検査室

変わり続ける検査の現場 #22 山口大学医学部附属病院
CGP検査、臨床検査技師が円滑運用に貢献

2025.10.06 06:00 会員限定記事を示すアイコン



山口大学医学部附属病院(山口県宇部市、754床)では、がん遺伝子パネル(CGP)検査の運用で、臨床検査技師が中心的役割を担っている。多忙な担当医の負担軽減のため、検査実施に伴う患者データ等の代行入力に加え、電子カルテ上で検査オーダーできる仕組みを検査部主導で整備し、実施件数の増加につなげている。独自のエキスパートパネル(EP、専門家会議)の開催を視野に、プレEPの運用も開始したほか、二次的所見の対応で臨床医への情報提供にも力を入れている。


 

がんゲノム医療を提供する病院は、診療体制や役割により、厚生労働省が指定する「がんゲノム医療中核拠点病院」(13カ所)、「がんゲノム医療拠点病院」(32カ所)、「がんゲノム医療連携病院」(240カ所)の3段階に区分されている。山口大学病院は、中核拠点と連携して、がんゲノム医療を行う連携病院の位置付け。がん遺伝子パネル検査の結果解析や対応を協議するエキスパートパネルは現在、中核拠点病院である岡山大学病院の会議に参加する形で実施されている。

 

複数部署の検査技師が連携

山口大学病院では、2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険適用になって以降、遺伝・ゲノム診療部、検査部遺伝子検査室や病理診断科などの複数部署が連携して運用体制を整えている(図1)。病院全体で約65人いる臨床検査技師のうち、兼任も含めた10人弱が関わっている状況だ。がんゲノム医療分野での計画的な人材育成も進めており、専門資格として、がんゲノム医療コーディネーター6人、初級遺伝子分析科学認定士6人、1級遺伝子分析科学認定士1人、認定臨床遺伝子検査士1人が支えている。

 

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がん遺伝子パネル検査の運用では当初、検査依頼から結果判明、患者説明の前段階までの流れが複雑なことが大きな課題だった。関連する事務作業も含め、担当医の負担が大きかったため、臨床検査技師が主体的に関わることでスムーズな運用になるよう段階的な体制見直しを進めてきた。

改善策の一つが担当医の検査依頼作業の軽減だ。検査を受ける患者情報は、外注先となる検査センターの登録依頼サイトと、国立がん研究センターの「がんゲノム情報管理センター(C-CAT)」のデータベースへの登録作業がそれぞれ求められるが、以前は担当医が電子カルテから抽出した情報を入力依頼書に記入し、それを臨床検査技師が代行入力していた。検査部の國宗勇希氏は、「担当医が電子カルテの情報を、紙の依頼書に書き込む負担は大きかった。紙ベースだった運用を解消し、検査オーダーの手続きをいかに簡略化するかは課題だった」と振り返る。

 

検査部主導で電カル改修

こうした課題を受け、同病院では電子カルテ上で、外注先への依頼サイトと、C-CATデータベースへの登録を可能にする専用システムを検査部主導で整備。患者情報や依頼内容を直接入力するのではなく、できるだけプルダウンやチェック方式を採用し、手間がかからない仕様を取り入れた。國宗氏は、「担当医は電子カルテ上で、検査オーダーや依頼書入力などが可能になった。紙ではなく、電カルで一元的に情報管理されることで、院内での情報共有がしやすくなったこともメリットだ」と話す。

岡山大学病院のEPに提出する症例資料作成や、会議日程調整なども臨床検査技師が担っている。高額ながん遺伝子パネル検査について、院内の診療報酬係と連携しながら算定漏れがないかをチェックするのも役割だ。

担当医の負担軽減を中心にした運用改善の成果は、がん遺伝子パネル検査の実施件数にも表れ始めている(図2)。同検査が始まった2019年は16件で、2020年25件、2021年24件だったが、検査オーダー等に伴う担当医の負担軽減を図ったことで件数が増加。2022年に59件、2023年41件、2024年68件と増加傾向にある。2025年も8月時点で45件と、最多件数のペースで推移している状況だ(図3)。

 

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山口大学病院では、岡山大学病院主催のEPに参加しているが、厚労省が一定条件下で連携病院での開催を認めたことを受け、将来的な独自開催も視野に入れた取り組みを進めている。具体的には、岡山大学病院のEPの開催前に院内メンバーのみでプレEPを行い、治験の有無や、二次的所見の可能性、追加検査の要否などの検討結果をまとめ、その後に開催される岡山大学病院のEPの結果と比較している。院内単独での検討結果と、中核拠点病院の検討結果を突き合わせ、課題を探りながら院内EPの検討レベルを引き上げたい考えだ。

西岡光昭臨床検査技師長は、「EPを独自開催するための課題に向き合い、必要な知識を学んでいくことで検査技師の専門性も上がる。また、自前で開催できれば会議日程や参加者調整なども今より柔軟になり、検査全体を効率的に進めることができる」と話す。今後は、プレEPに関する運用ルールを明確にするほか、効率的な協議が進むように検討事項をまとめたチェックリストを作成する計画だ。早ければ年内にも導入する。

 

二次的所見の対応でも役割

EPで課題の一つになっているのが、当初目的としていた検査結果とは別に、がんになりやすい遺伝子を持っていることが判明する「二次的所見」への対応だ。この場合、遺伝性がんリスクへの不安や、患者家族の将来リスクも含め、専門的な遺伝カウンセリングが求められる。

二次的所見が確認された場合は、臨床検査技師が、検査データに基づく将来的な遺伝性リスクを担当医に丁寧に説明する。國宗氏は、二次的所見について、「判断が難しい症例もあるが、検査データに可能な限り付加価値を加えて臨床医に届けるようにしている。遺伝カウンセリングは専門家が担当するが、その根拠となるデータや解釈を示すのは検査技師の役割だ」としている。

山口大学病院では今後、CGPに現在携わっている臨床検査技師の専門性を高めるための取り組みを進める計画だ。それぞれの専門知識やスキルを高めるための研修のほか、関連する認定資格取得などへの経済的なサポートも検討する方針。西岡氏は、「大学病院として人材育成、教育をしっかり担うという役割もある。検査技師としての知識やスキル、ノウハウを学びたいという現場の思いはバックアップしたい」と話しており、CGP検査を支えるさらなる体制整備を進める考えだ。

 

CGP検査を支えている臨床検査技師の皆さん
CGP検査を支えている臨床検査技師の皆さん

 

 



MTJ本紙 2025年10月1日号に掲載したものです。

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