キャリア・学び

POCTの実践 [第9回]坂本 秀生氏(神戸常盤大学 保健科学部 医療検査学科)
〈事例7〉在宅の実践

2026.06.15 06:00 会員限定記事を示すアイコン

在宅医療現場において臨床検査がどのように実施されているか、在宅医療に関わる方が多く参加される日本在宅医療連合学会大会の会場内にて、無作為に選んだ方から同意を得た上で口頭での聞き取り調査を行いました1)。臨床検査の実施状況として信頼性を高めるため、医師、看護師、臨床検査技師からの回答のみを対象とし、調査の中から在宅医療現場における臨床検査実施状況と、精度の確保に関する認知度について紹介します。

 

検体検査は血糖、感染症、尿を実施

所属施設別の回答数は153施設中で「在宅療養支援を含めた病院(以下、病院)」が24施設、「訪問看護ステーションまたは介護施設(以下、訪問・介護)」が26施設に対し、「在宅療養医療診療所、診療所在宅医療・訪問診療所を含めた診療所(以下、診療所)」が103施設でした。

在宅医療に関わる施設群として最も回答者が多かった診療所において、どのような検査項目が実施されているか、実施率を合わせて確認したところ、図1に示すように血液ガス分析以外はほぼ全ての在宅医療に関わる診療所で実施されていることが確認できます。

超音波検査および心電図検査などの生理学的検査は自施設で実施していますが、検体検査は多くが外部委託でした。検体検査を自施設で実施している割合は血糖で41.7%と高く、感染症検査で32%、尿検査で27.2%とPOCTセミナーでもテーマとなる検査項目が在宅医療の現場で実施されていることが理解できます。

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「精度確保」の認知度低い診療所も

検体検査を自施設で実施している割合が一定数あることから、「精度の確保」が在宅医療の現場でも実施されているか気になるところです。そこで、聞き取り調査時に「精度管理」との言葉を知っているか、精度確保で必要な「校正・コントロール」との言葉を知っているかも合わせて確認しました。その結果、病院所属者からは「精度管理」「校正・コントロール」ともに知っているとの回答が半数を超えていましたが、診療所では知っているとの回答が半数に届かず、訪問・介護では知っているとの回答が2割にも届きませんでした(図2)。

2018(平成30)年12月に施行された医療法等の一部を改正する法律には、施行通知の留意事項として、病院等が検体検査を行う場合、努力義務ですが精度の確保として精度管理は重要な手法であり、積極的に活用すべきであるとされています。精度管理が努力義務であることから、在宅医療で精度確保の概念が周知されていない可能性があります。

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在宅医療における臨床検査技師の役割

限定的な聞き取り調査ではありますが、在宅医療現場で臨床検査が実施されており、特に心電図検査や超音波検査などの生理学的検査は対人で実施することから、臨床検査技師が果たす役割は多いことが期待されます。検体検査の多くは外部委託されていますが、POCTで実施可能な血糖は4割ほど、感染症検査、尿検査においては3割弱の施設で実施されているにもかかわらず、精度管理への認知度は低いようです。

精度の確保には検査前過程として、検体採取後から外部へ委託するまでの保管方法を含めた管理も大事であり、臨床検査の専門家として臨床検査技師が在宅医療へ関わることで在宅医療における臨床検査の質向上に寄与が期待できます。



本内容は厚生労働科学研究費補助金「在宅医療における検体検査の質の確保に資するための研究」(研究代表者:小谷和彦氏)として実施した一部であり、一般社団法人日本臨床検査振興協議会の協力にも感謝します。


参考文献

1)坂本秀生、井越尚子、高崎昭彦、北井真紀子、山中崇、小谷和彦. 在宅医療における臨床検査実施に関する実態報告~臨床検査専門家が関与する必要性への示唆~. 臨床検査学教育 17(1):23-29.2025


  ※MTJ本紙 2026年2月21日号に掲載したものです

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