キャリア・学び

POCTの実践 [第8回]寺内 裕樹氏(ホリィマームクリニックさいたま)
〈事例6〉在宅医療でのPOCUS活用

2026.05.18 06:00 会員限定記事を示すアイコン

短時間で病態評価する超音波検査法

POCUS(Point of care ultrasound)とは、ベッドサイドなどにおいて、バイタルサイン・病歴・身体所見に基づき観察範囲を絞り、短時間で病態評価を行う超音波検査法です。在宅医療現場でのPOCUSは、病院への受診や搬送の要否や、処置後の確認をその場で迅速に行うために活用されます。

技術の進歩に伴いプローブの種類が増え、さまざまな領域の観察が可能となりました。運動器領域においてもPOCUSは有用で、骨折の有無の確認、肩関節・膝関節などの状態を観察する際にも役立ちます。また、近年では肺エコーも普及してきており、肺炎などの診断において補助的な印象ではありますが、検査を行う意義はあると思います。処置後の確認においては、尿道カテーテル、腎瘻カテーテル、胃瘻チューブなど留置物の確認に有用です。さらに、エコーガイド下での穿刺にも役立ちます。

 

老人ホームでの活用事例

POCUSを実際に活用した事例を紹介します。90代、女性、老人ホーム入居中の患者で、現病歴は糖尿病、アルツハイマー型認知症です。訪問診療時、患者本人より頻尿の訴えがあり、膀胱を観察したところ、残尿量は50mL以下でしたが、直腸内の多量の便塊が膀胱後壁を圧排している所見を認めました(写真)。頻尿の原因は、神経因性膀胱および直腸内便塊による膀胱圧排ではないかと主治医に報告しました。また、直腸に便塊を認めたため、浣腸や摘便などの処置が必要であると介護施設看護師に提案し、摘便を施行しました。摘便施行後は頻尿の訴えが消失しており、便塊による膀胱圧迫が一因であった可能性が示唆されました。

 

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医師向けトレーニングに四点法を提案

臨床検査技師が同行できない場合の対応について院長から相談があり、超音波検査経験の少ない医師でもエコーを活用できるように、有効かつ習得しやすい方法を検討しました。在宅高齢患者からの訴えとして多い症状は、排尿障害、下肢浮腫が挙げられ、これに対応できる簡易的検査方法として、心窩部・両側胸腔・膀胱を観察する四点法を提案し、導入に至りました。

膀胱は残尿量の評価に加え、尿閉による腸骨静脈圧排が原因と考えられる下肢浮腫を多く経験しており、下肢浮腫を認めた場合も膀胱を観察します。また、前立腺肥大の有無は尿閉の原因となるだけでなく、前立腺肥大症における禁忌薬も多く存在するため観察します。下肢浮腫は、心不全の有無が重要であり、高齢者は収縮機能が保たれた心不全HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)が多いことを経験していることから、下大静脈の評価だけでも有用であり習得しやすいのではないかと考え、心窩部での下大静脈と胸水の有無を観察ポイントとしました。

 

看護師向けのトレーニングも開始

医師のエコートレーニングを見ていた当クリニックの看護師たちから、単独訪問時の導尿に際し、事前にエコーで膀胱を確認したいとの相談があり、トレーニングを開始しました。病棟におけるタスクシフトの視点から考えると、臨床検査技師が病棟看護師に指導し、排泄ケアに関する超音波検査を病棟看護師が担当し、それ以外の超音波検査を臨床検査技師が実施することで、業務の効率化が期待できるのではないかと思われます。

 

精度保証は課題、まずは教育から

ポータブルエコー機器の性能差異や現場で求められる検査レベルが多様であるため、精度管理が難しい課題となっています。近年、検査室外でのポータブルエコーの有用性に関する報告が、多職種から寄せられるようになってきています。しかし、職種ごとに求められる目的が異なっており、例えば医師は診断、看護師はケアの評価、理学療法士は運動機能の評価など、使用目的が細分化されているため、検査の均一化は難しい状況です。

また、「POCUS=簡便」というイメージが広がっていますが、短時間で観察範囲を絞って行うPOCUSでは、見落としのリスクや十分な情報が得られない可能性があるため、一定のトレーニングが不可欠です。まずは、精度を確保するための教育環境の整備が、今後の重要な課題であると考えます。


  ※MTJ本紙 2026年1月21日号に掲載したものです

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