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Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 血液03
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)型血球の臨床的意義をアップデート

2026.06.05 06:00 会員限定記事を示すアイコン

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骨髄機能不全患者におけるPNH型血球の特徴とは?1)

本論文は、再生不良性貧血(AA)または骨髄異形成腫瘍(MDS)患者における発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)型血球の保有率と臨床的意義を明らかにすることを目的に行われた多機関共同前向き観察研究である。高感度フローサイトメトリー(FCM)を用いて、2,402名の患者(AA 1,075名、MDS 900名、PNH 144名、その他の貧血 283名)の末梢血が解析された。

PNH型赤血球はAAの48.6%、MDSの12.8%、PNH型顆粒球はAAの51.5%、MDSの13.6%に検出された。PNH型血球陽性患者におけるPNH型血球の割合は、AAおよびMDSの多くが1%未満であったのに対し、PNHではほとんどの症例で1%を超えていた。

MDSサブタイプ(旧版)別では、単系統異形成を伴う不応性血球減少症(RCUD)で14.9%、多系統異形成を伴う不応性血球減少症(RCMD)で16.8%、分類不能型MDS(MDS-U)で14.5%にPNH型血球が検出されたが、環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)および芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)では検出されなかった。

3年間のPNH型顆粒球の推移では、317名のうち10%以上増加した患者は14.8%、10%以上減少した患者は9.5%、変化なしの患者は75.7%であった。PNH型顆粒球は、もともと1%以上であった群(27.1%)のほうが1%未満であった群(4.6%)よりも増加していた。

MDSは、「異形成の有無にかかわらず血球減少を呈し、急性骨髄性白血病(AML)へ進展するリスクを有するクローン性造血幹細胞(HSC)異常からなる不均一な疾患群」として定義されている2)。この研究では、真のクローン性MDSではPNH型血球は検出されないこと、PNH型顆粒球が1%以上存在する場合は、1%未満よりもPNH型血球が増加する可能性が高いことが確認された。

 

血液検査のエキスパートレビュー

1.PNH型血球の臨床的意義

PNH型血球は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型蛋⽩質が⽋損した血球であり、その名の通りPNHで認められる。PNHでは、GPIアンカー型蛋白質の欠損により補体制御因子であるCD55、CD59も欠損するため、活性化した補体による溶血を来す(図1)。そのため、PNH型血球の検出と定量はPNHの診断に重要である。

図1 正常血球とPNH型血球のイメージ図
図1 正常血球とPNH型血球のイメージ図

一方、PNH型血球はPNHの診断だけでなく、骨髄機能不全や原因不明血栓症のスクリーニング、予後予測、治療選択の判断などにも利用されている3)。芽球が少ないMDSとAAの鑑別が難しい症例では、時にPNH型血球の検査が鑑別に使用されることもあるが、一部のMDSでもPNH型血球が検出されることがある。診断には染色体検査などを含めた総合的な評価が必要であるが、PNH型血球陽性で、芽球増加を伴わず異形成が軽度のMDSは、AAに近い病態とみなされる場合もあり、免疫抑制療法が奏効する例もある3)

 

2.高感度FCMによるPNH型血球解析

PNHの検査として、従来は砂糖水試験やHam試験が用いられてきたが、特異性の低さや手技の煩雑さが課題であった。現在では、PNH型血球をFCMで検出する方法が主流となっている。

溶血所見がPNHによるものか否かを診断する場合、PNH型赤血球(II型+III型)1%以上に加え、LDH値が正常上限の1.5倍以上で陽性とされている3)。PNH重症例では、PNH型赤血球がほとんど溶血して検出できない場合もあるため、顆粒球も同時に解析する。PNHの診断では、通常1%の検出感度で解析されるが、国際臨床サイトメトリー学会(ICCS)のガイドラインでは、PNHの診断やモニタリングに用いる検査法として0.01%まで感度を向上させた高感度FCMが推奨されている4)。また、本論文のように骨髄不全におけるPNH型血球増加の判断には高感度FCMが必要となり、0.001%程度の感度での検出も推奨されている。高感度FCMでは、一般に赤血球0.005%以上、顆粒球0.003%以上を陽性と判断する。

高感度FCMは、受託検査会社で実施できるものの保険適用外である。PNH型血球を0.1%程度まで検出できる通常のFCM検査は保険診療で行えるが、PNH型血球陽性の骨髄機能不全の多くはPNH型血球が0.1%以下のため、高感度FCMの保険適用が大きな課題となっている。

 

検査技師が押さえておきたいPNHスクリーニングの進め方

PNHのスクリーニング検査の流れについて図2に示す。

図2 PNHスクリーニング
図2 PNHスクリーニング
〔厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班(研究代表者:三谷絹子):発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.2023より〕

溶血所見を認める場合には、まず自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を除外する。さらに、ヘモグロビン尿またはヘモジデリン尿、腎障害を伴うPNH以外の溶血性疾患が除外され、PNHが疑われる場合にはPNH型血球検査を行う。また、PNHでは血栓症を合併することが特徴的であり、原因不明の血栓症がまれな部位に生じた場合や、溶血所見を認める場合などでもPNH型血球検査を考慮する。

前述したように骨髄機能不全では高感度FCMでのPNH型血球解析が有用である。高感度FCMによるPNH型血球解析は保険適用外であり、院内でFCMを実施している施設でもコストに悩みながら対応されていると推察される。高感度FCMの有用性はこれまでの研究で示されてきているので、保険適用になることが今後期待される。

 

 

引用文献

1)Ishiyama K,et al : A longitudinal analysis of paroxysmal nocturnal haemoglobinuria-type cells in patients with bone marrow failure: results of a prospective multi-centre study in Japan. Br J Haematol, 203 : 468-476, 2023

2)木崎昌弘,他・編:WHO分類第5版による白血病・リンパ系腫瘍の病態学.中外医学社,2024

3)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班(研究代表者:三谷絹子):発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.2023

4)Borowitz MJ, et al : Guidelines for the diagnosis and monitoring of paroxysmal nocturnal hemoglobinuria and related disorders by flow cytometry. Cytometry B Clin Cytom, 78 : 211-230, 2010

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