キャリア・学び

POCTの実践 [第1回]三好 雅士氏(徳島大学病院 医療技術部 臨床検査技術部門)
〈総論〉精度保証のカギ

2025.10.22 06:00 会員限定記事を示すアイコン

2023年からMTJで全18回にわたり連載された「POCTが変える臨床検査」、お楽しみいただけましたでしょうか?

POCT(Point of Care Testing)は被検者の傍らで即座に行う検査であり、日常診療はもとより、救急・災害・在宅医療などさまざまな現場で積極的に活用されています。簡便でありながら迅速に検査結果を得られ、診断・治療に利用できるそのシステムの有用性に疑いの余地はなく、注目度も高まっています。

そこで、各検査室でPOCTを活用していく上での注意点や課題を共有・解説する「POCTの実践」の連載企画がスタートします。第1回~第2回は総論ですが、第3回からは実際に施設内での円滑なPOCT運用体制を構築した成功事例を取り上げていきます。ぜひ、自施設におけるPOCTの実践につなげていただければ幸いです。

 

POCTに要求される精度保証

POCTガイドライン第5版では、POCTを「簡便な」検査と定義しています。いつでも・どこでも・誰でも精確な結果が得られるお手軽検査のような雰囲気ですが、即座に診療に反映されるからこそ、検査室で使用される分析機器と同等、あるいはそれ以上に、適切な精度保証()が要求されていると言えます。

 

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2018年に施行された検体検査の品質・精度の確保に係る医療法等の改正やISO 15189:2022への改訂では、POCTを含む検体検査における品質保証の重要性を明確に打ち出しています。改正医療法で示される具体的な基準に対応するため、内部精度管理試料の同梱やインターナルコントロールの充実など、各企業でも精度保証に関する取り組みが始まっています。また、ISO 15189:2022でもPOCTは重要な改訂ポイントの一つに位置付けられており、検査室がPOCTを管理する場合には、研修・品質保証プログラムなど、組織全体における検査室の活動の範囲、責任や権限を明確に規定することが要求されています。

 

ISO 15189:2022で重視するPOCT管理の概念

ISO 15189:2022の要求事項への対応は、多くの施設で悩みの種となっていることでしょうから、少し具体的に説明します。第1段階として、前述の通り、検査室がPOCTを運用・管理しているかどうかを文書で明確に規定する必要があります。さらにPOCTの実施者との合意事項として、検査室が支援するPOCTを使用する各部署との間でそれぞれの責務および権限を定め、伝達・共有しておくことを求めています。

次の段階として、検査室が各部署のPOCTについて維持・管理を担うのであれば、検査環境がその活動に適したものであるよう整備し、用いるPOCT対応機器・試薬および消耗品についても、検査室と同様の管理体制を構築する必要があります。さらに、内部精度管理の実施、外部精度管理への参加やPOCTを遂行する要員の研修プログラムの確立も検査結果の妥当性を確保するための重要なプロセスとなります。

すでにお気付きのことかと思いますが、これらは生化学検査や血液検査といった一般的な検査で要求されていることと同様の事項です。「POCTへの適用は難しい」という逃げ道はもはや通用しません。とはいえ、これらの検査とPOCTを同等に捉えることに限界を感じることもあるでしょう。要求事項を満たすためのプロセスは一様のものではありませんので、各部署の状況や検査の特性に応じた柔軟なアプローチが求められます。

現在のところ、POCTを検査室の管轄外(認定範囲外)としている施設が多く、ほとんどの検査室がその管理について準備段階であることがうかがえます。しかしながら、その精度保証の重要性と専門性から、近い将来、院内のPOCT機器を検査室の責任のもとで維持・管理していくことが望まれるのではないでしょうか。

 

精度保証、現実とのギャップ

さて、「検査室の責任で院内POCTを維持・管理する」と簡単に言いましたが、それを理想論と感じる方も多いことでしょう。現時点では、それほどまでに現実とのギャップがあります。実際、POCTの操作者・管理者の精度保証に対する認識が曖昧であったり、「数字が出れば大丈夫でしょ」といった誤った考え方が根強く残っていたりするのが現状です。これでは十分な管理体制を構築することなど、到底できるはずがありません。

さらにPOCTはその特性上、LISに接続されず各部署に野放しとなっている場合も多く、内部精度管理を含めた測定データの一元的な管理が困難です。こうした課題を解決するマネジメントシステムも開発されており、機器や試薬の管理だけでなく、測定者への研修や測定値の妥当性評価などを一元管理できる仕組みが整いつつあります。

限られたリソースで最大限の精度保証を実現するためには、院内全体のPOCTに関する精度管理・物品管理・保守管理などを包括的に捉えた体制が不可欠です。そしてそのカギを握るのは、POCコーディネーターやPOCT測定認定士を中心とした体系的な運用と継続的な教育訓練なのです。

 
 
※MTJ本紙 2025年6月21日号に掲載したものです

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