Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 病理・細胞09
p16/Ki-67二重免疫染色が保険収載——LSIL患者の次の一手を支える新たな検査


LSIL対象のp16/Ki-67二重免疫染色、保険収載
2026年7月1日、「p16/Ki-67タンパク二重免疫染色(免疫抗体法)病理診断標本作製」が新たに保険収載された1-3)。
今回の保険適用では、子宮頸部細胞診で軽度扁平上皮内病変(LSIL)と判定された患者に対し、コルポスコピー(拡大鏡検査)や生検を行う必要があるかを判断するためのトリアージ検査として位置づけられている1-3)(図1)。
病理・細胞検査のエキスパートレビュー
1.p16/Ki-67二重免疫染色とは
p16/Ki-67二重免疫染色は、p16とKi-67の2種類の抗原を1枚の標本上で同時に検出する免疫細胞化学的手法である4)。
- p16:細胞周期を抑制するタンパク質。子宮頸部では高リスクHPV感染により細胞周期の制御が乱れることで、過剰に発現する。
- Ki-67:細胞増殖時に発現する代表的なタンパク質。
高リスクHPV感染などによって細胞周期の正常な制御が破綻すると、これら2つのタンパク質が同一細胞内で共発現する現象が起こる。本検査はこの共発現を捉えることで、高リスクHPV感染によって細胞周期制御の異常が生じた細胞を可視化する手法である4)。使用するのは「ベンタナ CINtec PLUS Cytology Dual Stain」で、子宮頸部細胞診標本上でp16タンパクとKi-67タンパクを同時に検出する二重免疫染色キットである。p16は茶色、Ki-67は赤色に染色され、同一細胞内で両者が共発現している細胞(CINtec PLUS陽性細胞)を検出することで、細胞周期制御の異常を評価する4)(図2、表1)。
〔ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社:ベンタナCINtecPLUSCytology Dual Stain,添付文書(2025年9月作成,第1版)/厚生労働省:第651回中央社会保険医療協議会総会 資料3;医療機器及び臨床検査の保険適用について(令和8年6月24日)を基に筆者作成〕
HPV検査が主に「HPVが存在するか(感染の有無)」を調べるのに対し、本検査は「実際に細胞周期の制御異常が生じているか」を評価できる点に大きな特徴がある4)。
臨床性能については、IMPACT Studyにおいてp16/Ki-67二重免疫染色の有用性が検討されている。このうち、LSIL 741例を対象とした解析において、従来のHPV DNA検査と比較してCIN2以上あるいはCIN3以上の病変の検出について高い感度を維持しながら特異度の向上が実証されている(表2)3, 4)。
〔ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社:ベンタナCINtecPLUSCytology Dual Stain,添付文書(2025年9月作成,第1版)より〕
2.保険点数と施設要件
今回の保険適用では、p16タンパクの所定点数720点と、HPV核酸検出の所定点数347点を合算した1,067点を準用して算定する2, 3)。なお、算定には施設要件があり、婦人科または産婦人科の経験を5年以上有する医師が配置されていること、当該医療機関が婦人科または産婦人科を標榜し、当該診療科に常勤医師が配置されていることなどが定められている2)。
さらに、病理・細胞診に携わる医療者にとって注目したいのが、病理診断料の取り扱いである。日本病理学会が厚生労働省に疑義照会を行ったところ、所定の要件を満たす保険医療機関において診断が行われた場合には、N006 病理診断料「1 組織診断料」の算定が可能であり、さらに要件を満たした場合には「注4 病理診断管理加算」も併せて算定可能との回答が示された5)。
細胞診から得られる情報を次の診療へ
今回の保険収載は、p16/Ki-67二重免疫染色という、単に2つのタンパク質を染色する新しい染色法が加わったというだけではない。これまで子宮頸部細胞診は、細胞や核の形態を観察し、その異型の程度から病変を評価する「形態診断」を中心として発展してきた。
一方、p16/Ki-67二重免疫染色では、同一細胞における2つのタンパク質の共発現を捉えることで、形態だけではわからない細胞周期制御の異常という生物学的情報を、細胞診標本から得ることができる3, 4)。
特に今回、LSILと判定された患者に対して、コルポスコピーや生検の要否を判断するためのトリアージ検査として保険診療に位置づけられた意義は大きい。形態学的にLSILと判定された患者を一律に扱うのではなく、細胞が示すバイオマーカーの情報を加えることで、より精査が必要な患者を適切に選別し、次の診療へつなげることが期待される。つまり、細胞診標本は「異常な形態を示す細胞を見つけるための標本」から、「病態を客観的に可視化して患者のその後の診療方針を考えるための情報を得る標本」へと、その役割をさらに広げつつある。
今回の保険収載は、細胞診標本から得られる情報を「次の診療」へつなげる、新たな選択肢の誕生といえる。
引用文献
1)日本産科婦人科学会:「p16タンパク/Ki-67タンパク二重免疫染色 病理診断標本作製」保険収載と検査の取り扱いに関するお知らせ.2026(https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/fujinkashuyo_20260701_02.pdf,アクセス日:2026年8月19日)
2)厚生労働省「『診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について」(令和8年6月30日保医発0630第7号)
3)厚生労働省:第651回中央社会保険医療協議会総会 資料3;医療機器及び臨床検査の保険適用について(令和8年6月24日)
4)ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社:ベンタナ CINtec PLUS Cytology Dual Stain,添付文書(2025年9月作成,第1版)
5)日本病理学会:「p16/Ki-67タンパク二重免疫染色(免疫抗体法)病理診断標本作製」の保険収載および病理診断料、病理診断管理加算の算定について.2026(https://pathology.or.jp/news/members/iryou-gyoumu/20260714.html,アクセス日:2026年8月19日)
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医学的内容確認|柳井 広之(岡山大学病院病理診断科 教授)





