検査室

変わり続ける検査の現場 #24 亀岡市立病院
糖尿病透析予防へ、ハイリスク患者を抽出 チームで情報共有、積極的介入につなげる

2025.12.01 06:00 会員限定記事を示すアイコン



亀岡市立病院(京都府亀岡市、病床数100床)は、院内の糖尿病委員会が亀岡市や地域医師会と連携し、糖尿病腎症による新規透析導入の予防指導に取り組んでいる。同委員会には診療技術部臨床検査科も参画。eGFR(eGFRcr)の変化量から透析導入時期を予測し、透析導入ハイリスク患者を抽出して電子カルテで臨床側に伝えている。そうした地道な取り組みが診療での積極的介入につながっている。


 

亀岡市立病院は、南丹医療圏で不足する医療機能をカバーするため、2004年6月に開院した。人口約8万5700人の亀岡市唯一の公立病院として急性期医療を中心に提供している。

臨床検査科には現在、7人の臨床検査技師と検査補助者1人が所属。検査業務以外では輸血用血液製剤の管理、感染対策や栄養サポートなどのチーム医療にも対応している。中でも、糖尿病患者の透析予防や持続血糖測定(CGM)の患者指導など、糖尿病に関連した取り組みは大きな特色となっている。

 

ソフト使い透析導入時期を推定

透析導入ハイリスク群の抽出については、表計算ソフトのエクセルがベースとなったソフト「疾病管理テンプレート」(オープンソース版、公開終了)を活用し、1カ月ごとに更新している。

クレアチニンを測定した全患者を対象に、検査システムから患者属性やeGFR値などの検査データを出力し、マクロの機能を使用して疾病管理テンプレートに一括入力する。その後、過去1年間のΔeGFR(eGFRの変化量)を算出して透析導入時期を予測する。予測透析導入時期は末期腎不全に該当する15mL/分/1.73平方メートル未満と定義している。

さらに、▽80歳以下▽eGFR50mL/分/1.73平方メートル未満▽ΔeGFRによる予測透析導入時期が3年以内―の患者を絞り込み、糖尿病または糖尿病疑いの病名の有無を確認して透析導入ハイリスク者とする。

該当患者には、電子カルテの付箋機能を使い、糖尿病委員会から主治医に腎機能情報を案内し、糖尿病透析予防指導などの検討を促している。付箋では腎機能低下傾向を認めたとして、CKDステージ分類G5(末期腎不全期)の到達時期を示し、「栄養指導・透析予防指導などをご検討ください」と注意喚起している。

また、付箋添付患者については、eGFR値の推移を毎月記録し、その後の透析導入時期の変化をモニタリングしている。

 

付箋案内で4割が改善

2016年4月~2025年3月の9年間の実績によると、対象者は延べ16万4253人。このうち付箋添付者は245人(男性169人、女性76人)、付箋添付総数は310件だった。付箋案内後の糖尿病透析予防指導の実施状況は延べ97件90人、糖尿病内科以外の54人中13人が糖尿病内科へ転科した。

付箋添付者245人について2025年3月時点で調べると、42%(104人)が「改善」(案内時より透析導入予測時期が10年以上延長)しており、積極的介入による一定の効果が認められた()。

図_付箋案内後の状況


透析の医療費は1人年間500万~600万円程度かかるだけに、将来の透析導入をできるだけ遅らせたり、あるいは導入を回避できれば、患者のQOL維持につながるだけでなく、医療費削減効果も見込める。

効果のあった60代男性の症例を紹介する。現病歴は▽34歳時に2型糖尿病と診断▽網膜症あり▽腎症4期▽神経障害あり―。併存疾患は高血圧。嗜好歴は1日当たりたばこ20本、ビール350mL。

この患者の場合、透析導入時期が3年後の2019年1月と予測され、1回目の付箋案内を行った。減塩指導の強化により、いったんeGFR低下のスピードは緩やかになったが、再びeGFR低下の傾向を認めたため、2回目の付箋案内を実施。糖尿病内科への転科、栄養指導など糖尿病に対する治療が強化され、eGFRの低下のカーブは緩やかになり、予測透析導入時期を2036年10月まで延長することができた。

 

診療に有用なデータ提供を実感

臨床検査科の原健介科長は、「介入優先度の高い患者の抽出は、院内の臨床検査データが集まる検査科だからこそ、診療科にとらわれず継続できている」と説明。透析導入予測時期などのデータを医師、看護師、薬剤師、管理栄養士と情報を共有することで、治療や指導の積極的な介入につながっているとしている。

データについては「小さい病院なのでデータ量もそれほど多くないため、日常業務やシステムに対してもあまり負荷をかけずに抽出作業が行えている。臨床検査科として、単に測定するだけでなく、診療に有用なデータとして提供できているのでは」と話す。

臨床検査科の細木理江氏によると、付箋案内されるハイリスク患者は他の医療スタッフも気にかけていた患者が挙がってくることが多く、一連のデータを「とても参考にしている」と診療側でも好評だという。それがまた臨床検査技師として励みになっているそうだ。

ただ現在使用しているソフトはすでに公開を終了しており、改良が望めないことや、検査システムの変更やエクセルのバージョン対応ができなくなった場合に使えなくなることが課題となっている。

こうした中、近年ではeGFRの推移をプロットすることの重要性が医師側からも指摘されている。eGFRの将来予測を支援するツールとしては現在、京都府が開発した「京都府版eGFRプロットシート」などもあるが、症例ごとにデータを入力する必要があるため、病院では多くの患者データを一括して把握できない面があり、導入が難しいという。

同院の臨床検査科では今後も糖尿病透析予防の取り組みを継続していくが、将来的にはAI活用などにより、どんな検査システムにも対応でき、長期フォローが可能な腎機能可視化支援ツールの登場が待たれるとしている。

臨床検査科の皆さん(右端=原氏、手前左=細木氏)
臨床検査科の皆さん(右端=原氏、手前左=細木氏)

 

 


MTJ本紙 2025年12月1日号に掲載したものです。

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