キャリア・学び

Voice of Lab. file 05 宮内 雅哉(りんくう総合医療センター病理検査科
病理・細胞診の「なぜ?」を研究へ——臨床の現場から生まれる探究心

2026.03.27 06:00 会員限定記事を示すアイコン



病理・細胞診の現場で日々向き合う細胞。その一つひとつに抱いた「なぜ?」という疑問が、私を研究の道へと導きました。臨床で働きながら大学院へ進学し、研究の基礎から学び直した経験は、現場を見る視点を大きく変えました。小さな違和感を研究へとつなげ、臨床へ還元する——その歩みとこれからの展望をお伝えします。


 

私、こんなことしてます!

1.臨床で芽生えた「なぜ?」が研究の出発点に

学生時代から病理・細胞診断学という分野に強い関心を抱き、熱心に学んできました。就職後、希望する病理検査室に配属されたときは大きな喜びを感じたものの、実際の病理検査業務は想像以上に手作業が多く、熟練を要する工程も多い非常にハードな現場でした。

病理検査室で働くうえで欠かせない細胞検査士の資格も、業務後や休日の時間を使って勉強を重ね、何とか取得することができました。

資格取得後、業務にも徐々に慣れ、これまで“作業”としてこなしていた工程を学問的な視点から見直す余裕が生まれました。すると、日々扱っている一つひとつの細胞や染色法が、驚くほど精緻な科学的理論の上に成り立っていることに気づきました。同時に、未解明の領域がいかに多いかも知りました。なぜ特定の物質が染まるのかを明確に説明できない染色法、発生機序が完全には解明されていない腫瘍——学べば学ぶほど「なぜ?」は増えていき、その先に広がる未知の世界に強く惹かれるようになりました。

しかし当時の私は、その疑問を解き明かす術を持っていませんでした。悶々とした思いを抱えていた頃、大学時代にお世話になった先生とお話しする機会をいただき、大学院という道を勧めていただきました。

臨床での仕事が好きで、地方の市民病院規模で働く私には研究は無縁の世界だと思っていました。しかし、社会人として働きながら学べるカリキュラムがあると知り、「自分にもできるかもしれない」と思い、すぐに上司へ相談し、大学院への進学を決意しました。

 

2.社会人大学院で得た研究の方法と手応え

進学した関西医療大学大学院の学位記授与式
進学した関西医療大学大学院の学位記授与式

大学院では、「研究とは何か」という基礎から学びました。特に印象的だったのは、結果に至るまでのプロセスを自ら考えることの重要性です。

同時に、そのプロセスが想像以上に長く、地道な積み重ねであることも痛感しました。社会人学生として時間的制約がある中、思うように進まない焦りを感じることもありました。

それでも先生方の助言を受けながら試行錯誤を重ねるうちに、次第に研究の面白さを実感できるようになりました。自ら構築したプロセスが形となり、思い描いた通りの結果が得られた瞬間の充実感は、これまでに味わったことのない大きなものでした。

さらに、予想外の結果から新たな疑問が生まれ、それを解決するためにまた調べ、考え、実験を重ねる。この循環こそが研究の醍醐味であると感じました。

自らの研究を学会で発表した際には優秀演題賞をいただくことができました。臨床で働きながらの研究に不安もありましたが、その評価を通して、努力が確かに実を結ぶこと、そして臨床に身を置きながらでも研究者として成果を出せることを実感しました。

 

3.研究と教育で臨床へ還元し、次世代へつなぐ

シンポジウムで講演する筆者
学会のシンポジウムに登壇する筆者

修士課程を修了した現在、大阪府臨床検査技師会病理細胞診部門の学術部や大学の非常勤講師として活動する機会をいただき、これまで培ってきた知識や経験を臨床検査技師の皆さんに還元できる場が広がっています。

今後も研究と教育に積極的に取り組み、日常業務の中で生まれる小さな疑問を研究として形にし、臨床現場へ還元できる成果へとつなげていきたいと考えています。

また、社会人として学び続ける姿勢を示すことで、後輩や若い技師の皆さんが研究や教育に興味を持つきっかけをつくり、臨床検査技師としての新たなキャリアの可能性を広げる一助となれればと願っています。

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