変わり続ける検査の現場 #34 奈良県臨床検査技師会
動画で心エコー計測を評価 外部精度調査の試み、3年目に

奈良県臨床検査技師会が、心エコー動画を使った外部精度管理調査を2024年度から実施している。クラウドからダウンロードした心エコーのDICOM動画を無料のDICOMビューワーで確認し、心腔径や壁厚など6項目を計測する内容で、計測データに基づき、AからDまでの4段階で評価する。調査後には結果解説の勉強会も開く。奈臨技では、現在の実施方法を検証しながら、参加施設の拡大を図っていく考えだ。
2023年度のパイロット実施を経て、2024年度から評価対象問題に組み入れた。正常例と肥大心の2問を設定し、検査日や患者属性などをマスキングした上で、胸骨左縁長軸断面のDICOM形式動画をクラウド上に保存。参加施設は、エコー動画とDICOMビューワーを病院のネットワークとは隔離されたパソコンにダウンロードして心腔計測を行う。
計測するのは、左室拡張末期径、左室収縮末期径、心室中隔壁厚、左室後壁厚、大動脈径、左房径の6項目。計測値は小数点第1位までとした。実際の検査では他にも計測項目があるが、ビューワーソフトの性能などを踏まえ、臨床的に重要な6項目に絞った。
平均値を目標値にして評価
データの評価は、生化学検査を参考に、平均値を目標値にする方式を採用した。集計データに対して3SD除去法を2回実施した上で、平均値やSD、CVなどを算出。±1SD以内をA判定、±2SD以内をB判定、±3SD以内をC判定、±3SDを外れた場合をD判定とした。全6項目がA判定であれば総合評価をAとし、1つでもB判定があればB評価とする。最も低い項目別判定を総合評価に反映させる方式とした。
AまたはB評価であれば「基準を満たしている」ことになり、C評価以下は改善が必要との判定となる。
参加施設は、2024年度が23施設、2025年度が25施設で、従前から行っている心エコー画像サーベイの参加施設の9割が回答した。
2025年度調査の結果、A評価とB評価を合わせた割合は正常例が計84%、肥大心が計92%となった。2024年度調査の計91%、計74%に比べ、肥大心で割合が改善し、実施の効果が伺えている(表)。調査後は、奈臨技主催のサーベイ検討会を開催し、評価結果に基づき、計測の時相や計測位置の確認などを促している。
バーチャルスライドから発案
クラウド上の動画とDICOMビューワーを使う方式は、奈臨技の精度管理委員会で心エコーを担当する松谷勇人氏(天理よろづ相談所病院)が発案した。病理部門などの外部精度管理調査で使われるバーチャルスライドからヒントを得た。
日本心エコー図学会の診断・計測精度管理の手引では、エコー画像を配布し、実際に測定した計測値を集計・評価する外部精度管理の方式が望ましいとしている。その一方で、配布画像をエコー装置に取り込む方式は対応できる施設が限られ、「広く実施するのは困難」と実施上の限界にも言及している。クラウド上の動画とDICOMビューワーを活用すれば、手引の推奨手法を安価に実施できる。
松谷氏は、「心エコーの教育が行き届いていなかったり、担当技師が1人しかいなかったりする小規模な検査室では、計測位置の確認や目合わせが難しい。そうした検査室に検証の機会を届けられる」と調査の意義を話す。一方で、計測データを平均値で評価する現在の方法が妥当か、より使いやすいビューワーソフトがないかなど、実施上の検討課題があることも指摘する。「現在の形が完成形とは考えていない。これから取り組んでいく中で完成度を上げていきたい」。
参加拡大を呼びかけ
今後は、調査方法の検証を続けながら参加施設の拡大を図りたいと考えており、関心のある臨床検査技師会にはノウハウも提供したいとしている。将来的には、全国展開も視野に入れる。
評価対象としての実施は2026年度で3年目となる。2026年度も6月に調査を実施し、9月に各参加施設へ評価結果を送る予定だ。
※『THE MEDICAL & TEST JOURNAL』2026年9月1日号に掲載された記事の再掲です。
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