検査室

変わり続ける検査の現場 #21 神戸大学医学部附属病院
検査室の枠超え、病棟に臨床検査技師を配置

2025.09.11 07:00 会員限定記事を示すアイコン



神戸大学医学部附属病院(神戸市、934床)の検査部は2024年3月から、循環器内科病棟をパイロット病棟として臨床検査技師の病棟配置を開始した。働き方改革に伴う医師・看護職員の負担軽減などの取り組みの一環で、医師・看護師としての本来の業務時間が増えるなどの効果をもたらしている。検査部では今後パイロット運用の検証を進めながら、引き続き検査部の枠を超えた臨床検査技師の職能拡大を進める方針だ。


 

検査部は検体検査、生理検査などの4部門に分かれ、60人強の臨床検査技師を擁する。佐藤伊都子副技師長によると「大学病院なので専門性を高めるのはもちろんだが、オールマイティーな技師を育てていこうというのが部としての方針。そのため適宜ローテーションを行い、複数の専門性を発揮できる人材の養成を図っている」という。

そうした方針の下、法改正に伴い実施可能な検査業務が拡大する中で、検査部ではタスクシフト・シェアの取り組みとして、2022年6月にワーキンググループを立ち上げ、病棟配置の取り組1みの検討を開始した。

構成メンバーには千藤荘検査部長(医師)、今西孝充技師長、佐藤副技師長のほか、実務担当として福住典子氏、大沼健一郎氏、渡邉勇気氏、渡邊優子氏の4人が選ばれた。4人のルーチン担当は、検体系2人(大沼氏、渡邉氏)、生理系2人(福住氏、渡邊氏)で、まず情報収集から行った。「どういう業務があるかも分からない中で、文献を参考にして病棟で実施できそうな業務を考えたり、他院の情報を集めたりと、看護部への協議へ向け半年程度準備した」(福住氏)。

 

循環器内科病棟でパイロット運用

2022年9月からは看護部、診療科との協議の上、循環器内科病棟をパイロット病棟とすることが決まった。その際、循環器内科医師から6分間歩行試験も担ってほしいとの要望が出たため、その体制も構築することになった。同試験は、肺高血圧患者の入院初日に医師が病棟で実施していたものだ。

千藤部長は当時の状況を「臨床検査技師がもっと外へ出ていくべきだという考えが技師長にあったのだと思う。検査部の中だけで業務を行っていては、いずれAIに業務が置き換わっていく。そうならないために、将来の投資的な意味からも病棟配置が進められた」と説明する。

2023年には実務担当の4人が病棟業務を見学。業務内容や時間帯などを部内で協議し、診療側に報告の上、方向性を固めていった。

そして循環器内科病棟での技師配置が始まったのが2024年3月。まず6分間歩行試験を手がけた。次いで2024年6月から、午後3~5時(2時間)での常駐を開始。もっと早い時間帯の方がニーズがあると思われたため、2024年9月からは常駐時間を午前10時~午後2時(4時間)に変更し、現在に至っている。

病棟での業務内容は▽6分間歩行試験▽12誘導心電図検査▽静脈採血▽心電図モニターの監視と脱着▽機器メンテナンス―など。4時間常駐後は新たに▽血液培養採取補助▽スワブでの培養検体採取▽尿スピッツへの分注―も行っている。主な業務の件数推移は下の図の通り。少しずつコミュニケーションを重ねることで業務が広がっているという。

 

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「技師ボックス」通じ連携も

検査部では、2時間常駐配置前と4時間常駐配置後の2回に分け、医師と看護師にアンケートを実施した。その結果、検査業務では特に▽検体採取▽心電図関連業務▽検査前説明などの患者対応―の負担感が大きく、これらの業務ニーズが高いことが分かった。技師の病棟配置後は「医師・看護師としての本来の業務時間が増えた」などの評価が寄せられたという。

コミュニケーションを補うツールとして、病棟には「技師ボックス」を設置した。直接声をかけなくても、例えば看護師がボックスに採血管を入れておけば、技師が常駐時に採血に対応。最近では心電図の依頼などにもボックスが利用され、スムーズな業務依頼に一役買っている。

常駐には実務担当の4人がシフトを組んで対応。突発的なシフト変更も柔軟に対応して穴をあけない体制ができているという。

今でこそ病棟スタッフの一員となっているが、なにしろ初の病棟業務。渡邉氏は「最初は正直不安だった」と正直に打ち明ける。だが、少しずつ業務を重ね慣れてきたことで「最近では患者のいろんな情報ももらえるようになっている」と話す。

大沼氏も当初は不安感を持っていたそうだが、今では「全国の先駆けになれるように引き続き頑張りたい」と意欲的だ。

日々の業務は日誌で情報を共有。新しい業務依頼があった場合も手順などがスムーズに引き継がれるようになっている。

渡邊氏は「病棟に行き続けることで頼まれやすくなり、『これお願いできますか』と看護師から声がかかる機会が増えている」と語る。アンケートの回答の自由欄でも「すごく助かってます」などの声が寄せられたことで、改めてやりがいを感じたそうだ。

診療側とのコミュニケーションが少しずつ高まる中で、患者あっての医療だということも再認識した。「患者のためにという意識が高まった」と福住氏は語る。医療者側の都合を優先して業務をするのではなく、それぞれの技師が患者の状況に合わせて柔軟に対応できるようになってきたという。

病棟配置の取り組みについて、今西技師長と佐藤副技師長は「AIがここまで身近になった今、臨床検査技師に求められるのは検査データを出すことだけではない。病棟に出て患者の声に耳を傾け、他の医療職と連携し、信頼される存在となることこそ、これからの時代に必要な価値だと感じ『今しかない』と思った」と打ち明ける。

 

「検査部からどんどん発信」

その狙いは少しずつ実を結びつつある。今後の検査部の方向性について、千藤部長は「院内だけでなく対外的にも検査部からどんどん発信していこうと呼びかけている。病棟配置の効果については今後検証が必要だが、今回の取り組みは院内・院外への発信の両方に役立っている」と強調する。

検査部では今後も検査室の枠を超えた取り組みを積極的に進める姿勢だ。

 

(後列左から)渡邊氏、福住氏、渡邉氏、大沼氏(前列左から)千藤部長と佐藤副技師長
(後列左から)渡邊氏、福住氏、渡邉氏、大沼氏(前列左から)千藤部長と佐藤副技師長

 

 



MTJ本紙 2025年9月1日号に掲載したものです。

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