Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 病理・細胞05
令和8年度診療報酬改定が示す病理検査の本質——評価されるのは“技術”ではなく“体制”


「第13部 病理診断」は増点改定1-3)
令和8年度診療報酬改定において、「第13部 病理診断」は数少ない増点領域として注目されている。全体としてベースアップ対応が中心であり、個別技術の評価が抑制される中で、病理分野が増点改定となった意義は大きい。
今回、病理診断管理加算は約15%の増点となり、特に複数病理医による診断体制を評価する「病理診断管理加算2」は、組織で320点から368点へと引き上げられた。さらに、「特殊染色加算(50点)」の新設や、ISO 15189の認定施設を対象に「国際標準病理診断管理加算(10点)」の導入など、体制評価を重視する改定がなされている。
病理・細胞検査のエキスパートレビュー
今回の改定は、単なる点数変更ではなく、病理検査のあり方そのもの、すなわち“何を行ったか(技術)”から“どのような体制で行われているか”を評価する方向への明確な転換といえる。
臨床検査技師の視点からみても、この変化は極めて重要である。病理診断の精度は、病理医の読影のみで完結するものではなく、切り出し、包埋、薄切、染色といった前工程の品質に強く依存している。今回の増点により、ダブルチェック体制が維持・強化され、切片の質、染色の均一性、ラベリングや検体取り扱いといった各工程における確認・再確認の重要性は、これまで以上に高まる。
また、術中迅速診断や緊急検体といった高負荷業務においても、“時間優先による精度低下”を防ぐ体制が担保される点は、検査現場にとって大きな意義を持つ。
1.特殊染色加算の新設——やるべき染色の評価
今回新設された特殊染色加算は、病理組織検体および婦人科以外の細胞診において算定可能となった。
これまで特殊染色は、診断上重要であってもコストや作業負荷の観点から最小限に抑えられることが少なくなかった。しかし今回の改定により、“必要な染色を適切に実施すること”自体が評価対象となった点は大きな転換である。これにより、鑑別診断に必要な染色を初回から適切に組み込むことが可能となり、追加染色の削減に加え、結果報告までのリードタイム短縮にもつながることが期待される。
2.ISO 15189に基づく評価の導入——“品質”の可視化
「国際標準病理診断管理加算(10点)」は、病理診断管理加算を算定施設する施設のうち、ISO 15189の認定を受けた施設に対して加算される。
ISO 15189は、正しい結果が得られる仕組みを保証する国際規格であり、標準化された手順、記録のトレーサビリティ、内部および外部精度管理を通じて、検査の再現性を担保する枠組みである。ISO認定は単なる内部管理にとどまらず、外部に対する信頼性の指標としても機能する。他施設からの検査受託や共同研究、さらにはがんゲノム医療への参画においても、品質保証体制の有無は重要な評価軸となりつつある。
3.診療報酬改定に伴う実務上の注意点
今回の改定には、臨床検査技師の実務に影響を及ぼす重要な変更が含まれている。
「免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製」におけるHER2タンパクの取扱いが整理され、乳がんHER2検査は「1臓器につき1回」の算定が基本となり、初回検査の重要性はこれまで以上に大きくなった。再検査のタイミングや検体選択の重要性が増し、最初の1回で適切な評価につなげるために前工程の質がより問われることになる。
また、ミスマッチ修復タンパク免疫染色に関連していた遺伝カウンセリング料は検査項目から外れ、「遺伝性疾患療養指導管理料」として再編された。これにより、検査とカウンセリングのオーダーフローが分離されるため、臨床側との認識のずれや連携ミスを防ぐ視点がこれまで以上に重要となる。
病理検査は“体制”が問われる時代へ
今回の改定の本質は、個々の技術から質を担保する体制への移行である。今後は、検査の正確性に加え、その再現性やプロセスの透明性がより重視される。すなわち、臨床検査技師に求められる役割も、単に検査を実施することにとどまらない。適切な検体処理、標本作製の安定性、確認体制の徹底、そして臨床との確実な情報連携を含め、病理診断の質を支える体制の一翼を担う存在としての関与が求められている。
こうした取り組みは、診断精度の向上にとどまらず、医療全体の信頼性の確保、ひいては患者に対する安心・安全な医療の提供へとつながるだろう。
引用文献
1)厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)
2)厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号,0402訂正後)
3)厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第8号)
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共著|濱田 誠(群馬パース大学医療技術学部検査技術学科)
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