[聞きどころ]第37回 日本臨床微生物学会総会・学術集会特集
CLSIドキュメントから紐解く薬剤感受性検査

座長
中村 竜也 京都橘大学 健康科学部 臨床検査学科(写真)
米谷 正太 杏林大学 保健学部 臨床検査技術学科
薬剤感受性検査は、微生物検査の根幹を支える検査項目であり、最適な抗菌薬の選択に欠かせない。近年は自動機器の普及や迅速検査法の進歩により、検査精度と報告までの時間は大きく改善した。しかしその一方で、検査手順の標準化や、エビデンスに基づく感受性評価の運用には課題が残されている。特に、基準となるCLSIドキュメントを正確に理解し、適切に活用することの重要性はますます高まっている。
CLSI文書の中でもM100シリーズは、一般細菌に対する標準化された検査法とブレイクポイントを網羅し、毎年改訂される最も重要な文書である。またM45シリーズは、従来検査が難しかった栄養要求性菌や希少菌の薬剤感受性検査を扱う指針として位置付けられ、MALDI-TOF MSや16SrRNA解析の普及により使用機会は増加しつつある。これらの文書をどのように臨床現場へ結びつけ、検査結果を患者治療へ還元するかは、検査室運営における大きなテーマである。
本シンポジウムでは、CLSIドキュメントを基盤とした薬剤感受性検査の在り方を、検査室、臨床医、そして国際動向という複数の視点から捉え直す。標準化と実践性を両立し、明日からの実務に役立つ知識と示唆を提供することを目指している。そこで、4名の著名な先生方にご講演をいただくこととした。
まず、大楠清文先生(東京医科大学微生物学分野)には「CLSI会議・最新情報―薬剤感受性試験法の動向」と題してご講演いただく。CLSI抗菌薬感受性試験小委員会(AST SC)は、ブレイクポイントの設定・更新や品質管理の指針を策定しており、年2回の公開会議で多領域の専門家が議論を重ねている。日本からも委員が参加し、情報共有が進められている。本講演では、ブレイクポイント設定の考え方や2026年版(第36版)の主要改訂点を紹介していただく。
次に、坂梨大輔先生(愛知医科大学病院感染制御部)には「M45シリーズ―嫌気性菌を中心に」と題してご講演いただく。一般的なCLSI文書は通性嫌気性菌などを対象とするが、希少菌や要求性菌の多くが対象外である。M45シリーズは、こうした分離頻度の低い菌に対応する感受性試験の指針を示しており、MALDI-TOF MSや16S rRNA解析の発展により重要性が増している。本講演では、M45の位置づけや活用方法に加え、M100に記載された偏性嫌気性菌の検査について整理していただく。
続いて、口広智一先生(公立那賀病院臨床検査科)には「CLSIドキュメントから紐解く薬剤感受性検査~M100シリーズを中心に~」と題してご講演いただく。薬剤感受性検査は多くの施設でCLSI基準に基づいて行われているが、一部だけ準拠した方法や独自運用が混在することもある。医療法改正に伴い、手順書の整備や標準化が求められる中、M100シリーズは信頼できる検査法とブレイクポイントを毎年更新し、最新のエビデンスを提供している。本講演では、M100を基盤にした適正な検査実施と標準化のポイントを示していただく。
最後に、西村翔先生(兵庫県立はりま姫路総合医療センター感染症内科)には「臨床医の視点から紐解く薬剤感受性検査結果―医師が考える最良の報告とは―」と題してご講演いただく。臨床医が日常的に参照するM100には、判定基準だけでなく菌種別推奨薬剤やPK/PDに基づく根拠も含まれている。しかし、自動機器の制約などからすべてを即時導入することは困難であるため、改訂内容を適切に取捨選択する“臨床的最適化”が求められる。本講演では、M100の臨床応用と検査結果報告の工夫について実例を交えてご教示していただく。
薬剤感受性検査を取り巻く環境は、技術革新と国際基準の更新により大きく変化している。CLSIドキュメントはその中心であり、M100やM45を正確に理解し実践することは、検査室だけでなく診療側にとっても重要である。本シンポジウムでは、基礎から応用、国際動向に至るまで幅広い視点から最新情報が共有され、日常の検査や診療に役立つ知見が提供されることを期待する。
MTJ本紙 2026年1月21日号に掲載したものです。
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