[新春対談]医療DX、タスクシフトが変える臨床検査技師の役割 現場・政策の最前線から読み解く未来(下)
地域医療再編と検査体制の未来

臨床検査技師を取り巻く環境が大きく変わり始めている。医師の働き方改革に伴うタスクシフト・シェア、技術革新やAIの進展、そして政府が推し進める医療DX(デジタルトランスフォーメーション)―。検査現場には変化が押し寄せ、求められる役割は広がりつつある。
新年特別対談では、医師であり政治家でもある衆院議員の安藤高夫氏と、日本臨床衛生検査技師会の横地常広会長が登場。病院経営者と職能団体トップ、それぞれの視点から「時代が求めている臨床検査技師」の未来像を語っていただいた。(編集部)
横地氏 ここまで臨床検査技師の院内業務や、病棟配置の可能性について議論してきましたが、地域医療体制そのものの変化も視野に入れる必要があります。臨床検査技師は検査室内に目が向きがちですが、これからは人口減少に伴い地域医療を再編しようとする国の動きにもアンテナを張る必要があるのではないでしょうか。医療機関の経営が厳しくなる中、大学病院や急性期病院と、地域を支える病院・診療所の役割分担がますます求められてきているように感じます。
安藤氏 人口減少が急速に進んでいる地域の病院では、外来は地域の開業医に任せ、入院機能をしっかり担うのが基本になります。個人的な考えではあるのですが、例えば病院内に開業してもらって外来機能を担ってもらったり、フロアごとに老人保健施設であったり、特別養護老人ホーム、グループホームなどの機能を持たせるようなアイデアがあってもいいのかもしれません。少し極端な話に聞こえるかもしれませんが、こうした仕組みが地域連携を強め、患者にとってもメリットがあると思います。地方では同じタイプの病院が複数存在するケースも多く、医療従事者の確保も難しくなる中、基幹病院への集約の議論もやはり必要だと思います。
横地氏 地域医療の再編では、数年前に制度がスタートした「地域医療連携推進法人」に注目しています。一つの法人格に複数病院がぶら下がって連携する仕組みで、病院経営を支える医療職確保や資金などでの融通もできる部分があります。共同購入のメリットもあり、少しずつ導入が進んでいるようです。
例えば、3つの病院が同じ法人で経営される場合、全ての病院が同じような検査室機能を持つ必要はないと思います。全ての病院で共通するような一般検査は、法人が運営する非営利のラボセンターに集約し、そこに装置や人員を重点配置する考え方は出てくると思います。周辺診療所からの検査受託や、採血拠点としても活用できる。例えば、地域の住民は診療所に行く前に、そのラボセンターで採血、検査を受け、医療機関を受診する際には検査データがシステムを通じて届いている世界が理想ですよね。そうした環境づくりには、施設間の移動バスなど自治体による支援サービスも検討課題になります。
安藤氏 先生がおっしゃったような世界は絵空事ではなく、仮に現行制度で難しいとしてもルールを変えることで実現できると思います。病院経営が厳しくなる中で、医療を支える検査体制を地域全体で考え、柔軟に運用していくというのは一つの選択肢になるのではないかと思いますね。
話題を戻すと、検査室や臨床検査技師にもやはり変化が求められてくるということです。先ほどから話に出てきた病棟もそうですが、救急や在宅なども含め、検査室外の業務でしっかり貢献できる人材が出てくれば院内での存在感はより高まってくると思います。また、病院経営者の視点で言えば、試薬や資材購入などのコスト意識も臨床検査技師に忘れてはほしくないポイントです。
横地氏 確かに臨床検査技師はコスト意識がそこまで高くないのかもしれません。どうしてもアカデミックな部分への関心が高いため、新しい試薬や検査項目には敏感ですが、検査室の収支や消耗品のコストを理解していない場合もあります。ただ、病院経営が厳しくなる中で、経営にも関与する検査室幹部は当たり前ですが、現場の臨床検査技師にも、どういった検査にどの程度のランニングコストがかかっているかは把握しておいてほしいです。
院内カンファレンスにも積極参加を
安藤氏 今後、臨床検査技師がチーム医療で役割を果たしていくためには、院内勉強会への参加が重要になるのではないかとも感じています。院内で臨床検査技師が活躍している病院では、医療職への研修機会が多く、充実している印象はあります。現状では、院内カンファレンスに参加する機会が少ない臨床検査技師も多いのかもしれませんが、やはり医師、看護師、薬剤師らと共に学ぶ姿勢が、これからは大事になってくるのではないでしょうか。
横地氏 そうですよね。院内カンファレンスでは当たり前ですが、患者のさまざまな検査データに基づいた議論が行われています。われわれが提出した検査データが、どのように活用されているかを知ることは当然必要なことです。カンファレンスの場で、医師から検査データの解釈を求められ、コメントできるようになれば、検査のプロとしての存在感は確実に高まります。実際の患者像に向き合いながら役割を果たしていくことが、本当の意味でのチーム医療の一員だと思います。
検査室内で経験、知識を積み上げてきた方も多いですが、これからは医師ら他の医療職と交わるような場に積極的に出て行って、刺激を受けながらスキルや技術を磨いていくのも一つの形だと思っています。 そして、医師や看護師に「任せても大丈夫」と思っていただける臨床検査技師を育てていくことが重要です。
繰り返しになりますが、信頼できる検査データを出すという根幹業務の重要性はこれからも変わることはないですが、やはり時代の変化に応じて、変わっていかなければならない。新年の対談企画ですし、臨床検査技師や検査室の将来展望について、改めて病院経営者、医師の視点でメッセージを頂ければと思っています。
地域包括ケアで広がる活躍の場
安藤氏 臨床検査技師には、診療の土台となる検査データはもちろん、病院経営や介護分野のデータなど幅広いデータや情報まで扱ってもらえるとうれしいですよね。やはりさまざまなデータを収集分析して、その解釈や判断材料を示しながら、次の展開に持っていくスキルに長けている方が多いという印象があるのです。その延長線上には地域包括ケアのスキームの中で、活躍する多くの臨床検査技師の姿が見えてくると思います。
横地氏 未来に向けた心強いメッセージを頂きました。臨床検査技師が今後さらに必要とされる存在になるため、環境の変化にアンテナを張り、会員の声を聞きながら変化の時代を乗り越えていきたいと思います。本日はありがとうございました。

MTJ本紙 2026年1月1日号に掲載したものです。
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