キャリア・学び

Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 一般01
尿沈渣中赤血球形態(acanthocytes)の再評価——現在の推奨基準と最新の知見から整理する

2026.04.03 06:00 会員限定記事を示すアイコン

画像

 

acanthocytesと赤血球円柱の併用による診断精度の向上1)

赤血球円柱は、赤血球が糸球体から尿細管へと漏れ出した証拠であり、古くから糸球体性血尿のゴールドスタンダードとされてきた。しかし、赤血球円柱は目視検査における検出感度が低いことが弱点であった(4~54%程度)。

最新の研究では、acanthocytesの同定と赤血球円柱の検出を組み合わせる包括的な鏡検手法が推奨されている。この組み合わせにより、糸球体腎炎の診断感度は75%、陰性的中率は83%まで向上する。さらに、急速進行性糸球体腎炎を惹起する半月体形成性腎炎や壊死性腎炎においては、その92%(47/51例)でacanthocytesまたは赤血球円柱のいずれかが認められたという知見は、急性腎障害(AKI)の緊急鑑別診断において極めて重要である。

 

一般検査のエキスパートレビュー

現代の尿沈渣鏡検において、最も重要視される赤血球形態がacanthocytesと考えられる。これは、中心部に明瞭な穴または菲薄化領域を持つドーナツ状(環状)の形態を基本構造とし、細胞膜の外側または内側に一つ以上の小胞状の突起(blebs)を有する赤血球を指すとされる。

1990年代の研究によって糸球体疾患との強い相関が証明され、これを裏付けるように本論文においても糸球体腎炎(GN)および糸球体疾患(GP)全体に対して極めて高い特異度を示すことが確認されている()。特に注目すべきは、GPに対する特異度と陽性的中率がいずれも100%に達している点である。これは、尿沈渣中にacanthocytesが確認された場合、その症例は何らかの糸球体病変を有していることがほぼ確実であることを示唆している。

表 acanthocytesの診断精度(GN・GP別)
診断対象 感度 特異度 陽性的中率 陰性的中率 
糸球体腎炎(GN) 68% 86% 78% 79%
糸球体疾患(GP) 45% 100% 100% 32%

〔Stark A, et al : Glomerular Dis, 5 : 206-218, 2025を基に作表〕


糸球体型(変形)赤血球の割合をどの程度に設定すべきかという点については、古くは全赤血球の80%以上を糸球体型(変形)赤血球が占める場合に糸球体性と判断する厳格な基準から、近年では少数の特異的形態を重視する傾向へとシフトしている。小児の糸球体疾患診断においては、acanthocytesの割合が≥1%、≥2%、≥5%、≥10%で、それぞれ感度62%、40%、28%、10%、特異度89%、95%、95%、98%と高い精度で診断可能であったとの報告がある2)

一方で、より一般的な糸球体型(変形)赤血球を用いる場合は、そのカットオフ値を50%以上かつacanthocytes 1%以上に設定することで、感度60%、特異度91%のバランスの取れた診断能が得られることが示されている。

 

判定に迷う症例でどう活かすか——acanthocytesと赤血球円柱の見方

JCCLS尿沈渣検査法の指針(GP1-P4)では、検査現場での実用性を考慮し、赤血球を大きく「非糸球体型(均一赤血球)」と「糸球体型(変形赤血球)」の2群に大別したうえで、さらに詳細なサブカテゴリーを設けている。

上述したacanthocytesはコブ・ドーナツ状不均一赤血球およびドーナツ・有棘状不均一混合型赤血球等が該当すると思われる。これらの糸球体型赤血球(3)の判定においては、単一の細胞を評価するだけでなく、沈渣全体のパターンを観察することが重要とされ、糸球体病変の感度、特異度のバランスをとっていると推察される。

図 糸球体型赤血球 〔日本臨床検査標準協議会(JCCLS)尿沈渣検査標準化委員会:尿沈渣検査法2010.日本臨床衛生検査技師会,2011より〕
図 糸球体型赤血球
〔日本臨床検査標準協議会 尿沈渣検査標準化委員会:尿沈渣検査法2010.日本臨床衛生検査技師会,2011より〕

実臨床において、赤血球形態の判定に悩む症例が多々ある。今回紹介した文献を踏まえて、判定に悩んだ場合には、赤血球円柱とacanthocytesの確実な検出により判定の裏付けとして活かせることが期待される。

 

 

引用文献

1)Stark A, et al : Glomerular Hematuria for the Diagnosis of Glomerulonephritis. Glomerular Dis, 5 : 206-218, 2025

2)Zaman Z, et al : Dysmorphic erythrocytes and G1 cells as markers of glomerular hematuria. Pediatr Nephrol, 14 : 980-984. 2000
3)日本臨床検査標準協議会 尿沈渣検査標準化委員会:尿沈渣検査法2010.日本臨床衛生検査技師会,2011

続きを見るには会員登録
(無料)が必要です

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

MTJメールニュースの会員のみなさまへ

MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。

すでに会員の方はこちらからログイン