変わり続ける検査の現場 #25 小牧市民病院
外来での使用実態を把握、血糖測定器を一元管理 装置点検「提出・交換方式」に

小牧市民病院(愛知県小牧市、520床)は、院内で使用する全ての簡易血糖測定器を臨床検査科で一元管理する体制を整えている。改正医療法を受け、外来部門で把握されていなかった配置状況や使用実態を調査し、精度管理や定期点検などのルールを検査科主導で再構築。POCTへの看護師教育の強化や、装置点検での臨床検査技師の業務負担軽減も取り入れ、現場での運用が軌道に乗り始めている。
同病院では以前から、病棟で使用する簡易血糖測定器は臨床検査科が管理し、POCTとしての精度管理を実施してきた。一方で、外来部門で使用される機器については導入時期や設置先、使用頻度などが検査科に共有されていなかった。臨床検査科の井上誠也氏は「外来の血糖測定器は、誰が、どこで、どれだけ使っているのか見えない状態だった」と振り返る。
こうした状況に加え、2018年施行の改正医療法でPOCTの精度管理が求められたことを受け、検査科は外来での使用実態の把握が必要と判断。2022年、血糖測定の可能性がある外来11部門を対象にアンケート調査を行った。
アンケートからは外来11部門のうち、7部門で血糖測定器が設置されていることを把握。1日の測定頻度は0~1回程度が多数で、使用が限定的であることを確認したが、7部門全てで継続的な配置を求めるニーズがあった。その後、検査科では使用実態を踏まえ、外来での血糖測定器の管理体制を再検討。外来看護師長とも協議の上、設置部門を6部門に変更し、使用頻度が最も少ない部門は必要時に他部門から借用する方式に改めた。
当時、外来で看護師が使用していた血糖測定器は患者用のSMBGだったが、これを病棟と同様、医療職が使用する機種に変更。検査科で全ての血糖測定器をPOCT装置として一元管理する体制づくりに着手した(図1、2)。


外来での精度管理は「週1回1濃度」
外来での血糖測定器の運用変更で課題となったのは精度管理や定期点検、故障時の対応、使用する看護師らの教育などだった。
外来部門は病棟に比べると測定頻度が低いため、精度管理は「週1回・1濃度(中濃度域)」を看護師が実施する方式を導入。実施期限も設定し、7日間超過した場合はアラートを発生させることで実施漏れを防ぐ仕組みを取り入れた。井上氏は、「管理試料での精度管理が外来でも確実に実施できるようになり、院内全体として血糖値の精度保証が強化された」と語る。
機器点検は提出・交換方式「回収BOX」を配置
院内に導入されている簡易血糖測定器は病棟35台、外来6台、予備機14台の計55台。これらを一元管理する延長線上で改善されたルールが臨床検査技師による定期点検の方法だ。
従来、病棟では臨床検査技師が月1回、各病棟を回って、精度管理(低・中・高濃度域)や、外装・センサーの清掃を実施してきた。ただ、全12病棟を巡回するための業務負担は大きく、この業務を外来まで広げたことで、巡回に半日以上かかるなど負担が増えてしまったことが課題となっていた。
検査科ではこうした課題を解決するため、一元管理の開始から2年後に臨床検査技師が病棟や外来現場に出向く運用を変更。各測定器に点検日を指定し、看護助手らに検査科に提出してもらい、点検済み機器と交換することでスムーズに再配置できるようにした。検査室入り口には「回収BOX」を設置し、病棟名や部門名、機器番号を記録してもらう仕組みに見直した(写真)。

井上氏は、「点検に伴う臨床検査技師の移動負担は大幅に軽減された。また交換時に必要な情報を記載してもらうことで、院内全体の血糖測定器を一元管理する環境がさらに進んだ」と強調する。
故障などに備え、交換用を含めて点検済み機器の予備器を14台まで拡充した。加えて、検査科で血糖測定器などのトラブル発生時に対応できる人材も2人から6人まで育成。人材育成は現場でのOJT形式で行い、実際の現場を見ながら実践的なスキルが身に付くよう継続的に取り組んだ。POCT担当者の専用窓口も設置した。
患者が使うSMBGとの「違い」の理解を
院内全ての血糖測定器を一元管理するに当たり、外来看護師の教育研修にも重点を置いたという。特に意識したのは、患者自身が使用するSMBGと、医療現場で即時診療に用いるPOCTとでは、精度管理を含めた使用方法が異なるといった点への理解だ。井上氏は、「SMBGとは測定原理は同じでも、POCTでは精度要件や操作管理の考え方が異なる。看護師には“簡便に測れる機器”という感覚の方も多かったが、診断に直結する以上、検査室と同等レベルの精度保証が必須であることを理解していただくことが重要だった」と振り返る。
看護師への教育研修では、精度管理試料の取り扱いや、測定前段階での誤差要因などを分かりやすく解説。機器エラーやトラブル発生時の対応なども取り上げている。
幅広いPOCTの精度保証体制を整備へ
検査科による一元管理の運用体制は軌道に乗りつつあるが、課題も残っている。特に外来部門の血糖測定器は測定頻度が低いため、消耗品や精度管理試料は「使い切る前に期限切れになるケースもある」(井上氏)。このため、外来に管理を任せている消耗品や試料も検査科で管理することを検討している。
POCTに関する看護師らへのeラーニングシステムの整備や、多職種でPOCTの運用を議論するPOCT委員会の設置も構想段階にある。将来的には血糖測定器に限らず、血液ガス分析装置などを含め、幅広いPOCTの精度保証レベルを底上げする体制整備も進める方針だ。
MTJ本紙 2026年1月1日号に掲載したものです。
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