんでした。このような症例の場合では人間の目でAFリスクを見抜くこと困難です。これこそがAI解析機能の有用性を示した症例であると考えます。 おわりに——AI心電図解析の可能性と今後の課題 AFの早期発見・介入が求められる現代医療において、洞調律心電図から一歩進んでAFリスクを可視化するAI技術は非常に有用なものになります。 一方で、AIの医療応用を考える際には考慮すべき点も多々あり、実際に院内で広く活用するようになるまで時間がかかります。本機能はあくまでも精査の必要性を示唆するスクリーニングツールであり、それ単体で確定診断を下すものではありません。リスク推定結果がHやMHと示された際、どのような頻度・内容の検査を行うかという臨床応用については、当院においても慎重に検討を重ねている段階にあります。 しかしながら、今後もさらに増加が予想されるAF患者のリスクを事前に予測することは、早期介入のためにも極めて意義深く、今後のさらなるAI技術の発展と普及が期待されます。 引用文献 1)Van Gelder IC, et al:2024 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS). Eur Heart J, 45:3314-3414, 2024 2)Tan S, et al:Burden and age-specific trends of atrial fibrillation/atrial flutter from 1990 to 2023: a growing challenge among younger and middle-aged adults. Europace, 28:euag036, 2026 3)Martínez-Sellés M, et al:Advanced interatrial block and P-wave duration are associated with atrial fibrillation and stroke in older adults with heart disease: the BAYES registry. Europace, 22:1001-1008, 2020

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ランチョンセミナー21:現状分析から始まる「次世代検査室の設計」~当たり前を完遂する機器導入プロセスと10のキーワード~(日本医療検査科学会 第58回大会共催セミナー)

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ランチョンセミナー13:HCV排除に向けた最終戦略: HCV Duoがもたらす診断フローのパラダイムシフト(日本医療検査科学会 第58回大会共催セミナー)

提供:ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社