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Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 血液05
検査室へのAI導入に何が必要か——オートメーション化の歴史から考える

2026.10.07 06:00 会員限定記事を示すアイコン

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AI導入とオートメーション導入に共通すること

人工知能(AI)の発展が進むなか、「AIで検査室はどこまで効率化できるのか」が話題になる。

臨床検査の歴史を振り返ると、AI導入とオートメーション導入には共通する点がある。どちらも、新しい技術を置くだけでは十分に機能せず、その技術が働けるように工程や周辺の情報・条件を整える必要がある。

臨床検査では、自動分析装置や搬送システムの導入に伴い、検体の受付、前処理、搬送、測定、再検、結果報告までの流れを見直し、識別方法、測定条件、装置間の接続、異常時の対応を整理してきた。つまり、装置を導入する前に「装置が働ける環境」をつくったのである。

Khullarは、AIによる個々の業務の自動化と、職業そのものの消失は同じではないと論じている1)。臨床検査でも、AIが一部の定型業務を担っても、結果の解釈、例外処理、他職種との連携など、人が担う役割は残る。では、AIが働ける検査室には何が必要なのだろうか。

 

血液検査のエキスパートレビュー

1.オートメーション導入では、何を整えたのか

検査室のオートメーション化では、人によって異なっていた作業を工程に分け、共通の条件へ置き換えることが必要だった。Sasakiらは、日本で検査室のシステム化・自動化が1981年に始まり、その普及過程でラック形状・寸法などの標準化不足が課題であったことを報告している2)。現在のTotal Laboratory Automation(TLA)は、分析前・分析後を含む検査プロセス全体の統合へ広がっている3)。

AI導入でも、目的の明確化、現状の可視化、作業や条件の標準化という基本的な流れは共通している。一方、AIでは、作業工程に加えて、AIが利用する情報や、人がどの情報を見て何を根拠に判断し、どの条件で次の行動へ進むのかという判断のルール・プロセスまで整理する必要がある(表)。

表 AI導入とオートメーション導入の比較
  AI導入

オートメーション導入

共通する考え方

導入目的 どの工程の何をAIに支援させるか

どの作業・工程を装置化するか

導入目的と対象を明確にする

可視化 作業・情報の流れと判断する場面

検体・作業・装置の流れ

現状の流れと人の役割を明らかにする

標準化 作業・条件に加え、入力情報・判断条件・分岐

作業手順・測定条件・再検条件など

技術が扱えるよう手順・条件をそろえる

情報・システム AIが利用できる形にデータを整理

装置・搬送・LISを接続

情報を整理し、連携できる形にする

人が担う部分 不確実な出力や例外を確認・判断

検体・装置異常、測定不能への対応

技術に任せる範囲と、人が確認・判断する場面を明確にする

品質保証 性能確認、データ品質、継続監視、更新後の再確認

精度管理、保守、工程の監視

継続して確認・改善する

〔筆者作成〕

 

2.AI導入では「情報」と「判断プロセス」まで整える

AI導入では、現状の作業工程と情報の流れを可視化し、手順や条件を整理・標準化する。そのうえで、どの情報を使い、何を根拠に判断し、どの条件で対応を分け、どの行動につなげるのかを整理する。用語、入力項目、データ形式、判断に使う情報、優先順位、分岐条件などを可能な範囲で明確にする。

こうした作業工程や判断ルールを標準化するとき、すべてを同じ答えに固定する必要はない。臨床検査には境界例や例外がある。「通常はどうするか」だけでなく、「判断できないとき」「前提条件から外れたとき」「人が確認すべきとき」も整理しておく。どこまでをシステムやAIに任せ、どの場面で人が確認・判断するのかを明確にすることが重要である。

さらに、システムやAIで判断を支援するには、必要な情報自体も整理されている必要がある。紙の記録をPDF化したり、自由記載をそのまま電子化したりするだけでは、情報を検索・集計し、再利用することは難しい。定型化できる内容は項目や選択肢として整理し、必要な文脈や例外は自由記載として残す。

Padoanらは、検査値だけでなく、その生成や解釈に関わる属性情報や周辺情報の整理・標準化がAI活用にもつながると指摘している4)。システム化の前にExcelなどを利用して入力項目や選択肢をテスト的に運用し、必要な情報や例外を表現できるかを確認する方法も考えられる。

 

検査分野を超えて共通するAI導入の考え方

血液検査を例に、この考え方を当てはめてみる。①血球計数検査では、CBCの数値や装置フラグなどを手がかりに、再検するのか、②塗抹標本を作製して血液像を確認するのか、③どこまで結果を報告するのか——を判断している。
この一連の判断を「拾う→確かめる→分ける→選ぶ→つなぐ」の5工程として整理すると、定型化できる部分と人による判断が必要な場面を捉えやすくなる。AIが血球形態分類や異常細胞スクリーニングを支援する場合も、工程と役割の整理が重要になる。

さらに、この考え方は血液分野に限らない。生化学、微生物、輸血、病理、生理検査など分野が異なっても、作業工程を可視化し、必要な情報や判断ルールを整理し、自動化する部分と人が確認・判断する部分を明確にする考え方は共通する。臨床検査へのAI実装では、導入施設での性能確認、想定された使用目的に沿った運用、性能の継続的な監視、IT基盤の整備などが重要とされている5)。

マニュアル検査からオートメーションへ移行したとき、われわれは作業工程を可視化・標準化し、装置が働ける環境を整えてきた。AI導入でも、この基本的な考え方は変わらない。新しいAIを探す前に、①どの工程の何を支援させるのか、②必要な情報や判断ルールが整理されているか、③自動処理が適さない場合に人が確認・判断する仕組みがあるか——を見直す。そこが、AI活用の出発点になると考えられる。

 

 

引用文献

1)Khullar D : Artificial intelligence and the future of the clinical workforce. N Engl J Med, 395 : 1041-1043, 2026

2)Sasaki M, et al : Total laboratory automation in Japan. Past, present, and the future. Clin Chim Acta, 278 : 217-227, 1998

3)Plebani M : Total laboratory automation: fit for its intended purposes? Clin Chem Lab Med, 64 : 22-26, 2026

4)Padoan A, et al : Data flow in clinical laboratories: could metadata and peridata bridge the gap to new AI-based applications? Clin Chem Lab Med, 63 : 684-691, 2025

5)Yang HS, et al : Implementation of AI systems in the clinical laboratory: insights from an expert survey and recommendations for best practice. Clin Chem Lab Med, 64 : 1513-1526, 2026

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