心房細動の治療に地域差、効果あるアブレーション 専門医の数が影響
国立長寿医療研究センターなど調査
心房細動の治療法として急速に普及する「カテーテルアブレーション」。その効果は確認されているが、実施件数は地域によって差があることが国立長寿医療研究センターなどの調査で分かった。専門医の数に左右されていることも判明し、研究者は「専門医の配置を考慮することによって改善できる可能性がある」と指摘している。
誤信号を遮断
心房細動は、心臓の上部にある心房に誤った電気信号が発せられて心房にけいれんしたような不規則な動きが発生する病気だ。拡張、収縮して血液を送り出す規則的な動きが妨げられることで動悸やめまい、息切れ、だるさなどの症状が現れ、生活の質が損なわれる。それ自体が直ちに命に関わることはまれだが、血栓ができることによる脳梗塞のリスク、心臓に負担がかかることによる心不全のリスクが高まることが分かっている。
国立長寿医療研究センターの上原敬尋医長(循環器内科)によると、カテーテルアブレーションの治療では、脚の付け根や首の血管からカテーテルを心臓まで挿入。肺静脈が左心房につながる付近など、誤信号の発信源になっている部位を取り囲むように組織を加熱、または冷凍し、誤った信号が巡る回路を遮断する。「メスを使わないため、体への負担が比較的小さく、治療後の回復も手術に比べて大幅に早い」と上原さんは言う。
8~9割完治
この治療は1980~90年代に世界的に普及し、歴史は長い。世界10カ国、126の医療機関が参加した臨床試験では、2009~16年の心房細動の患者で、65歳の誕生日を超えた人か、あるいはそれより若いが脳卒中の危険因子がある人、計2千人余りを対象に調べた結果、この治療を受けた患者は薬物療法の患者に比べて1年後の生活の質が改善したことが示された。
国内では、症状が持続せずに7日以内に治まる「発作性」の心房細動において、1回の治療で8割程度、複数回の治療では9割程度が完治すると報告されている。診療ガイドラインでも、不整脈の起き方や発症からの期間、合併症などの身体症状を勘案して一定の条件に合った患者では有効な治療法になり得ると推奨されている。
最大3倍
ただ、問題はこの治療が全国どこでも受けられるかどうかだ。上原さんらの研究チームは、国内で地域間格差を明らかにする目的で、直近の国勢調査や入院医療費の計算データ、学会の統計データを用い、22年1年間の都道府県別、人口1万人当たりのカテーテルアブレーションの実施件数を算出した。
その結果、1万人当たりの実施件数は、全国平均では7.2件だったが大都市圏では軒並み8~9件台。それに対し、東北や四国、九州などの一部では3~4件台の県があり、最大で3倍ほどの開きがあった。この治療に取り組む学会の専門医のデータと比較参照すると、地元の専門医の数が多いほど実施件数が多かった。
心房細動による入院数のデータを比較すると、寒冷地ほど多いのではないかという仮説は否定され、人口当たり入院数は各都道府県でほぼ同じ。一方で、実施件数が増えれば心房細動が減って入院率が下がるのではないかとの仮説は、今回の研究でははっきりせず、上原さんは「実施件数が増えても入院率が下がらなかったのは、必要な患者にこの治療がまだ十分に届いていないことを示しているのかもしれない」と分析した。
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