キャリア・学び

「私らしい働き方」を選ぶために 愛知県の有志がウェブセミナー
「等身大のキャリア」を語り合う

2026.02.02 06:10 会員限定記事を示すアイコン

(左から)世話人の西尾氏、原氏、及川氏
(左から)世話人の西尾氏、原氏、及川氏

 

臨床検査技師として専門性を高めたいけれど、子育てとの両立に悩み、アクセルの踏み込み時が分からない―。多くの臨床検査技師が直面するそんな課題に対し、愛知県の有志による手づくりのウェブセミナーが静かな共感を呼んでいる。これまでに6回開催され、毎回高い満足度を記録している本セミナー。教科書的な正解ではなく、迷いも含めた「等身大のキャリア」を語り合う場となっている。

 

「苦しかった」経験を次世代の糧に

「キャリアプランについて話す場があったら有意義だと思わない?」。そう持ちかけたのは、世話人の一人である西尾美津留氏(小牧市民病院)。微生物検査の仲間との酒席での会話。それがセミナー開催の始まりとなった。

西尾氏は、出産後、2人の子どもを育てながら認定臨床微生物検査技師の資格を取得した。「子育てとの両立はわりと大変で、苦しかった」。資格取得のため業務終了後に研究をしたり論文を執筆したりした当時をそう振り返る。

働き始めた当時は身近に参考にできるロールモデルがおらず、仕事では男性優位の時代。「出産後に本腰を入れたらいい」という周囲の声に流され、認定取得を身近に感じることはなかった。

子どもと一緒に過ごしたい時間を資格取得のために割いた。「出産前に論文執筆や資格取得をしておけばあれほど苦労しなかったのではないか」。そんな自問が次世代のために情報交換の場をつくりたいという思いにつながった。

その問いかけに、原祐樹氏(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院)が呼応する。管理職として、育児に忙しく認定資格の取得を諦めてしまう後輩を間近で見てきた。その姿を見て「若手に参考になるようなキャリア形成のアドバイスが必要」と感じていたという。

自身は真逆の若手時代を過ごした。朝6時に出勤し、夜は9時ごろまで病院に残って研究や論文執筆、技師会活動にいそしんだ。「家庭のことを顧みずにがむしゃらにやってきた」という働き方はもう今の時代にはそぐわない。「子どもとの時間を犠牲にして後悔する人をつくりたくない」。管理職になった今、そう感じると話す。

もう一人の世話人の及川加奈氏(JA愛知厚生連江南厚生病院)には、西尾氏が「現在進行形で向き合っている人の意見も大事にしたい」と直接声をかけた。

及川氏は当時、育休中。微生物検査技師の認定資格は取得していたが、「これからのキャリアをどうするか悩んでいた時期に西尾さんに声をかけてもらった」と語る。育休中だった当時、認定取得・技師会研究班活動を頑張ってきた出産前とのギャップが大きく、焦りを感じた。「仕事なのかプライベートなのか、どこにウエートを置いたらいいのか。バランスがつかめなかった」。育児と仕事との両立にもがいている「ど真ん中の世代」だからこそ、役に立てることがあると世話人に加わった。「自分自身が目標にできるロールモデルに出会えれば」。そんな期待もあったという。

 

経験や「迷い」共有できる場に

ウェブセミナーは、2023年5月から始まり、開催は年に2回のペース。世話人3人が知り合いの検査技師に声をかけ、趣旨に賛同した毎回2~3人が自身の経験や考えを語る。毎回、夜9時からの1時間とし、途中参加や退室も可能となっている。

世話人や講師は全てボランティア。オンライン会議は世話人のプライベートのアカウントを使う。セミナー参加も無料だ。

これまでの講演のタイトルには次のようなものが並ぶ。

「家庭と仕事の両立を考える〜キャリア形成における葛藤」

「部署異動は突然に〜認定取得直後の異動からの再起物語」

「キャリアのジグソーパズル〜多数のローテーションで築いた私のキャリア」

講師には子育て世代だけではなく、管理職世代も登場する。当初は人生設計やキャリア形成のテーマが多かったが、参加者からの要望に応えていく中で、部署異動や組織の心理的安全性にも話題が広がった。

愛知県のメンバーが主体となっているLINEグループなどを通じて開催を案内し、参加者は毎回50人程度。20代、30代の子育て世代が7割以上を占めるが、50代も1割程度いる。世話人の原氏には、自分のこれからのキャリアに悩む管理職の姿が浮かぶという。

終了後のアンケート調査では、5段階評価の最高評価が8割近くを占め、毎回参加者の満足度は高い。

世話人の及川氏は、活動を通じて「自分の悩みは、みんなの悩みだったのだと気付いた」と語る。一人で抱え込んでいた不安が言語化され共有されることで前向きな意識へとつながる。

 

キャリアアップだけが正解ではない

西尾氏は、活動の意義について「キャリアアップすることだけが正解ではない」と強調する。重要なのは、仕事に重きを置くのか、家庭を優先するのか、そのバランスを周囲に流されるのではなく「自分で決める」こと。「それぞれが早い時期から自分の人生設計やキャリアをしっかりと考え、満足のいく仕事人生を歩む、その一点に尽きる」。

次回第7回のセミナーは3月18日(水)の開催を予定している。テーマは「自分らしいライフキャリアの築き方について考える」。いつも通り、夜9時から1時間、途中参加・退室OKで開催することにしている。無料(事前申し込み制)。

 

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