検査室

変わり続ける検査の現場 #31 桑名市総合医療センター
“協力・分担制”で病理検査拡大を実現 腎生検やROSEで迅速診断につなげる

2026.07.06 06:00 会員限定記事を示すアイコン



桑名市総合医療センター(三重県桑名市、400床)の医療技術部検査室では、臨床からの院内検査の依頼を受け、腎生検は2023年夏ごろ、気管支鏡検査でのベッドサイド細胞診(ROSE)は2024年夏ごろから、それぞれ病理検査業務を拡大した。当初は人員の確保や精度管理、検査物品の準備など課題は多かったが、属人化を廃した「協力・分担制」に転換して業務を効率化する一方、情報共有の機会を増やして業務拡大を実現。外注から院内検査に切り替えたことでTATも改善した。現場でリアルタイムな検討が可能となり、臨床からは迅速な診断につながると高い評価を受けている。


 

同院は34診療科を擁する三重県北勢地区の中核病院。検査室は臨床検査技師38人のほか専任の看護師5人と検査助手3人で構成されている。

病理検査室は5人体制で、今野和治副室長と矢野孝明主任が認定病理検査技師の資格を持つ。細胞検査士の資格は、両氏と5年以上の技師の計3人が保有。ほか2人は3年目の若手技師となっている。

矢野氏
矢野氏

病理検査の主な業務は、組織標本作製業務や細胞診標本作製およびスクリーニング業務、特殊染色や免疫染色等の追加検査、そのほかにも機器・試薬管理などの精度管理や病理解剖など、多岐にわたる。

直近の病理検査の件数(2025年度)は年間で組織診6000件、細胞診7000件、ベッドサイド細胞診521件、術中迅速130件、病理解剖10件、乳腺細胞診231件、甲状腺細胞診214件などとなっている。

病理検査と細菌検査を統括する今野氏によると、2023年ごろから腎生検や気管支鏡検査でのベッドサイドによるROSEについて、院内検査の要望を受けていた。

従来、気管支鏡検査では検体を採取する場合、内視鏡室に検査技師が直接出向き、細胞標本の作製や組織の固定処理までは行っていた。

一方、腎生検はベッドサイドで採取された組織の評価(糸球体の観察)を行い、検査室に戻った後、組織の凍結処理、ホルマリン固定処理、電子顕微鏡用の固定処理まで実施。検体処理後は光顕(HE染色・特殊染色)、蛍光染色、電子顕微鏡検査を全て外部委託していた。

実施依頼の理由を聞き取ると、呼吸器内科は「検体採取で目的の組織や細胞が採取されていないケースや腫瘍細胞量の評価ができない状態であるため」、腎臓内科は「院内で標本を作製することで外注より短期間で結果が把握でき、標本の観察もリアルタイムで行えるから」であった。

臨床の要望に即した検体処理
臨床の要望に即した検体処理

相互フォローで業務平準化

ただ、病理検査は検査装置に頼れない手作業が多く時間もかかる上、知識や技術の習得には一定の経験が必要となる。しかも当時は新卒の検査技師が入ったり、通常業務が時間外に延びたりすることも多く、受け入れにはいくつかの課題があった。

当時の状況について、矢野氏は「人員に余裕がなく、現行の業務だけで手いっぱいだった。新たな検査業務は専門的な技術や知識が必要なため、新人技師にまかせることも非現実的だった」と振り返る。

検査業務の拡大によって、業務量の増加、人員不足による検査の遅延、身体・精神的な負担の増加、標本作製の精度管理などが懸念された。

このため、病理検査室では大胆な業務改革を行った。まず取り組んだのが業務体制の変更。それまでは「各セクションによる担当制」(切り出し、免疫染色、ベッドサイドなど)だった。特定の人が一連の業務を担う担当制はメリットもあるが、属人化の懸念があり、多くの作業を効率的に進めるには難しい面がある。

そこで、業務負担の平準化や連携推進につながる「協力・分担制」に変更。各検査業務で1人が全てを担当するのではなく、他の検査技師が協力したり一部を分担して作業したりすることによって、業務が円滑に進むようにした。

並行して定期的にミーティング(始業時と終業時)を開催して情報共有し、適宜業務内容を見直すことによって、チーム内の連携を推進。また日常業務の優先順位を明確化し、掲示などでタスクを「見える化」することで無駄な待機時間が減り、相互フォローが円滑に進むようにした。

こうした体制を整えつつ、腎生検(電顕のみ外注継続)と気管支鏡検査ROSEの業務を拡大。当初は戸惑いもあったが、徐々に協力体制が定着し、臨床からの指摘も踏まえ課題を克服していった。

一連の業務改革によって、「個々の検査技師の意見や検査業務の状況を共有することによって、どう解決すればいいかを現場で導き出せるようになった」(矢野氏)という。

 

TAT短縮で臨床に貢献

院内検査が定着した2025年度と導入前の比較()においては、腎生検では光顕(HE染色・特殊染色)で約9日、蛍光染色で約16日かかっていた結果報告が、院内での腎生検標本作製に伴い、それぞれ約3日、当日・翌日へと大幅に短縮。TAT短縮の効果から、検査実施数も前年度に比べ約40件増加した。

図 検査導入後の効果
図 検査導入後の効果

気管支鏡検査では、現場での検体評価を行えることになったため、検体の質的評価や良悪性の鑑別をはじめ、治療計画に基づいた検体採取が可能となった。TATや検査時間も短縮し、患者負担の軽減や検査枠の拡大につながった。

導入後、臨床からは「結果報告が早くなった」の評価で一致。矢野氏は「腎臓内科からは、外注の場合は書面での結果報告だけで、標本を見たければまた送ってもらう必要があったが、今は翌日には標本を見て病理と相談し、カンファレンスでも共有できるのが良いと聞いている」という。

今野氏も「呼吸器内科でも現場である程度見通しがつくので、治療法の選択など、いろんな決断がより早くできるようになっているようだ」と話す。

 

質向上や教育が今後の課題

とはいえ、臨床検査を取り巻く環境変化は加速する一方で、臨床の進歩や病院運営の観点からも検査室には常に業務改革が求められる時代だ。

今後の課題について、矢野氏は「後進の育成」を挙げ、「新人であっても主体的に発信していける検査技師を育てていきたい」と意欲を燃やす。

チームをまとめる今野氏は「検査も日進月歩で、病理検査は特に治療戦略にも関わってくる大切な分野。これまではスピード感を重視してきたが、質も高めていきたい」と前を見据える。

同院検査室はこれからも臨床に寄り添い、医療の質向上に貢献していく姿勢だ。

 


※本記事は『THE MEDICAL & TEST JOURNAL』2026年6月1日号に掲載された記事の再掲です。

続きを見るには会員登録
(無料)が必要です

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

MTJメールニュースの会員のみなさまへ

MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。

すでに会員の方はこちらからログイン