Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 血液06
同じ寒冷凝集でも背景は違う——CADとCAS、その違いを知る


CADとCASの違いとは?
血算で赤血球凝集を疑う所見を認めた場合や、末梢血液像で赤血球凝集を確認した場合、その原因の一つとして寒冷凝集を考える。寒冷凝集は、寒冷凝集素が病態に関与する寒冷凝集素症(cold agglutinin disease : CAD)で認められる一方、感染症やリンパ性腫瘍などの基礎疾患に伴って生じる寒冷凝集素症候群(cold agglutinin syndrome : CAS)でも認められる。両者は寒冷凝集素が関与する点ではよく似ているが、その背景病態は異なる。
Beckingらは、冷式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を骨髄病理の観点から検討した1)。冷式AIHA 56例の骨髄生検85検体を再評価したところ、10例(18%)では明らかなB細胞性悪性腫瘍が確認され、CASに再分類された。残る46例のうち45例(98%)では、M蛋白または骨髄中のB細胞・形質細胞のクローン性が確認された。一方、WHO分類第5版に記載されたCAD-associated lymphoproliferative disorder(CAD-LPD)の典型的な骨髄組織像を満たしたのは5例(11%)にとどまった。この結果から、その典型像がみられないからといってCADを否定できるわけではなく、骨髄組織像だけでCADとCASを区別することは困難である。
では、両者の違いをどのように考えればよいのだろうか。
血液検査のエキスパートレビュー
1.CADとCASの疾患概念
CADとCASはいずれも寒冷凝集素が関与するAIHAであり、大きな違いはその背景にある。
令和7年度版『自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド』では、CADを独立したB細胞増殖性疾患とし、感染症やリンパ性腫瘍などに伴うものをCASとしている2)。CADでは既知のリンパ腫とは異なる特徴をもつクローン性B細胞増殖がみられ、約90%がIgMκ型である2,3)。国際的にも、CADはB細胞クローンが産生する単クローン性IgMが病態に関わる疾患とされている3)。一方、CASは感染症やリンパ性腫瘍など、寒冷凝集素の産生や溶血の原因となる別の基礎疾患に伴って生じる。CADでも単クローン性IgMを認めることがあるため、M蛋白やIgM-MGUSの有無だけでCADとCASを分けることはできない。重要なのは、CADにみられるクローン性B細胞増殖なのか、別の基礎疾患に伴うものなのかを見極めることである1-3)。
2.CADかCASか——鑑別の進め方
CADとCASの鑑別では、まず病的な寒冷凝集素が溶血に関与していることを確認する。そのうえで、感染症やリンパ性腫瘍などの基礎疾患の有無を調べる2)。画像検査ではリンパ節腫大や肝脾腫を確認し、骨髄検査では骨髄像・骨髄組織像およびフローサイトメトリーなどからリンパ性腫瘍の有無を評価する2)。リンパ形質細胞性リンパ腫/Waldenström macroglobulinemia(WM)との鑑別では、MYD88 L265P変異が重要で、検出されればWMを示唆する所見となる2)。
一方、Beckingらの報告が示すように、典型的な骨髄組織像を欠くことだけでCADを除外することはできない1)。明らかな二次性疾患がなく、クローン性B細胞増殖が確認されればCADが示唆される。クローンが検出されなくても、検査感度を考慮し、他の所見とあわせて総合的に判断する必要がある1-3)(表)。
| 寒冷凝集素症(CAD) | 寒冷凝集素症候群(CAS) | |
| 疾患概念 | 原発性の冷式AIHA | 基礎疾患に続発する冷式AIHA |
| 病態の背景 | 明らかな原因疾患を伴わず、B細胞リンパ腫の診断基準を満たさないクローン性B細胞増殖 | 感染症、自己免疫疾患、リンパ性腫瘍などの基礎疾患に伴う免疫反応 |
| 寒冷凝集素 | 多くは単クローン性IgMκ(約90%) | 感染症では多クローン性・一過性が多く、腫瘍性では単クローン性もあり |
| DAT | C3d強陽性、IgGは通常陰性(弱陽性のこともある) 典型的な結果:C3d(+)、IgG(-) |
C3d陽性を示すことが多く、IgGは通常陰性 |
| 寒冷凝集素価(CA価)・DAggT | CA価64倍以上。DAggT陽性も参考所見とし、64倍未満では低力価CADを検討 | CA価上昇(力価はさまざま)、DAggT陽性 |
| 検体取扱い | CA価など:採血後から血清分離まで37~38℃で保持 血球計数:採血後から保温または加温して測定 |
CADと同様の取り扱い |
| 画像所見 | 通常、明らかなリンパ節腫大・肝脾腫を認めない | リンパ性疾患ではリンパ節腫大・肝脾腫を認めることがある |
| 骨髄所見・B細胞クローン | クローン性B細胞増殖を認めることがある。典型的な骨髄所見を欠く例もある | 基礎疾患に応じた骨髄所見。リンパ性腫瘍では腫瘍性B細胞クローンや骨髄浸潤を認めることがある |
| MYD88 L265P 変異 | 通常は検出されない | WMを示唆する所見(検出感度に注意) |
〔Becking AL, et al : Eur J Haematol, 117 : 384-395, 2026/Berentsen S : Hematology Am Soc Hematol Educ Program, 2025 : 295-304, 2025/Ubezio G, et al : Blood Transfus, 2026を参考に作図〕
日常検査の視点——検査室で気づくポイント
日常検査では、血球計数の結果で赤血球恒数のバランスが崩れていることが、寒冷凝集に気づくきっかけとなる。赤血球凝集が強いとRBCやHctは偽低値となり、MCV・MCH・MCHCは偽高値を示す一方、Hbへの影響は比較的小さいため、HbとHctの関係が通常から外れることが手がかりとなる2,4)。末梢血塗抹標本で赤血球凝集を確認し、検体を37℃で加温後に再測定して赤血球恒数などが改善すれば、寒冷凝集の影響が示唆される4)。
また、寒冷凝集素価などを測定する際には、採血後から血清分離まで37~38℃程度に保つことも重要である2,5)。参照ガイドでは、特異的直接抗グロブリン試験(DAT)でC3d陽性を確認し、寒冷凝集素価64倍以上をCAD診断の基準としている。DAggTも病的意義のある寒冷凝集素を評価するうえで有用であり、寒冷凝集素価が64倍未満でもDAggT陽性の場合には低力価CADが考慮される2)。ここで重要なのは、まず病的な寒冷凝集素が溶血に関与していることを確認し、そのうえで背景病態を調べてCADとCASを鑑別することである2,5)。
実際の検査では、「寒冷凝集に気づく」→「病的な寒冷凝集素が溶血に関与していることを確認する」→「背景を調べてCADとCASを分ける」という順序で整理すると理解しやすい(図)。
〔⾃⼰免疫性溶⾎性貧⾎の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ:厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究(研究代表者:⿊川峰夫);自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド 令和7年度改訂版.2026を参考に作成〕
引用文献
1)Becking AL, et al : Bone marrow pathology in cold agglutinin-mediated autoimmune hemolytic anemia: a study of 56 cases. Eur J Haematol, 117 : 384-395, 2026
2)⾃⼰免疫性溶⾎性貧⾎の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ:厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究(研究代表者:⿊川峰夫);自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド 令和7年度改訂版.2026
3)Berentsen S : Diagnosis and management of cold agglutinin disease. Hematology Am Soc Hematol Educ Program, 2025 : 295-304, 2025
4)Rim JH, et al : Effects of cold agglutinin on the accuracy of complete blood count results and optimal sample pretreatment protocols for eliminating such effects. Ann Lab Med, 38 : 371-374, 2018
5)Ubezio G, et al : Standardized diagnostic approach for cold agglutinin disease: results from a Delphi-based expert consensus. Blood Transfus, 2026(online ahead of print)
続きを見るには会員登録
(無料)が必要です
会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。
MTJメールニュースの会員のみなさまへ
MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。








