キャリア・学び

AI×循環器検査 AI 解析の臨床応用とマネジメント #5
AI時代の心エコー自動計測——使いこなすためのポイントと注意点

2026.10.28 06:00 会員限定記事を示すアイコン

はじめに

経胸壁心エコー図検査(TTE)は、薄暗い部屋で患者さんと二人きり、限られた時間の中で「やり直しのきかない」判断を迫られる孤独な検査です。診断に足る画像を描出し、必要な項目を計測することが、私たちソノグラファーの基本的な役割となります。

近年は、構造的心疾患に対する精密検査、新たな治療薬の適応判断や薬効評価など、TTEの果たす役割と臨床的な重要性は以前よりも格段に増しています。そのようなTTEにおいて、「診断や治療に直結する重要な所見の見落としがないか」「限られた検査時間内で多くの項目を漏れなく正確に計測できているか」といった不安は、経験年数を問わず、多くのソノグラファーが共通して抱えるプレッシャーの一つではないでしょうか。

こうした私たちの不安に対し、近年のAIや自動計測機能は、単なる自動化を超えて私たちに寄り添い、ミスを防ぐ「最高のパートナー」としての役割が期待されています。本稿では、TTEで自動計測機能を活用する際のポイントや注意点について解説します。

 

自動計測の精度を左右する画像取得と結果確認

計測を行うにあたり最も大事なことは、①断層像では適正断面を描出し、心筋や血管などの組織境界を明瞭にすること、②ドプラ法では血流方向とドプラビームの入射角を意識し、適切な画像を描出すること——です。AIや自動計測機能がどんなに優れていても、これらの撮像条件が満たされなければ、ソノグラファーの意図した計測値を得ることは困難です。

また、近年の自動計測機能はノイズを自動で識別・除外する性能が向上していますが、誤トレースを完全に排除できるわけではありません。そのため、適正な画像を描出できたとしても計測結果を鵜呑みにせず、必ず計測ポイントやトレースラインなどを確認する必要があります。この“どのような断面で、どこをどのように計測するか”は、手動計測でも自動計測であってもガイドラインに沿って行うことが基本です1,2)。

 

1.断層像計測——適正断面が自動計測の前提

ソノグラファーの目視で計測部位の判断に迷うような断層像では、どんなに優れたAIや自動計測機能であっても適正な計測はできません。

例えば、傍胸骨長軸断面で左室内腔を計測する場合には、乳頭筋や腱索が描出されていると、それらを内膜境界面と誤認識して計測されることがあります。そのような場合、自動計測後に計測ポイントを確認し、ソノグラファーによって適正な位置に修正する必要があります。

また、装置やアプリケーションによっては拡張期/収縮期の時相を自動認識し、それぞれの心腔計測までフルオートでできるものもあります。このような機能を活用することで、検査時間の短縮につながります(動画1)。

 

2.ドプラ計測——心拍の選択、入射角、設定感度がポイント

ドプラ計測における自動計測の最大の利点は、複数波形の自動認識と平均化です。

特に、心房細動症例では自動計測が有用です。手動計測の場合、心房細動症例のドプラ計測では、5心拍以上の平均値を用いることが推奨されています1)。しかし、この方法を用いると臨床現場では計測に時間がかかってしまうため、代表心拍やindex beat*が代用的に用いられています3)。

動画2および動画3に、心房細動例における左室流出路血流のVTI(velocity time integral)、三尖弁逆流波形をそれぞれ自動計測した例を示します。いずれも一部修正を行っていますが、瞬時に波形の認識・計測が行われ、最大血流速度や平均値が算出されます。このように、心房細動の症例において自動計測を活用すれば、手動計測に比べ、ガイドラインに沿った計測を短時間で行うことができ、再現性の高いデータが得られます。

 


ただし、その前提となるのは適切な画像の描出です。ドプラ計測では、血流方向とドプラビームの入射角に注意する必要があります。血流方向とドプラビームの入射角は20°以下であれば、血流速度の測定誤差は6%以下とされ、無視できる範囲といわれています4)。

もう一つ注意したいのが、自動計測の設定感度です。髙比良らによると、自動計測の設定感度によって計測値は変わり、手動計測に比べ、低感度では高値傾向、高感度では信号密度の高い内側のみをトレースするため低値傾向となりうることが示唆されています5)。この特性を理解し、適切なエンベロープが描画されるように感度の調整が必要となります。

図は、経皮的僧帽弁接合不全修復術(TEER)後のフォローアップ時の僧帽弁圧較差を計測した例です。

図A R波以降の収縮期のノイズを含めてトレースされている
A R波以降の収縮期のノイズを含めてトレースされている
図B 拡張期の時相でトレースすると、正しい圧較差が計測できる(手動計測)
B 拡張期の時相でトレースすると、正しい圧較差が計測できる(手動計測)

図 TEER後のフォローアップ時の僧帽弁圧較差〔筆者作成〕


自動計測のトレース結果(図A)は、一見すると良好なトレース結果と思われるかもしれませんが、選択された心拍ではR波以降の収縮期のノイズを含めてトレースされています。左室流入波形は、拡張期のみに認められる血流波形です。本来であれば、手動計測(図B)のように拡張期の時相でトレースをすることが、正しい圧較差の計測となります。このように適正な画像調整を行い、一見すると正しく計測されているように見えても、心周期なども考慮して計測結果に矛盾がないかをソノグラファー自身の目で確認することが重要です。

 

おわりに

AIや自動計測機能は万能な「魔法」ではありませんが、上手に付き合えば「最高のパートナー」になります。画像取得時には超音波検査の基本原理を忘れず、自動計測が出力した結果をガイドラインという確かな尺度とソノグラファー自身の目で確認することが必要です。

最終的に計測結果をレポートに記載できるかの判断は私たちソノグラファーに委ねられています。日々進化するAIや自動計測機能を適切にマネジメントし、臨床現場での安全性と効率性を両立させることが、これからのTTEを支える私たちの使命と考えます。

 

*:連続3心拍で、最後の心拍と1心拍前とのRR間隔(RR1)と、1心拍前と2心拍前とのRR間隔(RR2)の比率がほぼ等しい(RR1/RR2≒1)場合の最後の心拍

 

 

引用文献

1)Lang RM, et al : Recommendations for cardiac chamber quantification by echocardiography in adults: an update from the American Society of Echocardiography and the European Association of Cardiovascular Imaging. J Am Soc Echocardiogr, 28 : 1-39.e14, 2015

2)日本心エコー図学会ソノグラファー委員会・編 : 心エコー図の診断・計測精度管理の手引き.2023(https://www.jse.gr.jp/contents/guideline/data/guideline_seido2023_v4.pdf,アクセス日:2026年8月2日)

3)Suzuki S, et al : Ventricular contractility in atrial fibrillation is predictable by mechanical restitution and potentiation. Am J Physiol, 275 : H1513-H1519, 1998

4)種村正,他・編 : 心臓超音波テキスト 第3版.医歯薬出版,p38,2021

5)髙比良直,他 : 経胸壁心エコー図検査における断層法とドプラ法の自動計測精度の検討.超音波検査技術,47 : 479-489,2022

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編集|松林 正人(三重ハートセンター臨床検査科 技師長)