キャリア・学び

Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 輸血01
輸血の適正使用を支える新たな枠組み——適正使用推進ガイドを読み解く

2026.07.24 06:00 会員限定記事を示すアイコン

画像

 

評価・監査・改善をつなぐ輸血管理体制

『輸血の有効性と安全性の評価及び適正使用推進ガイド』1)(以下、本ガイド)は、輸血療法における有効性と安全性の確保、評価を通じて、輸血の適正使用を推進することを目的に作成された。輸血療法は有効な治療手段である一方で副反応などのリスクを伴うことから、必要最小限かつ明確な適応に基づいて実施するとともに、その結果を客観的に評価し、輸血管理体制の継続的な改善につなげることが求められる。

本ガイドでは、patient blood management(PBM)の考え方に基づき、輸血前の適応評価や代替療法の検討から、輸血後の有効性・安全性評価、記録保管までを一連のプロセスとして管理することの重要性を示している。また、C/T比、FFP/RBC比、ALB/RBC比、血液製剤の廃棄率などの指標管理や、輸血適応、安全管理手順、製剤使用状況などを確認する院内輸血監査の実施についても具体的に言及している。さらに、輸血後にはヘモグロビン値、血小板数、PT、APTT、フィブリノゲン値などの臨床検査値を用いて客観的に効果を評価し、その結果を記録、活用することが求められている。

本ガイドは、血液製剤ごとの適応や使用量の基準を示すだけでなく、PBMの理念を基盤として、輸血前評価から輸血後評価、指標管理、院内輸血監査までを含めた輸血管理の枠組みを体系的に示した包括的なガイドである。

 

輸血検査のエキスパートレビュー

本ガイドの最大の特徴は、輸血を単独の医療行為としてではなく、輸血前の適応判断から輸血後の評価、さらには組織的な改善活動までを含めた一連のプロセスとして捉えている点にある。日本輸血・細胞治療学会から発行されている科学的根拠に基づくガイドライン2)では、血液製剤ごとの適応や使用量の基準が示されているが、本ガイドでは輸血の適正性、有効性、安全性を継続的に検証し、その結果を施設全体の輸血管理へ還元するための枠組みが示されている。

 

1.PBMに基づく輸血前評価の重要性

輸血の適正使用は、輸血前の適応評価から始まっている。PBMは、患者にとって最適な血液管理を実現するための包括的戦略として提唱されている。PBM3, 4)は、▽術前貧血の改善、▽出血の最小化、▽貧血耐性の最大化——の3本柱からなる(図14)。これは単に輸血を減らすこと自体が目的ではなく、不必要な輸血を回避するための戦略である。すなわち、鉄剤や赤血球造血刺激因子製剤(ESA)などの代替療法を含め、「本当に輸血が必要なのか」を事前に十分検討することが求められる。

画像
図1 PBMの概念図〔筆者作成〕

2.輸血後評価で検証する有効性と安全性

一方で、輸血を実施した後には、不必要な追加輸血を回避するためにも、その有効性を客観的に評価することが求められている。本ガイドでは、ヘモグロビン値、血小板数、凝固関連検査などの変化に加え、患者の症状や全身状態の改善を踏まえて輸血効果を評価し、その結果を記録することを求めている。また、副反応の有無を確認し、安全性についても評価する必要がある。輸血後評価の目的は、その輸血が適切であったかを検証し、次の診療や輸血適応の判断に活用することにある。

 

3.指標管理と監査による継続的改善

さらに本ガイドでは、施設全体の輸血医療を定量的に把握するため、C/T比、FFP/RBC比、ALB/RBC比、血液製剤の廃棄率などの指標を継続的にモニタリングすることの重要性が示されている。これらの指標は、自施設の輸血療法の現状や課題を可視化するための有用なツールとなる。また、院内輸血監査は、こうした情報を組織的な質の改善へ結びつけるための重要な仕組みとして位置づけられている。監査の目的は、輸血適応、製剤選択、安全管理手順、教育体制、記録管理など、一連の輸血療法の運用状況を客観的に確認し、改善点を明らかにすることにある(図2)。

画像
図2 院内輸血監査の6つの評価軸〔筆者作成〕

本ガイドが示しているのは、輸血前評価から輸血後評価、指標管理、監査、改善へとつながる一連のPDCAサイクルである。輸血の有効性、安全性、適正使用は相互に関連しており、継続的な検証と改善を通じて質の向上が図られるべきものである。輸血部門に求められる役割も、従来の製剤管理や検査業務に留まらず、輸血医療全体の質保証を担う方向へと広がりつつある。本ガイドは、その実践に向けた具体的な枠組みを示した点に大きな意義がある。

 

続きを見るには会員登録
(無料)が必要です

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

MTJメールニュースの会員のみなさまへ

MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。

すでに会員の方はこちらからログイン