POCTの実践 [第3回]後藤 慎一氏(春日井市民病院 経営戦略室)
〈事例1〉糖尿病チームで取り組んだPOCT血糖機器の導入と運用管理

連載第1回、第2回では、POCTを実践する上で重要な「精度保証」と「体制整備」について解説しました。第3回以降は、それらが臨床現場でどのように運用されているかについて、具体的な事例と共に説明します。今回は、検査室外で実施される血糖測定の運用事例を紹介します。
糖尿病チームで取り組んだPOCT対応血糖機器の導入
春日井市民病院では、表に示すように1997年から一部病棟においてPOCT対応血糖機器(以下、POCT血糖)を用いた血糖測定が行われていました。しかし、コントロール測定による精度管理が行われておらず、また、POCT血糖とSMBGが混在した状態で測定が行われていたため、その結果を基にインスリン調整を行うことに不安を感じる医師もいました。
このような状況を危惧した当時の糖尿病・内分泌内科部長の提案により、2007年に病院全体へPOCT血糖を導入することが決定されました。機器の選定と運用構築に、糖尿病療養指導に関わる臨床検査技師が指名されましたが、これらの事項を臨床検査技師のみで決定することはできません。糖尿病療養指導チームから選出した糖尿病看護認定看護師、薬剤師、医師とともに運用構築チームを構成し、導入時に綿密な検討を重ねました。
血糖測定は、病棟と外来で役割が異なります。外来では測定と結果報告にとどまりますが、病棟では測定結果に基づいてインスリン注射を実施します。また、低血糖時には再検査も求められるため、運用全体の構築が必要でした。糖尿病チームで各職種からの意見を集約し、実際の運用体制を構築しました。

病院全体で取り組む精度管理
病院全体でPOCT血糖を導入する以前は、看護師に精度管理の意識はほとんどありませんでした。導入する機器では、1日1回の校正とコントロール測定(精度管理)が必要であり、運用構築チームでは「現場の看護師が校正とコントロール測定を行い、その確認を臨床検査技師が巡視ラウンドで実施する」体制としました。そのため、看護師や研修医、臨床工学技士を対象に、精度管理の必要性を理解してもらうための“研修会”を開催しました。集合研修や個別研修を繰り返し行い、「精度管理の実施が検査の質の保証につながる」ことを訴えました。導入当初は、看護師の中に校正やコントロール精度管理の実施に抵抗を感じる声もありましたが、数年の運用を経て、そうした声は聞かれなくなりました。
2011年には、POCT血糖と病院情報システムの接続を試みました。これは、測定結果が電子カルテで閲覧できるようになるだけでなく、校正・コントロール結果や消耗品の交換期限をLIS上で管理できる仕組みです。POCT血糖から送信する各種データの受信先を変更することで実現可能となりました。これにより、それまで臨床検査技師が毎週の巡視ラウンドで確認していた機器の使用状況や消耗品の交換状況などを、机上で監視できるようになり、業務効率が大きく向上しました。
継続的な研修による品質保証
表にあるように、主な測定者は看護師、医師(研修医)、臨床工学技士です。特に看護師や研修医は毎年入れ替わるため、継続的な教育訓練が課題です。当院では、新人看護師や研修医の入職時研修に臨床検査技師が関わり、実機を用いた操作トレーニングや、POCT血糖とSMBGの違いについての研修を実施しています。また、病棟や外来でのカンファレンスにも臨床検査技師が出向き、必要に応じて研修会を開催しています。
写真は、機器更新時に行われた教育研修の様子です。12年ぶりにPOCT血糖の機器更新が行われ、各部署の代表者は検査室作成の簡易マニュアルを基に、機器の特徴、測定手順、測定範囲、異常値(高値・低値)の表示方法、システムへの転送方法などを研修しました。これにより、検査前・中・後の各プロセスに関する知識を学び、品質保証の理解を深めることができました。
運用のキーマンはPOCコーディネーター
当院における血糖測定は、不特定多数の医療従事者が関わるため、正確な血糖測定には精度管理と教育訓練が不可欠です。日々の精度管理監視、計画的な研修立案、現場ラウンドによる問題点の抽出は、POCコーディネーターが担う役割です。
当院には、日本医療検査科学会の認定POCコーディネーターが2人在籍し、日々活躍しています。今後も、POCTの品質保証において中心的な役割を果たすことが期待されます。
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