キャリア・学び

わかりやすい! 医療政策から読み解く技師の未来 [第27回]
教育訓練給付・ リカレント編

2026.03.11 06:00 会員限定記事を示すアイコン



 今回のキーワード 
教育訓練給付金の活用
時間、費用、職場の理解
キャリアデザインの情報発信


 

医療の現場は今、大きな変化の波に直面しています。少子高齢化による患者数の増減、医療費の増大、そしてAI(人工知能)やロボットといった技術革新。こうした変化に適応するためには、医療従事者自身が常に学び直し、力を磨き続ける必要があります。そして、その学び直しを支える仕組みの一つが「教育訓練給付制度」です。臨床検査技師にとっても、キャリアの広がりを考える上で欠かせない制度となっています。今回はこの制度の仕組みを整理し、リカレント教育(学び直し)の実際と可能性を考えてみたいと思います。

 

教育訓練給付は3種類

教育訓練給付制度は、雇用保険に一定期間加入している人が、厚生労働相の指定する講座を修了した場合に、受講費用の一部が戻ってくる仕組みです。種類としては3つに分けられます。1つ目は、専門実践教育訓練給付で、中長期的なキャリア形成支援を目的に、最大50%(条件次第で80%)が支給されます。2025年10月時点で3300講座が指定されています。2つ目は、特定一般教育訓練給付で、再就職と早期のキャリア形成を目的に費用の40%(上限20万円)が支給されます。こちらは1188講座が指定されています。そして最後が一般教育訓練給付で、そのほかの雇用の安定・就職促進を目的に費用の20%(上限10万円)が支給され、1758講座が指定されています。制度の対象講座は年度ごとに更新される仕組みです。

こうした制度を利用するためにはいくつかのポイントがあります。雇用保険に加入しているか、加入期間が要件を満たしているか、そして講座が対象に指定されているかの3つの条件をそろえることが前提です。対象講座は前述の通り非常にたくさんありますが、その種類も幅広く、医療や福祉分野の国家資格取得講座はもちろん、経営のMBAプログラム、情報系の基本情報技術者試験コース、キャリアコンサルタント養成講座、TOEICなどの言語に関する学びなども指定されています。厚生労働省の検索システムを活用することで、どのような学校でどのような講座が指定されているかが確認でき、社会人がキャリアを広げるための実践的な学びを支えています。ぜひ、教育訓練給付金で調べてみてください。(厚生労働省ウェブサイト「教育訓練給付金」

 

学び直しに3つの課題

学び直しに挑戦する際、医療従事者には特有の課題があります。第一は「時間の確保」です。臨床検査技師をはじめとした多くの医療従事者はシフト勤務や夜勤が存在し、学習時間を確保することが難しい現状があります。そのため、オンライン講座や夜間・休日対応の講座が鍵となります。第二は「費用負担」です。給付制度によって軽減されても、基本的には全額ではありません。大学院や長期プログラムでは大きな金額になりますが、それを「未来への投資」と考える視点が求められます。第三は「職場の理解」です。リカレント教育は本人だけでなく、職場にとっても大きなメリットがあるはずなのですが、その理解は業界や各職場によって温度差があります。

病院組織としては、こうした制度をどのように利用できるのか、活用できる体制づくりと情報発信が重要となります。また、仕組みの煩雑さが課題になっているため、職能団体が個々の会員に向けて分かりやすい形で制度情報を発信することも期待されます。そして、忘れてはならないのが「実例の力」です。リカレントに挑んだ技師がどのようなキャリアを築けたのか、そのリアルな声を共有する場が必要です。生の体験談ほど後輩や仲間に勇気を与えるものはありません。ちなみに、日本臨床衛生検査技師会の医療技術部門管理資格認定制度では、提携する大学院の修士コースへの支援プログラムが存在します。ここでは教育訓練給付制度と認定ホルダー特典を併用して活用することで、驚くほどの安価で修士取得につながっています。毎年4~5人が活用している現状です。

 

キャリアデザインの可能性

教育訓練給付とリカレント教育を活用すれば、臨床検査技師のキャリアは大きく広がる可能性があります。専門性を極める道として、病理、遺伝子、感染症、臨床研究など、検査の高度専門分野を追究する進路も一つです。修士課程や認定資格取得を通じ、研究や教育の場へ羽ばたくことも可能だと思います。また、病院組織を動かす道も一つです。検査室運営や病院経営、DX推進に携わるマネジメントの役割に担うこと。経営学や情報学の学び直しを通じて、検査部門のリーダーや医療DXマネージャーとして活躍する未来が描けるのではないでしょうか。そして、社会とつながる道もあります。地域医療連携、健康教育、政策提言など、検査技師が地域住民に直接関わる機会は確実に増えています。コミュニケーションや広報を学び、医療政策的なアプローチを組み合わせれば、社会に検査と健康の価値を発信する存在にもなり得ます。これらはお互いに排他的というわけではなく、専門性・管理・発信を行き来する複線型キャリアとして十分に可能な時代となってきました。

教育訓練給付制度は、臨床検査技師の「学び直し」を後押しし、個人と組織の未来をつなぐ仕組みです。病院は制度の周知と職員支援を、職能団体は分かりやすい情報発信を、そして現場でリカレントに挑んだ技師の声を共有できる場を。それぞれが役割を果たすことで、学び直しはより身近になり、キャリアの可能性を広げます。そして、こうした可能性を広げていく活動が、ワクワクする臨床検査業界の未来につながっていくのではないかと感じます。臨床検査技師が「現場の専門職」から「高度専門家」「マネジメント人材」「社会的発信者」に。時代を切り開くための転機の一歩は、教育訓練給付とリカレント教育の実践にあるのかもしれません。
 


 
※MTJ本紙 2025年11月1日号に掲載したものです

続きを見るには会員登録
(無料)が必要です

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

MTJメールニュースの会員のみなさまへ

MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。

すでに会員の方はこちらからログイン