Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 病理・細胞04
OSNA法でリンパ節転移を「量」で捉える——術中遺伝子検査の要点と落とし穴


OSNA法を中心とした腋窩リンパ節分子検査の臨床的意義1)
乳がん治療では近年、腋窩リンパ節評価の重要性が再検討されているが、補助療法の選択や予後予測には今なお有用である。OSNA(one-step nucleic acid amplification)法などの分子検査は術中にリンパ節転移を検出でき、約20%の症例で追加の腋窩リンパ節郭清(axillary lymph node dissection : ALND、脇のリンパ節を広く取る手術)を回避できたと報告されている。今後、分子検査を用いた臨床試験の進展により、腋窩リンパ節の個別化管理が進み、多くの乳がん患者で侵襲的治療の軽減が期待される。
病理・細胞検査のエキスパートレビュー
OSNA法は、摘出したリンパ節を「まるごと」処理し、上皮系腫瘍で発現しやすいCK19mRNAを測定することで、リンパ節転移の有無と腫瘍量の目安を短時間で報告可能な検査である2)。近年の臨床現場では、「陽性なら即・郭清」といった単純な二択よりも、過不足のない治療設計をもとにした“客観的な量の情報”としての価値が問われている1,3,4)。
OSNA法を理解するうえで、まず押さえておきたいポイントは以下の4点である。
- リンパ節の一部ではなく全体を対象にできるため、サンプリングの偏りを減らすことができる2)。
- 結果は判定(陰性/陽性)に加え、コピー数という数値で報告される。数値は腫瘍量の目安として扱える5)。
- 検査の価値は装置性能だけでなく、前処理・運用・報告設計の出来が情報価値を左右する1)。
- 形態が残りにくい、腫瘍によってはCK19発現が弱い、といった適用上の落とし穴がある1)。
1.OSNA法の原理——RT-LAMPでmRNAを増幅・検出する
OSNA法は、リンパ節中のCK19mRNAをRT-LAMP(等温増幅法)で増幅しながら検出する分子検査である2)。RT-LAMPの基盤となるLAMP法は、一定温度下で高効率に核酸を増幅する方法であり6)、術中の時間制約に合わせやすい。
RT-LAMP自体は感染症領域などでの実装例も報告されており、迅速な核酸検出の枠組みとして知られている7)。
2.数値(コピー数)とTTLの考え方——「ある/ない」だけでは足りない
OSNA法では、判定(陰性、1+、2+)に加えて、コピー数が得られる2)。複数リンパ節を測定する運用では、陽性リンパ節のコピー数合計を総腫瘍量の目安(total tumor load : TTL)として扱う考え方がある5)。
臨床側は、このTTLを腫瘍径、画像所見などと合わせて総合判断に用いる。重要なのは、OSNA法が単に“陽性/陰性”を報告するための検査ではなく、治療の「やりすぎ」と「見逃し」を同時に減らす材料になりうる点である1,3,4)。
3.術中判断からリスク層別化へ移行する世界の動向
近年は、腋窩治療を必要以上に大きくしない、ALND省略の方向性が明確になりつつある3)。その中で、OSNA法のコピー数やTTLを用いて非センチネルリンパ節(non-sentinel lymph node : NSLN)転移や多発転移を予測する試みが提案されている5)。
センチネルリンパ節※生検(sentinel lymph node biopsy : SLNB)の位置づけをALND省略で再検証している報告もあり4)、OSNA法は治療選択の判断材料として“どう使うか”が問われる局面に入っている1,3,4)。
4.保険診療上の運用の要点
診療報酬では、区分番号D006-8「サイトケラチン19(KRT19)mRNA検出」として、術前診断で明らかなリンパ節転移がない乳がん・胃がん・大腸がん・非小細胞肺がんを対象に、OSNA法で測定した場合に「一連につき1回」算定する枠組みが示されている8)。
婦人科領域では、OSNA法は薬事承認されている一方、そのがん腫のSLNBが保険収載されていない場合はOSNA法のコストを保険請求できない点が『婦人科悪性腫瘍センチネルリンパ節ナビゲーション手術の指針 Ver2.0』で明記されている9)。なお、OSNA法実施前に捺印細胞診を行う運用では、細胞診として請求可能とされている9)。
OSNA法の情報価値を高める検査室の設計
1.判定と数値をワンセットで報告する
臨床側が総合判断しやすいよう判定と数値を切り分けず、▽OSNA法の判定結果(陰性/1+/2+など)2)、▽TTL(copies:総腫瘍量の目安)5)、▽最大コピー数(copies:最も高い値)5)——の3点をワンセットで返す設計が望ましい1)。
2.前処理の工程を標準化する
OSNA法は装置測定であるが、ばらつきの主因は前処理にある。分割方法、取り違い防止方法、コンタミネーション対策等を、誰が担当しても同じになるように標準化する必要がある1)。
3.形態情報を残す運用で検査の幅を広げる
リンパ節をOSNA法実施のために処理してしまうと形態情報は残りにくい。処理前に捺印細胞診を採取しておけば、再確認や教育にも活用でき、運用の保険となる9)。
※:sentinel lymph node(SLN)。がん細胞が最初にたどり着く、第一の“関所”になる脇のリンパ節のこと。ここにがん細胞がなければ、その先のリンパ節にもがん細胞がない可能性が高いと考えられる。
引用文献
1)Safari D, et al : Intraoperative detection of axillary metastasis of breast cancer using nucleic acid amplification methods: review of advantages and limitations. Expert Rev Mol Diagn, 25 : 385-394, 2025
2)Tsujimoto M, et al : One-step nucleic acid amplification for intraoperative detection of lymph node metastasis in breast cancer patients. Clin Cancer Res, 13 : 4807-4816, 2007
3)de Boniface J, et al : Omitting axillary dissection in breast cancer with sentinel-node metastases. N Engl J Med, 390 : 1163-1175, 2024
4)Yoneto T, et al : Sentinel lymph node biopsy predicts non-sentinel lymph node metastases and supports omission of axillary lymph node dissection in breast cancer patients. J Clin Med, 14 : 3441, 2025
5)Bernet L, et al : OSNA total tumor load for the prediction of axillary involvement in breast cancer patients: should we use different thresholds according to the intrinsic molecular subtype? (MOTTO study). Clin Pathol, 16 : 2632010X21183693, 2023
6)Notomi T, et al : Loop-mediated isothermal amplification of DNA. Nucleic Acids Res, 28 : E63, 2000
7)Parida M, et al : Real-time reverse transcription loop-mediated isothermal amplification for rapid detection of west nile virus. J Clin Microbiol, 42 : 257-263, 2004
8)厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)
9)日本婦人科腫瘍学会:婦人科悪性腫瘍センチネルリンパ節ナビゲーション手術の指針 Ver2.0.2025
続きを見るには会員登録
(無料)が必要です
会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。
MTJメールニュースの会員のみなさまへ
MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。
共著|柳田 絵美衣(群馬パース大学医療技術学部検査技術学科)






