キャリア・学び
わかりやすい! 医療政策から読み解く技師の未来 [第24回]
医療機関における外部委託編

今回のキーワード
臨床検査のアウトソーシング
医療法第15条の3
病院と検査センターの役割
気が付けば第24回を迎え、開始から約2年がたったようです。読者の皆さまには、医療政策というとっつきにくいテーマにもかかわらずこれまでお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。さて、医療現場では人手不足や業務の効率化を背景に、さまざまな外部委託(アウトソーシング)が進められています。臨床検査も例外ではなく、外注化の波は働き方や役割に影響を及ぼしています。今回は、医療法第15条の3を軸に制度と現場の関係を整理し、病院と検査センターの役割を中心に考えてみます。
外部委託のルール、「医療法第15条の3」とは
医療法第15条の3は、病院や診療所が業務を外部に委託する際のルールを定めた条文です。特に検体検査、滅菌・消毒、給食、院内清掃、医療ガス設備の点検、患者搬送など、診療や患者の安全に関わる業務については、委託先に厳格な基準が設けられています。
検体検査を委託する際には、「登録衛生検査所」など、厚生労働省令で定める基準に合致した施設に限られています。具体的には、医療関連サービス振興会の認定基準を満たしていることを示す「医療関連サービスマーク」が交付されている業者などが想定されます。また、受託者は、精度管理責任者の常勤配置、外部精度管理調査への参加、記録の保存などいくつかの要件が求められ、医療の質と信頼性が担保されるよう制度化されています。
これは単なる業務の分担ではなく、委託先の質がそのまま委託元の医療機関の信頼性につながることを指し、外部である検査センターにおける臨床検査技師の関わり方、院内FMS(Facility Management Service)、ブランチ契約における運用と職員・患者コミュニケーション、再委託の問題も含めて、医療機関自身の「委託の責任」が強く問われていることが分かります。
メリット、デメリットをどう考えるか
病院経営では、固定費を変動費化できないかという視点から戦略を立てることがあります。患者が増減することで業務量も増減するわけですが、通常は人員数をその都度変えることが難しいため、毎月同じだけ人件費がかかってきます。これは一般的に固定費と分類されていますが、もし業務量に応じて人件費も変動させることができれば(変動費化)、経営的には効率化が図れるわけです。そうした意味でも、アウトソーシングは経営者の思惑に合致した手段の一つとなっています。また、人的資源の集中や夜間・休日の対応の柔軟化など、現場の負担軽減にも貢献します。今後ますます課題となってくる人材不足問題も見据え、限られた資源の中でいかに効率よく高品質な検査を実施するか。外部との連携は病院にとって重要な選択肢となることを、現場の臨床検査技師も忘れてはいけません。
一方で、臨床検査室の価値は単なるデータ提供にとどまりません。臨床医と対話しながら診療支援を行う役割、緊急対応、精度保証、そして技能の継承など、多面的な役割を担っています。安易な外注化が進めば、臨床検査技師の専門性や総合力が薄れ、結果的に医療の質そのものを損なう恐れがあります。
さらに、業務委託は委託先に依存するリスクを伴います。パンデミックのような急な院内検査が必要となる場合や検査センターとの契約が終了した場合など、代替手段がなければ業務が立ち行かなくなる可能性もあります。リスク管理の視点からもバランスの取れた内製・外注の設計が必要です。
病院から外来診療がなくなる可能性
医療政策の潮流では、病院の入院機能を種別し地域ニーズに合致した入院診療に特化させること、外来診療は地域のクリニックや在宅医療へと移る「機能分化」が進んでいます。これらは限られた医療資源を地域で最適に活用するための動きで、地域医療構想や医療計画などに反映されています。すでに外来機能を持たない病院も少しずつ現れていますが、こうした傾向が広がれば、検体数が大きく落ち込む可能性も考えられます。加えて、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が進展することで、検査結果の共有がクラウド経由で可能となり、検査の「場所」に対する制約が薄れていきます。こうした環境下では、院内検査室の役割は、緊急性のある検査や臨床連携を担う機能に集約されていく未来も想像されます。
一方で、過疎が進む地域では、検査センターも採算が取れず、医療機関の近くに委託先が存在しないという現実も出てきています。民間検査センターにとっては商売であり、遠方や検体数の少ない施設の受託はビジネスがゆえ難しく、漢気やこれまでの関係の延長線上で成り立つ仕組みでは、持続可能なモデルとは言えません。
そうした中で、地域の中小病院や診療所が共同で検査ラボを運営するという形や、検査センターが生理検査や訪問検査まで担うといった、新たな仕組みが求められるかもしれません。単に施設単位で効率性を追求するのではなく、地域全体で支える「共創型臨床検査体制」の構築が、これからの時代にふさわしい姿なのかもしれません。
医療機関における外部委託は、制度にのっとって適切に活用すれば、医療の持続性と安全性の両立に貢献する手段です。ただし、それは「任せる」ことが目的ではなく、「地域医療の持続という責任を共有する」ものであることを忘れてはなりません。
これからの臨床検査技師には、制度を正しく理解し、外注・内製の判断を専門職として支える知識と視点が求められます。さらに、地域構造や医療ニーズの変化を読み解き、検査の新たな在り方を提案・実践できる力も重要です。これらは、医療機関や検査センターという所属の垣根を越えて考えるべきテーマであって、かつ病院や企業という組織レベルにて、十分に議論が必要なテーマでもあります。医療の現場で何が必要かを見極め、それぞれが役割を発揮する。その積み重ねこそが、未来の検査室、そして臨床検査技師自身の姿を形作る礎となるのではないでしょうか。
※MTJ本紙 2025年8月1日号に掲載したものです
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