キャリア・学び

松子の「レンズの向こう、白衣のとなり」 #02
ちょっと変? 検査技師の性(さが)

2025.11.07 06:00

新人の頃、初めて尿沈渣を担当した日のことを今も鮮明に覚えています。

混濁した尿を前に、緊張しながら顕微鏡をのぞいた瞬間、視野いっぱいに広がる白血球。「これが教科書で見た像か」——年月を重ねても、あのときの興奮は不思議と色褪せません。

私たち検査技師は、毎日当たり前のように血液や尿、喀痰、膿、皮膚片と向き合っています。一般の人からすれば“汚いもの”でも、私たちにとっては診断の糸口が詰まったかけがえのない情報。時に「どうしてそんなに楽しそうなの?」と聞かれることもありますが——これはきっと、検査技師なら誰もがわかる感覚でしょう。

 

検査技師がひそかに興奮する3つのシーン

1.汚い検体ほど、ワクワクする

混濁した尿や膿性部分が多い喀痰、濃い黄色に染まった排膿液を受け取るとき、思わず心が動きませんか。「これは何か出るぞ…!」と。

 ・尿沈渣で白血球がびっしり並んでいる像に出会ったとき
 ・好中球にパクパクと貪食されている菌を見つけたとき

何年キャリアを積んでもなお、この瞬間の高揚感は格別です。「いるはずだ」と期待しながら観察するからこそ、インフルエンザ菌のような小さな細菌も見逃さない——あの集中力が発揮されるのだと思います。

 

2.気味悪さと、美しさの狭間で

皮膚検査や寄生虫検査に携わるときに走る、あの独特の「ぞわっ」とする感覚。でも同時に、顕微鏡を通して見える形態に見入ってしまう自分がいます。

各部が驚くほど精密に形づくられたヒゼンダニ
各部が驚くほど精密に形づくられたヒゼンダニ


“気持ち悪い”はずのものに、なぜか目を離せなくなる。断片しか採取できなかった検体を前に、「これはあの部位では?」と推測し、確信に変わるあの静かな達成感もまた、検査技師ならではのものだと思います。

 

3.教科書が現場で甦る瞬間

学生時代、顕微鏡写真でしか知らなかった淋菌。初めて実物を観察し、好中球に貪食される像を自分の目で確かめたときの感動——皆さんにもきっと経験があるのではないでしょうか。

好中球に見事に貪食されている淋菌
好中球に見事に貪食されている淋菌


顕微鏡越しの視野のなかに教科書と同じ像が現れるとき、心の中で小さくガッツポーズする。知識と実体験がぴたりと結びつくあの瞬間は、検査技師ならではの喜びです。

 

変わり者かもしれない。でも…

一般の人には理解されにくい“楽しみ”や“ワクワク”を抱えて働く私たち。それは決して“風変りな人”というわけではなく、診断や治療に直結する情報を引き出すための強みです。

顕微鏡の先に広がる小さな世界を丁寧に観察し、そこから確かなデータを導き出す。その営みこそが、私たち検査技師の誇りであり、仕事を続ける理由なのだと思います。

松沢 京子