Voice of Lab. file 12 西脇 啓太(刈谷豊田総合病院臨床検査・病理技術科)
神経生理が“わかる”から“できる”へ——現場で学び続けられる環境を目指して

神経伝導検査や脳波検査、術中モニタリングなどの神経生理検査は、知識だけでなく「実際にできる」ことが求められる分野だと感じています。
私は現在、「“わかる”から“できる”へ」をテーマに、神経生理検査を中心とした若手教育や研究活動に取り組んでいます。大切にしているのは、実際に手を動かしながら学び、“できるようになるまで支える”ことです。
今回は、神経生理分野で取り組んでいる教育活動や研究、そして今後目指していきたい教育環境についてご紹介します。
私、こんなことしてます!
1.「教える」のではなく、「できるまで支える」
神経伝導検査(NCS)は、教科書で知識を学ぶだけではなかなか身につきません。実際に手を動かし、経験を積むことで理解が深まる検査だと感じています。得られた波形の背景を考え、自分なりに答えを導いていく。その過程にこそ、NCSの面白さがあります。
私自身、若手の頃に多くの先生方や先輩技師の皆さんと出会い、検査技術だけでなく、波形の考え方や患者さんとの向き合い方まで教えていただきました。その経験が、今の自分の土台になっています。
現在私が主催している「あいちNCS教室」は、毎回定員4名という少人数制の実習型研修会です。この教室で大切にしているのは、講師がデモンストレーションを見せるのではなく、実技の時間をしっかり確保し、参加者自身に実際に検査をしてもらうことです。うまくいかない場面も含め、その場で一緒に考え、直接フィードバックしていく——その繰り返しが、知識として「わかる」から、実際に「できる」ことへと変えていくと考えています。
NCSは、「見る」だけでは身につきません。実際に手を動かし、思うようにいかない経験を重ね、その理由を一緒に考える。その積み重ねの先に、検査への理解と自信が育っていきます。
この考え方は、院内での後輩指導でも変わりません。ただ検査を任せるだけでも、手技を見せるだけでもなく、一人ひとりが自信を持って検査に臨めるよう、できるようになるまで一緒に考え、成長を支えることを心掛けています。
私が目指しているのは、「教えること」ではなく、「できるようになるまで支える教育」です。
2.現場の「なぜ?」を、そのままにしない
教育と同じように、研究も現場から生まれるものだと考えています。
現在は、手根管症候群の運動障害を、より実際の病態に近い形で評価できないかという視点で研究に取り組んでいます。きっかけは、日々の検査の中で抱いた「従来の評価だけでは説明しきれない症例があるのではないか」という小さな疑問でした。
その疑問を出発点に新たな評価方法を検討し、得られた成果を学会で発表するとともに、国際誌『Journal of Clinical Neurophysiology』への論文掲載にもつながりました。
研究は、論文を書くことが目的ではありません。
現場で感じた疑問を客観的なデータとして示し、その成果を教育や臨床へ還元することに意味があると考えています。
現場で生まれた疑問が研究につながり、その研究成果が再び現場へ返ってくる。この循環を続けることが、神経生理検査の質を高め、より良い医療につながると信じています。
3.学べる環境を整えることも、役割の一つ
神経生理検査は、施設によって経験できる症例や検査手技に差が生じやすい分野です。
私自身、さまざまな施設の方と関わる中で、「学びたくても学べない」「相談できる人が近くにいない」と感じている若手技師が少なくないことを実感してきました。
そうした課題を少しでも解決したいという思いから、現在は愛知県臨床検査技師会生理検査研究班の部門長として、研究会や研修会の企画・運営に携わっています。「翌日から現場で実践できる内容」を意識し、質問しやすく参加しやすい雰囲気づくりを心がけています。
また、AiCCLS(愛知県臨床検査標準化協議会)では、脳波検査の手引書作成に委員長として携わり、「読んで理解する」だけでなく、「実際に検査ができるようになること」を目指して、電極装着や記録条件など実務に直結する内容をまとめました。
若手技師が安心して学び続けられる環境は、一人の力ではつくることができません。施設の垣根を越えて学び合い、支え合える環境を育てていくことも、自分の大切な役割の一つです。
続きを見るには会員登録
(無料)が必要です
会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。
MTJメールニュースの会員のみなさまへ
MTJメールニュースは、WEBサイト「MTJ ONE」にリニューアルいたしました。
お手数ですが、下記より再度、新規会員登録をお願いします。

西脇 啓太
神経伝導検査、脳波検査、術中モニタリングなど神経生理検査を専門とする。愛知県臨床検査技師会生理検査研究班部門長。若手技師向け勉強会「あいちNCS教室」の運営や神経生理領域の教育活動に取り組むほか、手根管症候群の電気生理学的評価に関する研究を進めている。「“わかる”から“できる”へ」をテーマに、教育・研究・地域活動を通じた人材育成を目指している。







