Voice of Lab. file 10 力丸 峻也(福島県立医科大学附属病院輸血・移植免疫部)
研究未経験の技師が英文論文を書き上げるまで——「まずはやってみる」と、周囲の支えがくれた一歩

研究経験も浅く、英文論文を書くことなど想像もしていなかった私が、新たな装置の評価をきっかけに研究へ挑戦しました。臨床業務との両立やデータの解釈、英文執筆、査読対応など、壁にぶつかるたびに支えとなったのは、教授や共同研究者、先輩技師の存在でした。周囲の力を借りながら一歩ずつ進み、論文掲載と学術奨励賞の受賞に至るまでの経験を振り返ります。
私、こんなことしてます!
私は福島県立医科大学附属病院の輸血・移植免疫部に所属し、輸血検査をはじめ、造血幹細胞の採取や処理、凍結・管理、抗血小板抗体検査、新生児同種免疫性血小板減少症(NAIT)の検査などに携わっています。
1.乾式FFP融解装置の評価を研究へ
こうした臨床業務に携わる中で、私は「45℃の乾式融解装置を用いることで、新鮮凍結血漿(FFP)の凝固活性を維持しながら迅速に融解できる可能性」を検証する研究に取り組みました。その成果は、学会発表を経て英文誌『Transfusion』に原著論文として掲載され、第74回日本輸血・細胞治療学会学術総会では第31回学術奨励賞を受賞しました。
研究のきっかけは、当院で新型の乾式FFP融解装置を評価する機会をいただいた際、教授から「研究としてまとめ、論文にしてみないか?」と声をかけていただいたことでした。当時は研究経験も浅く、自分が主体となって研究を進め、英文論文を書くことなど想像もしていませんでした。それでも、貴重な機会を逃したくないという思いから、まずは挑戦することを決めました。
2.研究遂行と英文論文執筆で直面した課題
研究では、乾式融解装置と従来の恒温槽を用いて、FFPの融解時間や各種凝固因子活性を比較しました。しかし、装置の有用性と安全性を示すために何を測定すべきか、限られた研究用FFPをどう効率的に用いるか、正確な温度測定をどう行うかなど、次々と課題が生じました。そのたびに教授や共同研究者と議論を重ね、研究の目的に立ち返りながら、一つずつ方針を決めていきました。
特に苦労したのは、臨床業務と研究の両立です。実験が計画通りに進まないことや、追加検証が必要になることもありました。また、複雑なデータをどのように解釈し、図表や文章でわかりやすく伝えるかという壁にも直面しました。研究内容を人に説明することで、自分の論理の飛躍やデータ不足に気づき、研究への理解を深めることができました(図)。
〔Rikimaru S, et al : Transfusion, 65 : 2024-2033, 2025を基に筆者作成〕
英文論文の執筆では、先行研究を読み込み、得られた結果をどのように位置づけるかを考えることにも苦労しました。日本語で考えた内容をそのまま英語に置き換えるのではなく、論理の流れを整理し、読み手に伝わる表現へ何度も修正しました。査読で指摘された点を一つずつ検討し、追加解析や文章の修正を重ねた経験も、研究を客観的に見直す大きな学びとなりました。
3.研究経験を輸血・細胞治療の実践へ
研究を最後までやり遂げられたのは、教授や共同研究者、先輩技師をはじめ、多くの方々が支えてくださったからです。この経験から、挑戦する過程そのものが学びとなり、成長につながることを実感しました。
今後は、研究を通じて培った課題を見つける力、データを正しく捉える力、わかりやすく伝える力を日々の輸血・細胞治療の現場へ還元するとともに、今度は自らの視点で一から研究を立ち上げることにも挑戦していきたいと考えています。それらの活動を通じて、より安全で質の高い医療に貢献できる臨床検査技師を目指したいと思っています。
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力丸 峻也
福島県出身。2017年に昭和医療技術専門学校を卒業後、福島県立医科大学附属病院に入職。輸血・移植免疫部に所属し、輸血検査、造血幹細胞の採取・処理・凍結管理、移植検査などに従事している。認定輸血検査技師、細胞治療認定管理師。新鮮凍結血漿の迅速融解に関する研究成果を英文誌「Transfusion」に発表し、第31回日本輸血・細胞治療学会学術奨励賞を受賞。







