キャリア・学び

POCTの実践 [第6回]牟田 誠矢氏(久留米大学病院 臨床検査部)
〈事例4〉手術室常駐検査技師の視点から見たPOCT管理 ―教育・精度保証・機器管理の実践―

2026.03.25 06:00 会員限定記事を示すアイコン

POCT機器は「短時間で結果が得られる」という大きな魅力がありますが、その信頼性は適切な管理体制があってこそ確保されます。私は手術室常駐の経験から、血液ガス分析装置、活性化凝固時間(ACT)、血糖測定器の運用において、教育体制の不十分さに起因する測定や解釈の誤りに数多く直面しました。この現状を改善したいとの思いから、認定POCコーディネーターおよびPOCT測定認定士を取得し、院内でのPOCT管理の適正化を推進してきました。本稿では、手術室に常駐する臨床検査技師として、これまで取り組んできた教育、精度保証、機器管理を紹介し、POCT機器導入における課題と工夫を解説したいと思います。

 

院内導入されている幅広いPOCT機器

当院では血液ガス、ACT、血糖測定器を中心に管理しており、2025年の院内調査では血液ガス8台、ACT12台、血糖161台の測定器を確認しました。手術室ではCBC測定装置や生化学測定用ドライケムを用いており、2023年には凝固測定を迅速に行う目的で全血フィブリノゲン測定装置と血液粘弾性検査装置も導入しました。新規導入は麻酔科医の要望や臨床検査技師、臨床工学技士の提案をもとに決定しています。一方、他の診療科では臨床検査技師に相談なく購入申請が進められることもあり、多職種が関与する導入体制や情報共有の仕組みは十分に整っていません。血糖測定器については、看護部が年1回の調査を行い、購入申請を臨床検査部に共有することで、診療科ごとの独自購入はなくなりました。

 

全診療科で求められる教育の取り組み

手術室では毎年5月に新人看護師研修を行い、採血管の使い分けや血液ガス・ACT・血糖測定器の操作方法と注意点を教育しています。また、生理食塩水の混入や溶血といった典型的なトラブル事例を取り上げ、誤処置を防ぐためのデータの見方についても指導しています。資料は手術室内の検査室に常備し、機器のそばには簡易マニュアルを配置して、研修医や新人看護師でも操作できる環境を整えています。麻酔科医には異常データが出た際に資料を示しながら説明し、誤処置につながらないよう日常的に注意喚起を行っています。

ただ、教育の中心は手術室に限られており、全診療科における継続的な教育体制はまだ整備されていません。実際に、血液ガス装置の電源切断やプローブ折損といった教育不足に起因するトラブルも発生しました。これらの経験は継続教育の重要性を示しており、今後は手術室での取り組みを基盤として全診療科に教育体制を広げ、POCTの安全性と信頼性をさらに高めていく必要があると考えています。

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POCT装置での精度保証の現状

血液ガスは自動QCに加え、一括管理システム(AQURE:ラジオメーター社)を用いて集中管理しています。各診療科の稼働状況やエラーを把握でき、リモートでキャリブレーションやQC測定も可能です。異常があれば速やかに現地に赴き、適切に対応します。血糖測定器は各診療科の看護師が月1回のコントロール測定を担当し、現場主体の精度管理体制を構築しています。ACTについては市販QC供給停止の影響を受けた時期もありましたが、新機種導入によって再びQC体制を整備できました。

また、『業務日誌』については、全ての診療科で共通様式を整備し、イントラネットで共有しました。日常点検や月1回のQC、エラー件数などを記録し、看護師が記載と精度管理を担い、臨床検査部の業務負担を最小限に抑えています。さらに、臨床検査部が年次監査で記載状況を確認し、不備があれば是正を求める仕組みとしました。このプロセスを通じて記録意識が高まり、機器管理の標準化やトラブル予防へとつながっています。

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標準化と可視化、継続的な教育の重要性

POCT機器を導入するときは、まず現状調査により測定数や導入目的を把握し、認定POCコーディネーターを主体とした導入提案体制を整えることが重要です。次に、教育を通じて「測定目的の明確化」と「結果解釈の正確性」を共有し、適切な使用と信頼性の確保を図る必要があります。そしてQCや業務日誌を看護師主導で管理し、臨床検査部の年次監査で改善を繰り返すことで、機器管理の標準化と診療の安全性向上につながります。小さな取り組みからでも、標準化と可視化、教育を重ねていけば、POCTは診療に大きな安全性と臨床的価値をもたらすものと強く確信しています。


  ※MTJ本紙 2025年11月21日号に掲載したものです

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