画像と文書を処理するAI 医療現場での活用模索
自然な日本語生成
急速に進化する生成人工知能(AI)。文書だけでなく画像や音声などを同時に処理できる大規模視覚言語モデル(VLM)の開発が各国で進んでいる。東京大や名古屋大などではVLMを医療現場で実用化しようとする試みが始まっている。開発の現状や課題を探った。
医師の助けに
生成AIの基盤技術としては、大量の文書を学習させ、自然な文章の理解や出力に特化した大規模言語モデル(LLM)が用いられている。米オープンAIの「チャットGPT」のGPTシリーズやグーグルの「ジェミニ」などが代表的で、AIのさまざまなサービスの基盤となっている。
LLMをさらに発展させ、視覚と言語に関わる複数のデータを統合し、解析するのがVLMだ。既に商用化されているものの、英語で学習させているものがほとんど。日本語独特の表現や文化、常識に対応できない懸念があった。
医療では病気の状況や経過を把握する際、エックス線やCTなどの画像診断をすることが多い。注目すべき部分を認識し、それに基づく文章を分かりやすい日本語で生成できるAIがあれば、医師の診断や業務の助けになる可能性がある。
データ不足
医療での活用を視野に、東京大の原田達也・教授(知能機械情報学)らのチームが開発したのが日本語に特化した「Asagi」だ。VLMの開発では、画像と、それが何を表現しているかを説明する文書をペアにし、大量に学習させる必要がある。英語圏では開発用の数千万件規模のセットが公開されているが、日本語では数百万件規模しかないといい、「国内で開発が進まない要因」と原田さんは話す。
実際の開発では日本語のインターネットのサイト約5億件を巡回し、画像とそれを説明する文書の収集から開始。画像の説明が不十分な場合は、英語版のVLMを通してから日本語に変換し、不足を補ったという。
合計約2千万超セットのデータで学習したAsagiに画像と質問を入力すると、画像に関する日本語の説明文が返ってくる。生成物の利用が制限されるチャットGPTなどを使っていないため、誰でもさまざまな目的で使えるのが強みだ。
大量の医療論文や検査画像などを学習させ、診療科ごとの小型AI開発につながることを目指す。原田さんは「大学で医療を専門的に学ぶ前に、国内の高校で教養を学習した段階のもの。質の良いデータで足腰を鍛えておく必要がある」と説明する。今後データの追加や性能の評価法の開発が必要だが「達成すれば日本で最も規模が大きく、性能の良いモデルになる」と手応えを話す。
報告書の作成支援
実際の活用を視野にしたVLMの開発も進む。名古屋大の森健策・教授(医用画像処理)らのチームは、病気の経過観察のため、時間をおいて撮影された二つの3次元エックス線CT画像を比較し、病気に対する評価や判断に関するコメントである所見文を自然な日本語で生成するVLMを開発した。
CT画像データベースから約7万回分の画像と専門医による所見を学習させたもので、「所見リポートを作成して」や「再発はあるか」などの質問に答え、対話もできる。放射線科医が病気の変化に関する報告書を作成するのを助ける狙いだ。
森さんは「医師は膨大な報告書の作成を求められている。単純な作業はAIに任せ複雑な作業に集中するなど、仕事の効率化に役立ててほしい」と話す。さらに学習量を増やし、近く試験運用を始める予定という。
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