変わり続ける検査の現場 #26 東京女子医科大学病院
ロボットアームで「遠心」自動化 持続可能な検査室へ一歩

検査室の一角で、3本のロボットアームが淡々と動き続けている。検体チューブの入ったラックを遠心機に入れ、終了すれば、再びアームが伸び、検体を取り出して分析装置に投入する。東京女子医科大学病院(東京都新宿区、1128床)の検体検査室で2019年から、血糖と凝固検査の遠心操作を自動化するロボットアーム3台が稼働している。「単調な仕事を自動化すればもっと検査技師は検査に力を入れられる」。中央検査部の三浦ひとみ技師長がそう考え、工場の生産ラインなどを手がける産業用ロボットメーカーと共に作り上げた。
1日1000件の採血に対応
外来患者数は1日平均2769人(2024年)と都内の病院でも有数の規模。1日1000〜1200件に上る採血を23のブースで検査技師が手際良く担当していく。採血ブースを大きく3つのエリアに分け、待ち時間が短いエリアを自動で計算して採血待ち患者を振り分ける。この運用により、通常であれば平均約15分という採血待ち時間を実現させているという。
採血後の検体は搬送ラインにより、隣接する検体検査室へと運ばれ、血算や凝固、生化学・免疫検査などの項目別に仕分けられる。ロボットアームが稼働するのはこの先だ。凝固・血糖検査用の検体を遠心エリアに置いてスイッチを入れると、ロボットアームが検体をつかみ上げてラックに格納し、遠心機に投入してスタートボタンを押す。遠心後は自動で検体を取り出し、分析装置用のラックに移し替えて凝固検査のライン、血糖検査のラインへと移す。
安定と正確さを重視
導入のきっかけは、産業用ロボットメーカーの訪問営業だったという。「ほかに何か自動化したいことはありますか」。採血室からの検体取り込みラインを相談する中、さらにそう尋ねる営業担当者に三浦氏が提案したのが、遠心エリアの自動化。「血液像の担当技師が行き来しながらやっている単調な仕事を自動化すれば、鏡検にもっと力を入れられる」。三浦氏はそう考えたと振り返る。既存の遠心装置を活用し、通信機能も使わず、導入コストを抑えた。
導入に当たって「一番の心配はスピードだった」という。そのときどきの状況を確認しながら動くロボットアームは、てきぱきとこなす熟練の技師よりも動きが遅い恐れがある。実際、TATは5分程度遅くなった。それでも「ムラがなくなり間違いがない」「安定して休むことなく稼働できる」というメリットを優先した。5分遅くなっても生化学・免疫検査の結果報告に間に合えば、診療時間に影響する心配は少ない。導入後、「臨床側からのクレームはない」という。
東京女子医科大学病院の検査室で稼働するロボットアーム
検査室では、検体分注装置、生化学自動分析装置、免疫分析装置の複数機種が検体搬送ラインでつながる。患者の採血負担を軽減するため親検体1本から各検査用に分注し、子検体で検査をしていく。フィブリン析出を担当技師が目視で確認しているため、生化学・免疫ラインの遠心操作はあえて手作業とし、今のところロボットアームを使う予定はないという。
こうした運用の結果、三浦氏は、遠心操作に充てていた「1.5〜2人分の仕事」が自動化され、担当技師は血液像の鏡検に集中できるようになったと導入の効果を指摘する。
「技師にしかできない仕事」へ
検体検査室では、他にも自動化や業務効率化が進む。尿検体の分注装置から尿定性検査へと流れる一般検査の検体搬送システムがあり、さらに、臨床側からの問い合わせや月約1000件という追加検査オーダーなどを一手に引き受ける「ラボラトリー・インフォメーション」の部門がある。各検査の測定結果はあらかじめ設定したロジックで自動承認し、確認が必要な場合のみ各分析装置の担当者が承認する。
さらに2026年の初めには、汎用の配膳ロボットを応用した検体搬送ロボット2台を導入する。これまで24時間、人が行ってきた救急外来から検査室までの検体搬送を段階的にロボットに任せる。
「どのみち、検査技師でなければできないことを技師がやるようになる」。三浦氏は、検査室の将来をそう見通す。
生産年齢人口の減少に伴い、医療従事者の不足や検査技師の確保難が予想されている。そうした状況下では、検査技師はより専門性の高い業務に注力していく必要がある。また、検査技師の働き方改革、業務効率化や職場環境の改善は今日的な課題でもある。
これまでは「重要な仕事に時間をかけて、そうではないところを自動化する」という発想で進めてきたが、最近は持続可能な検査体制を支える基盤としての自動化が必要になっている。
「将来的に医療職が減り、タスクシフトで生理検査などの対人業務にもっと技師を配置する必要も出てくる。長い目で見れば、やはり今のうちに自動化しておくことが大事だ」。三浦氏はそう話している。
東京女子医科大学病院・中央検査部
「医師のそば」で培った現場力が基盤
東京女子医科大学病院は、昭和40年代から診療科横断の臓器別センターを設け、それぞれのセンター内で臨床検査技師を採用し育成してきた。医師のそばで検査してきた経緯から「できることはなんでもやる」(三浦ひとみ技師長)という組織文化が根付き、20年以上前から術中モニタリングや消化器内視鏡検査の補助などを行ってきたという。
2003年に総合外来センターが設置されたことに合わせて検査も中央化し、検査技師は中央検査部の所属となった。当初、検体検査はブランチだったが、2011年に自主運営となった。
中央検査部の検査技師は総勢約160人。三浦氏は、本院と、分院の一つである同大学附属足立医療センター(東京都足立区、450床)の技師長を兼務する。2つの病院は、ISO15189のマルチサイト認定を受け、同じマネジメントシステムで運用されている。
MTJ本紙 2026年1月11日号に掲載したものです。
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