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Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 病理・細胞07
HPV自己採取は子宮頸がん検診を変えるか——海外動向から考える陽性後トリアージ

2026.07.10 06:00 会員限定記事を示すアイコン

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HPV自己採取をめぐる海外の動向

子宮頸がん検診では、細胞診に加えて、ハイリスクHPV(hrHPV)検査を活用する流れが進んでいる。米国保健資源事業局(HRSA)は2026年、30〜65歳の平均的なリスクの女性に対し、患者自身が採取した検体によるhrHPV検査を検診の選択肢として示した1)。米国産科婦人科学会(ACOG)も同年、自己採取検体によるhrHPV一次検査を選択肢に含める形でガイダンスを更新している2)

自己採取HPV検査は、研究段階の話題にとどまらず、検診を受けやすくするための方法として、実装の段階へ進みつつある。

 

病理・細胞検査のエキスパートレビュー

1.自己採取は受診率向上の切り札となるか

自己採取の意義は、医療機関での採取をそのまま置き換えることではない。婦人科受診への抵抗感、内診への不安、仕事や育児による時間的制約などにより、これまで検診を受けにくかった人にも、検査の入口を広げられる点にある。

海外で自己採取が制度上の選択肢として扱われ始めたことは、日本の検診体制を考えるうえでも参考になる。特に、受診率が伸び悩む層へどのように検査の機会を届けるかは、今後ますます重要な論点になる。

 

2.陽性後トリアージの成否がカギを握る

一方で、自己採取でHPV陽性となっても、それだけで子宮頸がんと診断されるわけではない。HRSAが示した自己採取HPV検査の運用では、陽性後には細胞診、dual stain、コルポスコピー、生検など、必要な追加評価へつなぐことが前提となる1)。自己採取は検診へのアクセスを広げる手段であり、その価値を十分に発揮するためには陽性者を適切な診断・管理へつなぐ体制が欠かせない。

日本でも、2024年から要件を満たす自治体でHPV検査単独法の導入が可能となった。これにより、細胞診は「一次検診の中心」という役割から、HPV陽性者を層別化する「トリアージ検査」としての役割をより強く持つことになる(3)。国内で実施されたランダム化比較試験ACCESS trialでは、自己採取HPV検査を提示することで検診受診率は向上したものの、子宮頸部上皮内腫瘍グレード2(CIN 2)以上の検出率の有意な増加は示されず、HPV陽性者の細胞診トリアージ受診率の低さが課題として残った4)。この結果は自己採取の有効性を否定するものではなく、陽性者を次の検査へ確実につなぐ仕組みの重要性を示唆している。

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図 HPV検査単独法による子宮頸がん検診のアルゴリズム
〔令和5年度厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業「子宮頸がん検診におけるHPV検査導入に向けた実際の運用と課題の検討のための研究」研究班:対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル.p12,2024より〕

HPV検査単独法の普及が進むなか、細胞診の役割はむしろ明確になりつつある。HPV陽性者の中から、早期に精密検査へ進むべき人と追跡管理でよい人を適切に選別するうえで、細胞診の精度はこれまで以上に重要となる。細胞検査士には、HPV陽性例にみられる細胞学的所見を理解したうえで標本を評価し、意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)以上を安定して判定するとともに、軽度扁平上皮内病変(LSIL)や高度扁平上皮内病変(HSIL)を見逃さないことが求められる。

 

HPV陽性者を次につなぐ検査室の役割

自己採取を検診として活かすには、キットの返送率だけを見ていては不十分である。検体不適正率、HPV陽性率、陽性者の受診率、細胞診のトリアージ実施率、精密検査の受診率までを、一連の流れとして確認する必要がある。検査室では、検体受領時の本人確認、検体量や容器不備の確認、不適正検体となった場合の再採取フロー、陽性時の受診案内などを標準化しておくことが重要である。また、結果報告では、「HPV陽性=がん」ではないことを明確にしつつ、追加検査が必要であることをわかりやすく伝える設計も求められる。

HPV自己採取は、自宅で採れる便利な検査というだけではない。未受診者に検診の入口を広げることに加え、陽性者を細胞診やコルポスコピー、組織診などの適切な追加評価へ確実につなぐ仕組みがなければ、検診としての効果は十分に発揮されない。自己採取が広がる時代において、細胞検査士・臨床検査技師には、検体の精度管理に加え、陽性後の流れを支える視点が求められる。

 

 

引用文献

1)Health Resources and Services Administration(HRSA): Women’s Preventive Services Guidelines(https://www.hrsa.gov/womens-guidelines)

2)American College of Obstetricians & Gynecologists(ACOG): ACOG committee statement: cervical cancer screening. Obstet Gynecol, 2026(online ahead of print)

3)令和5年度厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業「子宮頸がん検診におけるHPV検査導入に向けた実際の運用と課題の検討のための研究」研究班:対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル.2024

4)Fujita M, et al : Effectiveness of self-sampling human papillomavirus test on precancer detection and screening uptake in Japan: the ACCESS randomized controlled trial. Int J Cancer, 155 : 905-915, 2024.

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共著|柳田 絵美衣(群馬パース大学医療技術学部検査技術学科)