[聞きどころ]第37回 日本臨床微生物学会総会・学術集会特集
臨床と微生物検査技師との連携についての事例

座長
関谷 紀貴 東京科学大学病院 感染症内科・感染制御部
山本 剛 大阪大学大学院 医学系研究科 変革的感染制御システム開発学寄附講座/医学部附属病院 感染制御部(写真)
感染症診療の質は、もはや一職種だけで完結するものではなく、多職種連携が必要である。微生物検査では、検体の採取から結果報告までの「検査プロセス」が、臨床の意思決定と密接にひも付いており、その要となるのが微生物検査技師と医師との連携である。シンポジウム11「臨床と微生物検査技師との連携についての事例」では、現在臨床現場でご活躍されている微生物検査技師2人、感染症医2人がそれぞれの立場から、連携が診療をどのような枠組みにフィットさせたのかを具体的な事例を含めて皆さまとで共有したい。
本企画の共有ポイントは、〈1〉検査は「出す」だけではなく「活かす」ことが重要であるという共通認識を形成する〈2〉日常診療の中で双方向の対話が感染症診療を最大限に機能させる仕組みづくりとなる〈3〉微生物検査技師が臨床診断の意思決定の場面に積極的に関与するための役割を示す―の3つである。
微生物検査技師の立場から、中山麻美氏(東北大学大学院医学系研究科)が「東北大学病院における臨床(医)と微生物検査(師)との連携事例~NICU監視培養検査体制の整備~」と題して講演する。NICUにおける監視培養を題材に、Diagnostic Stewardshipの観点から臨床現場と検査室が協議を重ね、検査フローを最適化していった過程を紹介する。過剰検査の見直しや、アウトブレーク時の柔軟な対応など、「話し合うことで検査は変えられる」ことを実感できる内容である。
また、池ヶ谷佳寿子氏(静岡市立清水病院)の講演「活きる情報を届ける微生物検査と診療の連携」では、血液培養を巡る症例を通じて、検査技師と医師の「違和感」の共有が診断と治療を前進させた経験を紹介する。確定前の情報をどう伝えるか、中間報告として結果のニュアンスをどう共有するかという、AIでは代替できない人間と人間との連携について紹介する。
医師の立場からは、北川浩樹氏(広島大学病院)が「感染症診療における共通認識の形成:広島大学での取り組み」と題して講演する。微生物カンファレンスや回診同行といった取り組みを通じて、臨床情報と検査プロセスの共有が診断精度を高めた実践を紹介いただく。微生物検査技師が患者を「知る」ことの意義を、医師の視点から再認識できる内容である。
松尾裕央氏(大阪大学医学部附属病院)は「カンファレンスの実際」と題して、微生物検査技師主体のASTカンファレンスを中心に紹介する。いわゆる「攻めのAST」としての活動の中で、感受性結果判明後すぐに介入することは、微生物検査技師が抗菌薬適正使用の最初の起点となり得ることとなる。
座長からは、微生物検査技師は、結果を正確に出す専門職であると同時に、診療を支える、思考する欠かせないパートナーでもあるということを改めて伝えたい。しかし、残念ながらその能力が十分に発揮できていない場面も多いのが現状である。本シンポジウムでは、成功事例だけでなく、試行錯誤の過程も含めて共有することで、「明日から自施設で何ができるか」を考えるきっかけにしていただきたいと考えている。臨床現場と微生物検査技師の距離を一歩縮めるためのヒントが得られるセッションであることは間違いない。微生物検査技師が「結果の先」に踏み出すためのヒントがここにある。ぜひ、会場に足を運んでほしい。
MTJ本紙 2026年1月21日号に掲載したものです。
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