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報告ゼロの大病院も、国民への周知が課題
医療事故調制度、開始10年で約3500件 

2026.01.09 05:30 会員限定記事を示すアイコン

医療機関で発生した死亡事故の原因を究明し、再発防止につなげる医療事故調査制度が始まってから10年がたった。この間、医療機関から報告された事故は3500件余り。毎年300~400件ほどで推移している。ただ、複数の報告実績を持つ病院がある一方で一度も報告がない大病院も数多く、制度に対する意識の温度差が指摘されている。関係者は「事故を適切に報告する体制の強化と、国民への制度周知が課題だ」と話す。

 

予期せぬ死亡

医療事故調査制度は医療法に規定され、全ての病院、診療所、助産所を対象に2015年10月にスタートした。制度創設の背景には、1999年1月に起きた横浜市立大病院の患者取り違え手術事件や、同2月に都立広尾病院で発生した消毒液投与死亡事件などをきっかけに、医療安全に対する社会的関心が急速に高まったことがある。

制度では、医療に起因するか、起因する疑いのある予期しない死亡や死産が発生した場合、医療機関は民間の第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告した上で自ら院内調査を行い、結果を遺族とセンターに伝える義務がある。センターは情報を整理・分析し、再発防止策の検討や啓発活動を行う。

もしも医療機関や遺族から依頼があれば、院内調査とは別にセンターが独自の調査を実施する。

センターの業務を担う日本医療安全調査機構の田原克志・専務理事によると、25年9月末までの10年間に報告された医療事故は3533件。このうち3139件で院内調査が完了し、報告書が提出された。

 

提言と警鐘

また、センターによる調査は308件の依頼があり、その8割は遺族から。最も多い理由は「院内調査結果に納得できない」というものだった。

集積された調査報告を基に、センターはこれまでに「産科危機的出血に係る妊産婦死亡事例の分析」など、再発防止に向けた21件の提言を公表した。24年からは迅速な注意喚起が必要なものについて「警鐘レポート」という情報提供も始めた。

制度は医療安全向上に一定の役割を果たしてきた。しかし「全ての事故が適切に報告されていないのではないか」と指摘されるなど課題も多い。

400床以上のベッドがある大病院のうち、制度開始から24年末までの9年余りに複数回の報告実績があったのは331施設(45%)。一方で実績ゼロも273施設(37%)ある。事故かどうかの判断が医療機関側に委ねられていることが影響しているとみられる。

 

「知らない」6割

調査機構が11月に都内で開催したセミナーでもこの点への言及が相次いだ。医療事故で長男を亡くした経験を持つNPO法人架け橋理事長の豊田郁子・さんは「管理者である病院長の判断というところで意識や認識に差が生じる。判断をしっかりできる体制と教育をお願いしたい」と発言。

医療機関の立場で千葉県がんセンターの加藤厚・病院長も「判断のプロセスの標準化は必要だ。病院の管理者が医療安全をよく知っていることも条件になる」と述べた。

調査機構の宮田哲郎・常務理事は、過去5年間に自身または家族が入院や手術を経験した千人を対象としたアンケートで、制度を知らない人が6割に上ったことを紹介し「死亡事例を報告して再発防止に取り組んでいる施設は医療安全向上に熱心な施設と言える。制度を国民に周知し、その考え方を共有してもらうことが重要だ」と話した。

 

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