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Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 臨床化学・免疫血清03
『認知症疾患診療ガイドライン2026』改訂のポイント——バイオマーカー導入に向けて検査室が備えるべきこと

2026.07.13 06:00 会員限定記事を示すアイコン

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認知症疾患診療ガイドラインが9年ぶりに改訂1)

2026年5月、日本神経学会監修のもと、日本認知症学会など関連6学会によって『認知症疾患診療ガイドライン2026』が9年ぶりに改訂された。関連する各薬剤やバイオマーカーの適正使用指針などはこれまでも適宜改訂されてきたが、本ガイドラインはこれらを包括的に取りまとめる役割を担っている。

2017年の前回改訂以降、認知症領域には大きな変化があった。2023年および2024年に抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬が登場し、2024年1月1日には認知症基本法(正式名称:共生社会の実現を推進するための認知症基本法)が施行された。今回の改訂は、こうした認知症治療の進展に加え、認知症を取り巻く医療体制および社会の変化を反映した内容となっている。

 

臨床化学・免疫血清検査のエキスパートレビュー

1.新たな概念「アルツハイマー病連続体」

認知症の原因疾患として頻度が高いものに、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症があり、これらは「四大認知症」と呼ばれている。なかでもアルツハイマー病は最も多く、全体の過半数を占める。

アルツハイマー病は、脳内にAβ/タウ(Tau)蛋白質が異常蓄積することが引き金とされるが、今回の改訂ではアルツハイマー病による病理変化から臨床症状の出現までを連続的に捉える「アルツハイマー病連続体(Alzheimer’s disease continuum)」という概念が明記された()。

図 アルツハイマー病連続体(Alzheimer’s disease continuum)
図 アルツハイマー病連続体(Alzheimer’s disease continuum)
〔日本神経学会・監:認知症疾患診療ガイドライン2026.医学書院,2026を参考に作図〕

一方、アルツハイマー病の原因については、以前より炎症の関与も指摘されており、炎症をコントロールすることで認知機能の改善が認められたとの報告もある2)。「どちらが主たる原因か」という議論ももちろん重要だが、現在は「異常蛋白質の蓄積」と「脳内の慢性炎症」が複合的に絡み合っているとする考え方のもと、双方からのアプローチが必要とされている3)

 

2.抗Aβ抗体薬の登場で高まる早期診断の重要性

近年登場した抗Aβ抗体薬は、従来の抗認知症薬とは異なり、軽度認知障害(MCI)や軽度認知症といったアルツハイマー病連続体の早期段階をターゲットとし、早期に治療介入が可能かつ異常蛋白質を直接除去する有効性の高い治療薬として注目されている。

一方で、抗Aβ抗体薬を使用するためには、前提として「脳内にAβが蓄積していること」を医学的に証明しなければならない。そのためには詳細な認知機能検査に加え、脳脊髄液検査やアミロイドPET検査、定期的なMRI検査などを組み合わせた評価が必要となる。これらの検査は、診断精度の向上に寄与するものの、患者への身体的・経済的負担が大きく、患者負担の軽減に繋がる血液バイオマーカーの臨床応用が急がれる。

 

血液バイオマーカー臨床応用に向けた検体品質管理の視点

血液バイオマーカーへの期待が高まる中、2025年5月、米国食品医薬品局(FDA)がp-tau217などを指標とした血液バイオマーカー検査試薬を初めて承認し、大きな注目を集めた4)。日本国内においても、複数のメーカーが認知症関連の血液バイオマーカー検査試薬の承認申請や展開を進めているが、現時点における日本での位置づけは、あくまで「補助診断」に留まっている5)

血液中のAβおよびタウ蛋白質は極めて低濃度であり、保存条件や採血管の材質などの影響を受けやすく、不安定で取り扱いが困難とされている6)。そのため、血液バイオマーカーの臨床応用に向けては、試薬の性能だけでなく、採血から保存、測定に至るまでの検体の品質管理が極めて重要となる。したがって、今後の血液バイオマーカーの動向を注視することはもちろんだが、来たるべきときのため、臨床検査技師として、まず検体処理に関するプロトコルや品質管理の考え方を適切に理解しておくとともに、採血から測定までのプロセス全体を標準化する視点が求められるのではないだろうか。

 

 

引用文献

1)日本神経学会・監:認知症疾患診療ガイドライン2026.医学書院,2026

2)Shimoide Y : New Kampo improves cognitive decline in Alzheimer’s disease and mild cognitive impairment and renal function decline in chronic kidney disease. Curr Tradit Med, 31 : 695-702, 2026

3)Zhang J, et al : Pathological mechanisms and treatment progression of Alzheimer’s disease. Eur J Med Res, 30 : 625, 2025

4)Hu S, et al : The pTau217/Aβ1-42 plasma ratio : the first FDA-cleared blood biomarker test for diagnosis of Alzheimer's disease. Drug Discov Ther, 19 : 208-209, 2025

5)日本認知症学会,他・監:認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカーの適正使用ガイドライン(第3版).2025

6)Verberk IMW, et al:Evidence‐based standardized sample handling protocol for accurate blood‐based Alzheimer's disease biomarker measurement: results and consensus of the Global Biomarker Standardization Consortium. Alzheimers Dement, 21 : e70752, 2025

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