キャリア・学び

きらり臨床検査技師 [第21回]山田 景土さん(東邦大学医学部微生物・感染症学講座 助教)
目標と期限を設定し、やり遂げる気持ちを大切に

2025.09.25 07:00 会員限定記事を示すアイコン



東邦大学医学部微生物・感染症学講座助教の山田景土さんは、東京都内の病院で微生物検査室に配属されたことをきっかけに臨床検査の面白さに目覚めた。臨床検査技師1~2人で院内の微生物検査を担う体制の中、自ら研究テーマを見つけて追求。文部科学省や民間財団の研究助成金を獲得するまでになった。

「目標を決めたら、絶対にやり遂げる」というマインドの持ち主。同世代の臨床検査技師に負けたくないというモチベーションもあり、「認定臨床微生物検査技師(CMTCM)を最短期間(実務経験5年)で取得する」と目標を定めた。受験要件となっていた論文執筆などをこなし認定を取得。その後、大学院で博士号も取得し、東邦大学医療センター大森病院へ転職した。現在は東邦大学医学部で教育と研究に携わっている。

指導や助言をしてもらえる先輩が少ない環境下で、どのように研究や論文執筆を進めたのか。日常の検査業務に対応しながら、研究の実績をつくるコツなどについて話を聞いた。(MTJ編集部)



―臨床検査技師になったきっかけや、市中病院へ就職した経緯を教えてください。

勉強するのは嫌いではなかったので地元の進学校に入ったものの、将来については何のビジョンも持っていなかったです。高校3年生になって進路を考えた時、動物の生態学が面白そうだと思い、生物学を学べる大学を探しましたが、自分が選択していた科目で受験できたのが東邦大学理学部生物学科だけだったんです。入学後、大学の課程で取れる資格に臨床検査技師があったので、「せっかくだから取っておこう」と思いました。大学進学の時と同様、就職活動も動き出しが遅かったのですが、臨床検査技師の資格を生かせるところがいいと考えて、東京都保健医療公社豊島病院(現・東京都立豊島病院)に入職しました。

 

―大学病院のような研究環境がない施設で、どのように研究に取り組まれたのですか。

私が入職した豊島病院は臨床検査技師が20人弱で、2009年に新卒採用されたのは私1人でした。生化学、免疫、輸血、血液検査の業務を一通り覚えて対応するように求められ、当直勤務もありましたね。当時は大変な激務で、上司からも怒られる毎日が続き、仕事が本当につまらなくて…。最初は認定資格を取ろうとか、研究に打ち込もうなんてことは全く頭になかったです。

学生時代に恩師から「ボタン押しの検査技師にはなるなよ」と言われていたのですが、当時の自分は「結局、ボタン押しの技師になってしまっているな」と思い、悶々としていましたね。転機となったのは、入職1年半が過ぎた頃に、微生物検査室に異動になったことです。私も含めて計2人で微生物検査に対応することになったのですが、知識もなく最初は何をどうしたらよいのかも分からず苦難の日々でした。他施設の人に微生物検査の知識やスキルの学び方を相談したら、まず日本臨床検査同学院の二級臨床検査士(微生物学)を目指すのがいいと言われて。そこで初めて認定の資格があることを知ったんです。

 

学んだことが実務につながる

二級臨床検査士のために勉強を始めたら、それがすごく面白くて。それまで知らなかったことを知り、備えた知識が業務につながりました。当たり前ですが、培地を見て菌のことが分かるようなことはうれしくて。それから微生物検査の勉強会を探して、片っ端から参加するようになりました。

二級臨床検査士を取得した後は、「次は、CMTCMを最短で取る」という目標を設定しました。ただ、CMTCMの受験要件には当時論文3本の執筆などが含まれていました。大学病院に勤めている臨床検査技師であれば、複数人で共同研究して論文にまとめることが可能ですが、1〜2人で日常業務をこなしている微生物検査室でしたから共同研究はできません。それでも最短かつ一人で受験要件を満たすと決めました。それが研究に取り組む最初のきっかけですね。

 

―自身で目標を設定されると、その達成に向けて全力で取り組まれているという印象を持ちました。そのモチベーションの源は、何でしょうか。

初めて執筆した論文は、耐性菌を見つけて解析した結果をまとめたんですが、解析のためのプライマーを自分で買ったり、調理用寒天を使って電気泳動をしたりと、今振り返ってみると、ちょっと異常ですよね(笑)。何がそうさせたのかと言えば、研究をして論文にまとめていくことが本当に面白かったんだと思います。努力している感じはなく、楽しくて夢中になっていました(図1)。

 

図1 初めて論文化にした薬剤耐性菌のディスク拡散法による感受性結果
図1 初めて論文化にした薬剤耐性菌のディスク拡散法による感受性結果

 

東京工科大学の岡崎充宏先生が講師を務めた勉強会に参加して、その後の飲み会で隣の席に座り、ポケットに忍ばせていた論文の草稿をすっと出して、「先生、ちょっと見ていただけませんか?」とお願いしたこともありました。本当に失礼極まりない行動で、今思うと自分でも信じられないくらいです。

論文は投稿した後にコメントが付いて返却されるのですが、自分で対処できない内容があったので、それは東京医科歯科大学(現・東京科学大学)の齋藤良一先生に相談しにいきました。検査法の検討をしたいと考えた際には、信州大学の長野則之先生にご相談し、信州大学を2度訪問させていただきました。

岡崎先生、齋藤先生、長野先生は私に対して丁寧にアドバイスをしてくださり、大変影響を受けました。

2018年に東邦大学医療センター大森病院で人材の募集があり、応募して転職することになりました。大学病院にはさまざまな症例が集まりますし、菌株のストックも豊富ですので、それまでよりも研究のグレードをアップさせることができたと思います。4年ほど勤務した頃、縁あって、東邦大学医学部に入りました。現在は、創薬に関係する研究と医学部生に対する微生物学の教育に携わっています(図2、図3)。

 

図2 現在取り組んでいる研究の内容
図2 現在取り組んでいる研究の内容

 

図3 医学部生対象の講義では、菌のイラストを作成して活用
図3 医学部生対象の講義では、菌のイラストを作成して活用

 

目標と期限を決めよう

―臨床現場で研究に取り組む際に心がけていたことはありますか。また、若手の臨床検査技師にアドバイスをお願いします。

どれほど研究に夢中になっていても、臨床の現場では、「日常の検査業務を絶対におろそかにしない」ということを心がけていました。研究機関ではなく、医療機関で働いている臨床検査技師である限り、「患者ファースト」で仕事をするのは当然。また、研究に打ち込むことについて上司の了解を取っておくことも大切だと思います。

私の場合、長野先生、岡崎先生、齋藤先生との出会いが大きかったです。「あの人みたいになりたい」という目標ができると、どうしたらよいかを具体的に考えることができます。まず、日常の中で出会いを大切にしてほしいですね。

また、目標には、時間の期限を設けることも大切です。いつまでに達成すると決めると計画を立てることができ、途中で進捗を確認することもできます。時間の期限を設けたうえで、ゴールに向かって進んでいく。ゲームのような感覚で楽しみながら取り組めるといいですね。

続きを見るには会員登録
(無料)が必要です

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

MTJメールニュースの会員のみなさまへ

MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。

すでに会員の方はこちらからログイン