サクッと解説! 検査技師必見トピックス #07
特定機能病院の要件改正

特定機能病院の制度が年内に大きく変更される見通しとなりました。厚生労働省の検討会が6月25日、承認要件の大幅な見直しを求める報告書の案をまとめ、厚労省は年内に関連の規則などを改正する方針です。案では、人口減少が顕著になる2040年ごろに向けて、地域の医療機関に医師を派遣したり高度な医療を提供したりして、特定機能病院が地域医療を支えていく姿を描いています。
特定機能病院は、1993年に施行された、いわゆる第2次医療法改正で制度化されました。当時、地域の病院や診療所を体系化し、機能分化と診療連携により医療提供体制を整備していく議論があり、その一環として設けられた病院類型の一つです。高度な医療の提供や教育、研究の機能を備え、主に地域の医療機関から紹介患者を受け入れる後方の病院としての役割が期待されていました。だからこそ、通常より手厚い医師の配置や、50%(総合型の場合)と高い患者紹介率などが承認要件となりました。
承認要件に合致する病院を厚生労働相が承認しており、現在全国に88病院があります。うち大学病院本院が79病院、国立国際医療研究センター病院などのナショナルセンター4病院ですが、その後の制度変更により都道府県がんセンターなど5病院も承認されています。
地域医療の「基盤」に
特定機能病院が置かれている状況は制度創設時から大きく変わりました。
一つは、医療全体が高度化し、特定機能病院以外でも高度な医療を提供する病院が登場してきたことです。地域医療支援病院や臨床研究中核病院などの病院類型もその後できました。また、医療機関同士がネットワークを組む診療連携も今や一般的な医療提供の姿になっています。
一方で、医師の働き方改革などを背景に医師の地域偏在・診療科偏在が今日的な課題となっています。生産年齢人口が減少し、医療と介護の複合的なニーズを持つ85歳以上高齢者が増加していく人口構成の変化は、医療提供体制に大きな変革を迫ります。つまり、特定機能病院に期待される役割は制度創設当初から大きく様変わりしているのです。
それでは厚労省は、どのような役割を期待しているのでしょうか。前述の案はこう記しています。
- 「高度の医療提供、医師派遣機能も含め、地域医療における役割を積極的に果たすことがより一層期待される」
- 「医学生を含む人材育成・供給や医学の進歩にも寄与する研究開発の推進を担う機関であり、豊富な医療資源等を活用したより高度な取組みも望まれる」
(太線は筆者)
記載からは、地域医療を確保するための役割、高度な教育や研究を推進していく役割を読み取ることができます。その際、「豊富な医療資源等を活用した」との記載がポイントです。医療資源を多く投入し、そうした役割を求めていく政策の方向性が浮かび上がります。
案では、こうした役割を担うための基準を示しました。現在の承認要件に新規項目を追加した「基礎的基準」と、各病院の自主的な取り組みを評価する「発展的基準」の2段階です。基礎的基準は全ての特定機能病院が守るべき基準であり、発展的基準は各病院の努力を評価する基準です。
基礎的基準は、医療提供、教育、研究、医師派遣、医療安全のそれぞれの機能に応じた基準にします。一番のポイントは医師派遣を新たに規定することです。また、発展的基準には、医療提供、教育、研究、医師派遣の基準を設けます。合併症や重症の救急症例の受け入れ、移植医療やゲノム医療などの「特に高度な医療」の実施などを評価するとしています。
発展的基準は、評価結果を点数化して、合計点が一定以上であれば何らかの経済的な評価に活用することが想定されています。案では、「他の制度等における活用が容易となるよう対応を行うべき」と微妙な書きぶりですが、診療報酬点数など何らかの経済的な評価につながることが考えられます。
検査室との関連は?
検査室に関連するポイントは次の3点がありそうです。いずれもすでに行われていることですぐに実質的な影響が出ることはなさそうですが、制度上、明確に位置付けられることには意味があります。
- 幅広い診療科の設置
- 検体検査の内部・外部精度管理の義務化
- 重大な医療安全事象のリスト化
それぞれについて説明します。
まず幅広い診療科の設置について。現在は内科や外科などの16の診療科(総合型の場合)の標榜が必要です。見直しではさらに、病理診断科、臨床検査科、総合診療科を設置し、専門医の研修プログラムの基幹施設であることを求める予定です。
ポイントは、診療科の「標榜」ではなく「設置」としている点です。現時点でその違いは必ずしも明確ではありませんが、病理診断科、臨床検査科は標榜する必要はなく、セカンドオピニオンなどの外来診療も求められない見通しです。
検体検査の内部・外部精度管理の義務化もされます。現在は努力義務ですが、義務化し、病院管理者(院長)の義務と規定する予定です。厚生労働科学研究班の調査によると特定機能病院の外部精度管理の受検率は100%ですから、検査現場への実質的な影響はないとみられます。
医療安全対策も強化される予定です。院内の医療安全管理部門が把握すべき重大な医療事故の計24項目を具体的に定めます。このうち12項目は、決して起こしてはならないとされる「ネバー・イベント」として全例を院内で検証して対策を講じるよう規定する方向です。
社会の要請に応じ進化
以上のように特定機能病院の要件は今年、大きく見直される予定です。制度の創設から30年以上がたち、今後は、地域医療の基盤としての役割を強めていくことになります。社会や地域の要請に応じてその役割と機能を進化させていくことが求められています。(枇)
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