検査室

変わり続ける検査の現場 #28 霧ヶ丘つだ病院
睡眠医療・CPAP管理、検査技師がゲートキーパーに 初診から治療まで患者支援

2026.03.02 06:00 会員限定記事を示すアイコン



呼吸・睡眠の専門病院である霧ヶ丘つだ病院(北九州市、69床)では、約2000人のCPAP患者に対して、初診から治療まで臨床検査技師が関与し、CPAP管理のゲートキーパーとしての役割を果たしている。CPAP外来(検査室)の専用受付で臨床検査技師が問診や睡眠衛生指導などに対応し、医師の負担軽減にも寄与。多職種によるチーム医療の中で、高い検査精度で睡眠障害の正確な診断を支援するとともに、LINEや機関紙などの情報ツールも活用して患者のアドヒアランス向上に貢献している。


 

霧ヶ丘つだ病院は専門病院であるとともに、地域のかかりつけ内科病院としての役割も担っている。日本呼吸器学会や日本睡眠学会などの認定施設で、COPDなどの呼吸器疾患の患者数は九州でもトップクラス。睡眠医療は1999年から本格的に開始し、2005年に現名称に変更して新築移転した。「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査は計1万例近くにも及んでいる。

森槌氏
森槌氏

睡眠医療を本格始動した当初、臨床検査技師は現在検査科長を務める森槌康貴氏1人だけだったが、患者数の増加とともに段階的に増員。現在は臨床検査技師7人(うち1人は非常勤)が業務に当たり、睡眠検査、CPAP管理、肺機能検査、エコー検査を行っている。生化学検査などは外注し、睡眠関連の業務が約8割を占めるのが特徴だ。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療はCPAP治療が第1選択で、患者は定期受診が必要となる。同院ではCPAP外来に専用の受付を設け、臨床検査技師がCPAPデータ管理や睡眠衛生指導などに対応。日本睡眠学会の評議員も務めている森槌氏は「CPAPマネジメント全般に臨床検査技師が関わり、ゲートキーパーの役割を果たしている」と強調する。

活躍の背景には、2021年の法改正によりタスクシフト・シェアが推進され、医師の指示の下で、臨床検査技師がCPAP関連業務を担うことが可能になっていることがある。もちろん、CPAP治療は医師の診断と処方に基づく医療行為で、機器の設定変更や治療方針の決定は医師が行う必要がある。

 

CPAPマネジメントにトータルで関与

そうした中で同院では、チーム医療で支えるCPAPマネジメント体制を構築。臨床検査技師の具体的な業務は▽初診時(問診、InBody測定、簡易検査・PSG検査の説明、予約)▽PSG検査(装着・アテンド・解析・タイトレーション)▽CPAP導入(機器・マスクの選定、機器の使用方法や今後の通院などの説明)▽CPAPフォロー(データ確認・説明、トラブル対応、マスクフィッティング、睡眠衛生指導、血圧測定、InBody測定など)―など多岐にわたる。まさに初診から治療まで、臨床検査技師が関与している。

専用受付では医師の診察の前に、問診やCPAPデータの説明、睡眠衛生指導などを行うことで、医師の負担も軽減。医師の本来業務に専念できると、臨床からも信頼されるチーム医療のパートナーとなっている。

専用受付で患者に説明する技師
専用受付で患者に説明する技師

PSG検査は4ベッドの終夜監視体制で、米国睡眠学会のレベル1(最上位)の検査レベルを保持。一番精度が高いと言われる臨床検査技師による監視とデータ解析により、睡眠障害の正確な診断に寄与している。

2016年以降は指導基準を設けて遠隔モニタリングも活用。今やCPAP管理数は2000人規模に達している。使用状況が安定しているなど一定の条件を満たす患者には、受診間隔を延長し、アドヒアランスの悪い患者のフォローに注力できる体制を整えている。

CPAP管理は生活改善による生活習慣病管理の側面もある。治療による眠気改善や身体負担軽減で、健康管理がおろそかになり、さらに体重が増加する患者もいる。このため、同院では管理栄養士による栄養指導も強化し、チームで患者を支えている。

森槌氏は新卒で同院に入職。日本睡眠学会認定の専門検査技師の資格を取得するなど睡眠検査の研鑽を積む一方、若手技師を育成してきた。同学会認定の専門検査技師は現在、森槌氏を含め3人に増えた。

通常の臨床検査技師とは違い、呼吸・睡眠に特化した検査業務と患者との直接対応が中心となるため、採用時にはコミュニケーション能力を重視。ワークライフバランスや子育て世代の行事参加にも配慮して、有給休暇も柔軟に取得できるなど、働きやすい環境づくりに努め離職防止を減らす工夫を行っている。

 

LINEや機関紙で情報発信

一方で、CPAP管理は長期フォローが必要なため、脱落防止が重要な課題となっている。検査科では、LINEなどのSNSも活用して患者と連絡や情報配信を行っている。LINEはCPAP患者の半数以上が登録し、特に働き盛り世代の活用が多いという。また、患者向けに機関紙「快眠CPAPers通信」(検査科スタッフが作成)を毎月発行。睡眠関連の情報や季節の話題なども取り入れ、患者教育の一環として受診時に渡している。バックナンバーは病院のホームページにも公開している。

森槌氏は「定期受診の満足度を上げるために全国に先駆けて発行した。健康情報を得られることから機関紙を楽しみに受診される患者も多い。作るには、患者にどういう情報が必要か調べる必要があるので、臨床検査技師にとっても勉強にもなる。これもCPAPマネジメントの一環だ」と話す。

快眠CPAPers通信
快眠CPAPers通信

睡眠医療のリーダー目指して

森槌氏は経営戦略室長も兼務しており、睡眠医療を取り巻く動向にも目を向けている。CPAP関連の市場は右肩上がりで伸びると見込まれており、近年は簡便な携帯型睡眠検査装置の使用も拡大している。一方で、非専門施設でも睡眠医療に取り組む施設が増えることで、他の睡眠障害を考慮せず、安易に睡眠検査やCPAP管理が行われることを懸念する声もある。

こうした方向を見据え同院では、日本睡眠学会や日本睡眠検査学会、専門の医療機関などと連携しながら、睡眠関連業界のリーダーシップをとっていきたい考えだ。睡眠医療で臨床検査技師の活躍の場が広がることで今後、診療報酬など制度的な裏付けが増えていく可能性もある。

参入する臨床検査技師に対して、森槌氏は「睡眠医療の分野は臨床検査技師が検査だけでなく治療にも携わり、健康になっていく過程を患者と一緒に喜ぶことができる。それがモチベーションアップにもつながる。やりがいのある仕事だと思って、睡眠医療に取り組んでほしい」と呼びかけている。

 


MTJ本紙 2026年3月1日号に掲載したものです。

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