キャリア・学び

きらり臨床検査技師 [第28回]松林 正人さん(三重ハートセンター臨床検査科 技師長)
臨床検査技師と臨床工学技士の二刀流——循環器専門病院で培われた専門性の深化

2026.04.29 06:00 会員限定記事を示すアイコン



臨床検査技師と臨床工学技士の2つの資格を持ち、循環器専門病院で検査と治療を支えてきた三重ハートセンター臨床検査科技師長の松林正人さん。ダブルライセンスを志した背景には、循環器に深く関わりたいという一貫した思いがあった。

節目ごとに出会った2人の師から何を学び、どのように現在の専門性を築いてきたのか。若手へのメッセージとともに聞いた。


 

ダブルライセンスの原点は「検査も治療も担いたい」

―臨床検査技師養成の4年制大学を卒業された後に、臨床工学技士の資格も取得されています。まず、ダブルライセンスを志した経緯を教えてください。

進学先の藤田医科大学で臨床検査を学ぶうちに、生命の中枢的な臓器である心臓に強く惹かれるようになりました。臨床検査の分野では、リアルタイムに心機能や血行動態を把握できる心エコー検査に魅せられていきました。より深く循環器に関わりたい、そして検査だけでなく治療にも携わりたいと思うようになったんです。

臨床工学の分野では、人工心肺やカテーテル治療など、心臓治療の最前線に関わる機会が多いと知りました。自分の志向に合っていると感じ、大学卒業後に併設の短期大学へ編入し、臨床工学技士の資格を取得しました。検査と治療の双方に関われる立場になりたい——それがダブルライセンスを志した理由です。

 

師との出会いが築いた、医療人としての土台

―最初の就職先は済生会松阪総合病院でしたが、学生時代から当時技師長だった山本幸治氏(現・三重県臨床検査技師会 参与)とのご縁があったそうですね。

大学時代の臨地実習で済生会松阪総合病院に訪れた際、山本さんに声をかけていただきました。「臨床工学技士の資格も取ろうと思っています」と話したところ、「いいじゃないか。ぜひうちに来なさい」と言ってくださったんです。

入職後も折に触れて指導を受けました。専門領域は山本さんが消化器、私が循環器と異なっていましたが、私の進む道を尊重していただきながら、学会発表の姿勢や医師との関係性、さらには場に応じた立ち居振る舞いに至るまで、多くを学びました。山本さんと過ごした時間は、医療人としての土台を築くかけがえのないものでした。

 

―技術的なことについても山本氏から学ぶことは多かったのでしょうか。

もちろんです。山本さんは全国トップクラスのソノグラファーであり、私はその大きな背中を追いかけていました。当時、日本でも血管エコーが広がっていく時期で、ともに血管診療技師などの新たな認定資格を取得したり、「検査部門として血管エコーをどう展開していくのか」を議論したりする中で、多くの手ほどきを受けました。

約7年の在籍期間中、超音波検査とカテーテル業務の双方に関わることができ、検査と治療の現場を横断する経験を積むことができました。自分が思い描いていた働き方はこの時点で一つの形になっていましたが、さらなる専門性の修得を求めて三重ハートセンターへの転職を決意しました。

瑞宝双光章祝賀会にて医療人としての原点を築いてくださった山本幸治氏と。
医療人としての原点を築いてくださった山本幸治氏と。

 

イメージとリズムの二刀流が臨床検査技師としての視野を広げる

―循環器専門の三重ハートセンターへ転職されて、最初に感じたギャップは何でしたか。

最初は「ここでやっていけるだろうか…」と思うほど衝撃がありました。単純に件数が多いのもそうですが、診断から治療に移るまでのスピード感がこれまでとまったく違い、検査技師の関わり方にも大きな違いがありました。済生会松阪総合病院でもカテーテル治療自体は経験していましたが、三重ハートセンターでは当時から検査技師などが清潔操作で医師の横に立ってデバイスの補助を行い、治療現場に深く入り込んでいました。

また、多職種間の距離が非常に近く、多職種カンファレンスでは、医師が検査技師に意見を求める場面も少なくありません。エコー画像を前に治療方針を議論する場に、検査技師が当然のように加わる。そうした環境に身を置くことで、否応なく自分のレベルも引き上げられていきました。

 

―そこで大きな影響を受けたのが、元技師長の内田文也氏(現・三重大学医学部附属病院超音波センター 副センター長)だったのですね。

現在の専門性の礎を築くきっかけとなった内田文也氏と。
現在の専門性の礎を築くきっかけとなった内田文也氏と。

内田さんは私にとって第二の師匠です。三重県で最初にカテーテルアブレーションに立ち会った検査技師の一人で、この分野ではパイオニア的存在でした。以前から学会での講演を聴講しており、循環器担当の検査技師として憧れの存在でした。しかも、私と同じダブルライセンスを持ち、その両方を生かして働いていた。私が思い描いていた理想を、まさに体現している人だったんです。

当センターに転職した当時、内田さんから「イメージとリズムの二刀流になりなさい」と言われました。エコーは画像、つまりイメージの世界です。手術や人工心肺業務に携わる中で、術前に評価した弁膜症の肉眼所見やダイナミックに変化する血行動態を実際に目の当たりにし、それを検査へフィードバックすることで、心エコー検査の理解はより深いものになりました。

一方、心電図はリズムの世界です。12誘導心電図やホルター心電図で捉えた不整脈を、術中に心内心電図として観察することにより、その起源や頻拍の旋回路を立体的に捉えられるようになりました。こうした経験を通して、心疾患をイメージとリズムの両面から相互的に捉える視点が養われ、心臓の解剖や病態をよりリアルに思い描けるようになりました。イメージとリズム――その2つを掛け合わせることで心臓の見え方がさらに深くなる。そう教えられた師の言葉の意味を、今改めて実感しています。

術前にエコーを撮った後、手術にも立ち会う
臨床検査技師として術前後の検査を行い、臨床工学技士としてカテーテル治療や手術にも立ち会う

点ではなく線で捉える姿勢が成長を促す

―現在は技師長として若手育成にも携わられていますが、検査技師として成長していくうえでどのような姿勢が重要だとお考えでしょうか。

若いスタッフには、患者さんを“点”ではなく“線”で捉えることの大切さを伝えています。単回の検査で役割を終えるのではなく、その後の経過や治療による変化まで追いかけていく。つまり、点と点を結び付けて線にしていく。その積み重ねが、検査の質を高めていくのだと思います。

学びは、必ずしも珍しい症例から得られるものばかりではありません。日常的に出会う症例であっても、長く丁寧に追っていけば、本質的なことが見えてきます。実際には、教科書通りに進む症例ばかりではありません。同じように見える症例でも少しずつ違いがあり、そうした差異を自分の中に蓄積していくことが大切です。検査データだけでなく、患者さんを継続して捉える視点を持つことが、検査技師としての成長につながるのではないかと思っています。

 

―最後に、若手技師へのメッセージをお願いします。

新卒の方の中には、総合病院で幅広く経験を積むことが、将来の選択肢を広げると考える方も多いと思います。それは一つの考え方として決して間違いではありません。

ただ、これからの時代に求められるのは、“広さ”に加えて、自分の専門領域を徹底して掘り下げる“深さ”だと考えています。一つの分野に強みを持つ検査技師がそれぞれの領域で増えていくことが、医療全体の質の底上げにつながり、検査技師としての価値向上にも寄与していくのではないでしょうか。患者さんを“点”ではなく“線”で捉える視点を持ち、自分にしか築けない専門性を大切に育ててほしい――それが若手技師への願いですね。

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