[新春対談]医療DX、タスクシフトが変える臨床検査技師の役割 現場・政策の最前線から読み解く未来(上)
“検査室外”という新たなフィールド

臨床検査技師を取り巻く環境が大きく変わり始めている。医師の働き方改革に伴うタスクシフト・シェア、技術革新やAIの進展、そして政府が推し進める医療DX(デジタルトランスフォーメーション)―。検査現場には変化が押し寄せ、求められる役割は広がりつつある。
新年特別対談では、医師であり政治家でもある衆院議員の安藤高夫氏と、日本臨床衛生検査技師会の横地常広会長が登場。病院経営者と職能団体トップ、それぞれの視点から「時代が求めている臨床検査技師」の未来像を語っていただいた。(編集部)
横地氏 今日の対談テーマは「時代が求めている臨床検査技師」です。装置や試薬などの技術革新が進み、人工知能(AI)も急速に広がり始めるなど、社会環境が大きく変わってきています。加えて、医師の働き方改革に伴うタスクシフト・シェアへの対応や、医療DXへの取り組みが求められる中で、これからわれわれ臨床検査技師に何が求められ、どういった意識改革が必要なのかについて、医師である安藤先生と話を進めていきたいと思っています。
まず考えたいのは、検査領域での技術革新やDX、人工知能によって、検査業務は今以上に自動化や効率化が進んでいくということです。言い換えれば、近い将来、検査室業務に必要な人手はこれまで以上に減っていくということです。
こうした変化が確実に見込まれる中、われわれは検査のテクニシャンとしての役割に加え、これからは“検査室の外”で診療支援ができる人材も育てていく必要があるのではないかという視点です。もちろん、品質保証された検査データをしっかり出すという根幹業務に変わりはないのですが、検査室外での新たな存在価値の確立に向けて動き出してほしいという思いがあるのです。タスクシフト・シェアを通じた取り組みは、臨床検査技師が活躍する場を広げるチャンスであり、職能団体として広く呼びかけているところです。
ただ、現実として、臨床検査技師は検査室内の仕事に意識が向きやすく、外に出るイメージが持てない人が多いのも事実です。まず、この点について、医師であり病院経営者でもある安藤先生からご意見を頂ければと思います。
医師のパートナーとしての可能性
安藤氏 臨床検査技師が活躍する場をより広げるという意味では、タスクシフト・シェアの取り組みは非常に重要で、その流れは加速させるべきだと考えています。確かに、臨床検査技師へのタスクシフト・シェアはそれほど進んでいない印象はあるのですが、チーム医療が当たり前の時代になり、臨床検査技師は医師の頼れるパートナーになり得る存在だと考えています。
臨床検査技師は、検体検査から生理検査まで幅広いスキルと知識を持ち、検査データを読み解く専門性に強みがある。そのスキルを診療の場で生かすことには大きな意義があるのではないでしょうか。タスクシフト・シェアへの対応は病院幹部の考え方が影響することも多いですが、彼らの世代交代が進むことでタスクシフト・シェアは前進していくと私は捉えています。
マルチに活躍できる方が多い医療職という印象もあり、病院経営に参画する人材もいます。私の病院では臨床検査技師が事務局長として病院経営を支えています。個人的には、検査データに基づくバイタルチェックや問診的な対応、さらには生活指導まで臨床検査技師が担う姿も想像できます。このあたりまで視野が広がってこそ、本当の意味でのタスクシフト・シェアだと言えるのかもしれません。
横地氏 臨床検査技師が検査室外で活躍するためには、検査室の業務をいかに効率化し、余力を生み出すかがポイントになります。その鍵の一つが医療DXだと思うのですが、最新装置やITシステム、AIやロボットなどを導入するにはどうしても費用がかかる。経営が厳しい病院ほど設備投資しづらい状況だと言えると思います。国には、医療現場のDX推進に向けた支援をぜひ検討してほしいと考えています。
安藤氏 おっしゃる通り、医療DXには莫大な費用がかかります。医療DXの中核である電子カルテも、中規模以上の病院では更新するだけで5億円規模の費用がかかります。国が本気で医療DXを進めるのであれば、設備費用のサポートが必須というのは同感です。長い目で見れば、それこそ重複する検査などは効率化されることで、1兆円くらいの医療費を抑えることはできるという試算もあります。
医療DXへの取り組みとして、院内の医療職にスマートフォンを持ってもらい、さまざまな情報を共有しながら成果を上げ始めている病院もあります。それぞれの職種一人一人がより効率的に動き、業務時間の有効活用を支える環境が整っているようです。例えば、こういった取り組みを後押しするような支援は必要です。高市早苗首相は、医療機関が厳しい経営環境に置かれていることを理解されているので、今後の国の動きにも注目しているところです。

MTJ本紙 2026年1月1日号に掲載したものです。
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