POCTの実践 [最終回]後藤 慎一氏(日本医療検査科学会POC技術委員会 委員長/春日井市民病院 経営戦略室)
品質保証は検査技師の手で

POCT管理、何から始める?
本連載は今回で最終回となります。総論(計2回)では、在宅医療を含む臨床現場(ベッドサイド)でPOCTを活用する上で鍵となる精度管理と運用体制の整備について示しました。各論(計7回)では、血糖、血液ガス、凝固検査、感染症イムノクロマト検査、尿検査、生化学、超音波などの運用事例を取り上げました。執筆を担当していただいた臨床検査技師はいずれも第一線で活躍されている方々で、運用の実態と現場の声が反映された内容となりました。
各論の事例1~6で管理されているPOCT機器・試薬に注目すると、血糖4施設、血液ガス4施設、尿定性2施設、凝固2施設、感染症1施設の順でした。これは、日本医療検査科学会POC技術委員会が開催するPOCセミナーで取り上げる「三大POCT」(血糖・血ガス・感染症)とほぼ一致しています。これらの項目は需要が高く、臨床検査部門が管理をしやすい項目と言えます。POCTの管理をこれから始めようとしている施設ではまず、これらの項目から着手してはいかがでしょうか。
管理のきっかけは危機感
事例で紹介した施設では、POCTの管理を開始したきっかけとして、「POCT血糖とSMBGが混在し、コントロール測定が行われていない」「教育体制の不十分さに起因する測定や解釈の誤りに直面した」「各診療科で購入された機器の精度管理・メンテナンス、データ管理、コスト処理、試薬交換など、日常運用を誰が担うのか不明確で懸念がある」などが挙がっていました。検査室外で実施される検査の品質保証に危機感を抱いたことが、管理体制の整備につながったと言えます(図1)。

また、Joint Commission International(JCI)やISO 15189:2022の取得を契機にPOCT管理を始めた施設もありました。JCIやISOでは、医師、看護師、臨床工学技士などの測定者と臨床検査部門の役割を明確にすることが求められます。研修と力量評価を行った上で、POCTの管理体制を整えることが重要です。
きっかけは何であれ、院内でPOCTの運用構築と管理体制整備を推進できる人材が欠かせません。この役割を担うのがPOCコーディネーター(POCC)です。
多職種連携と教育訓練が鍵
POCTの管理体制は、臨床検査部門だけでは成立しません。POCTには医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、購買部門、医事部門、システム部門など、多職種・多部門が関わります。関係者間で「依頼→測定→結果報告→コスト算定」までの運用の流れを構築することが必要です。さらに、その流れが維持されているか、監視することが欠かせません。
教育訓練も重要です。機器導入・更新時の研修、入職時研修、維持研修など機会は多く、計画的に実施することが推奨されます。研修では、測定目的を明確にすること、結果を正しく解釈すること、疑義があれば相談(コンサルテーション)することなど、基本的な能力を身に付けてもらう必要があります。
教育体制の整備に悩む施設も多いと思いますが、本連載では、eラーニングの導入(事例2)、POCTインストラクターの育成(事例5)、Point of care ultrasound(POCUS)における医師・看護師向けトレーニングの開催(事例6)などを紹介しました。画期的な教育システムを構築している施設(図2)もありますので、ぜひ参考にしてください。

在宅医療のPOCT
事例7では、在宅医療に関わる診療所で実施される検査として、血糖測定、感染症検査、尿検査が多いことが報告されました。一方、診療所で「精度管理」や「校正・コントロール」という言葉を知っている割合は50%未満、訪問・介護施設では20%未満という結果でした。
診療所や訪問介護施設でのPOCT測定者は医師や看護師が中心であり、臨床検査の精度確保の方法が十分に周知されていない現状があります。POCCや臨床検査技師が関与し、検査の質保証を支える取り組みが求められます。
これからのPOCCに期待
2026年1月現在、日本医療検査科学会の認定POCCは全国で200人となり、4月にはさらに21人が誕生します。本連載を通して、POCTでは運用管理の体制構築と継続的な教育体制整備が課題として浮かび上がりました。POCCは院内でこれらの課題と向き合い、体制整備を進める役割を担います。また、POCTは病院内にとどまらず、診療所や訪問介護施設などでも活用されます。POCCは院外でも検査の質保証の担い手として活躍し、地域の臨床検査を支えることが期待されています。
※MTJ本紙 2026年3月21日号に掲載したものです
※ 本連載は今回で終了となります。最後までお読みいただきありがとうございました(編集部)
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