[聞きどころ]第37回 日本臨床微生物学会総会・学術集会特集
AI支援による臨床微生物検査

座長
堤 武也 東京大学医学部附属病院 感染制御部
渡 智久 亀田総合病院 臨床検査部
AI技術の進展は、臨床微生物検査の在り方に今後大きな影響を及ぼすことが予想される。グラム染色像の自動解析など、従来は人の経験に大きく依存してきた工程の一部がAIによって支援される環境が着実に整いつつある。こうした技術の導入は業務効率化のみならず、検査の再現性や標準化の観点からも重要な意味を持つ。一方で、精度保証や人材育成など、多面的な課題も共存する。本シンポジウムでは、感染症診療におけるAI活用の現状と将来像を多角的に議論する予定である。
まず、柳原克紀先生(長崎大学大学院病態解析・診断学/長崎大学病院臨床検査科・検査部)は、臨床微生物検査領域におけるAI活用の全体像について総論的な展望を示される。AIと医療従事者がどのように協調し、安全かつ適切に技術を生かしていくかという視点は、今後の微生物検査を支える基盤となる。また、グラム染色や抗酸菌染色における自動分類、病原体検出に関するAI支援技術、抗菌薬感受性に関連する情報解析、さらには感染症診療における予測モデルなど、幅広い技術の発展を概観しつつ、AI導入に当たって求められるデータの品質、精度評価、法規制との整合性など、重要な論点を整理される予定である。
続いて、山元佳先生(国立国際医療センター国際感染症センター)は、グラム染色の判読支援を目的としたスマートフォンアプリケーションの開発について紹介される。本検査は感染症診療の初期対応において極めて重要である一方、染色手技や判読には一定の習熟が必要であり、経験年数や施設規模により対応の差が生じやすい点が課題とされてきた。山元先生は、こうした現場のニーズに寄り添いながら、AIを活用した判読支援アプリを医工連携の枠組みで研究されている。とりわけ、学習データの整備や評価基準の構築など多くの検討点がある中で、医療従事者が日常的に使用しやすい形態を追求されており、教育支援としても業務支援としても新たな可能性を開く取り組みとして期待が寄せられる。
最後に、山本剛先生(大阪大学大学院医学系研究科変革的感染制御システム開発学寄附講座/大阪大学医学部附属病院感染制御部)は、AI支援グラム染色装置「Mycrium」を例に、グラム染色工程の自動化と鏡検支援に関する展望を示される予定である。同装置は深層学習を用いた画像解析により、微生物の形態や染色性を統合的に判断することを目指して開発されており、検査者間差の縮小や鏡検時間の短縮といった効果が期待される。一方で、AIの判定根拠の可視化や精度管理体制の整備など、慎重に検討すべき課題も存在する。加えて、山本先生は、教育支援や遠隔支援などへの活用の可能性についても視野に入れながら、AI技術と検査業務をどのように融合していくかの将来像を提示される予定である。
AI技術は、臨床微生物検査における新たな支援手段として大きな可能性を秘めている。人が有する判断力と経験、そしてAIの解析能力と再現性が互いを補完し合うことで、次世代の検査室の姿が見えてくると考えられる。ご参加される皆さまにとって、本シンポジウムが有意義なものになることを期待している。
MTJ本紙 2026年1月21日号に掲載したものです。
>> 第37回日本臨床微生物学会総会・学術集会の開催概要はこちら
続きを見るには会員登録
(無料)が必要です
会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。
MTJメールニュースの会員のみなさまへ
MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。





