変わり続ける検査の現場 #29 私立秋田総合病院
教育ラダーが支える人材育成の試み 新人教育など3種ラダーでスキル可視化

市立秋田総合病院(秋田市、337床)の臨床検査科では、臨床検査技師向けの教育ラダーシステムの整備が進んでいる。新人向けの研修ラダーをはじめ、中堅検査技師向けのクリニカルラダー、技師長・主任ら役職別のキャリアラダーの3種類を2024年4月から導入。検査技師の知識やスキルを可視化する取り組みで、組織全体の底上げを図っている。
同病院は27診療科を持つ地域の中核的な急性期病院だ。地域救急を24時間体制で支える臨床検査科には嘱託3人を含めた27人の検査技師が所属する。夜間休日は原則1人体制で、緊急検査や輸血対応などを担う場面も少なくない。こうした現場環境の中で、一定水準の実務能力と判断力をいかに確保するかは検査室運営の課題だった。
装置や人員に応じたラダー設計
新人教育で活用する研修ラダーの検討が始まったのは2023年ごろ。翌年に控えた病院機能評価の更新審査を契機に、検査技師を含めた医療専門職の初期研修体制の再整備に着手した。
渡辺智美技師長は、以前の新人研修について、「担当する検査技師によって指導内容が違ったり、運用にもバラツキがあったりした。それを今の検査科の実態と見合った研修メニューに整理した」と振り返る。新人向けラダーは、看護職や他施設のラダーを参考にしつつ、各部門の主任検査技師らが検討。病院規模や装置、人員などの実態を加味した独自ラダーとして、2024年4月から運用をスタートさせた。
新人向けラダーは、生理機能、細菌、一般、血液、輸血、生化学、採血の7部門で、各部門に研修期間と業務内容を設定し、「到達目標」「達成すべき業務内容」を段階化した(図1)。自己評価と指導者評価を記録し、主任がチェックし、承認すればラダーアップとなる。予定された内容を順調に習得すれば数カ月で一巡する研修プログラムとなっている(図2)。
運用重ね内容改善
新人向けラダーは運用開始後も微調整を重ねている。例えば、研修期間中に臨床からの検査オーダーのなかった項目は、後日、研修機会を確保するなど柔軟に対応している。「まずは動かし、課題を洗い出す。研修を受ける側と、指導する側が意見を交わしながらPDCAを回している」と渡辺技師長は話す。
研修内容の可視化で不安軽減
初年度に新人向けラダーで研修を受けた検査科の佐川萌乙氏は、「事前に研修内容が分かるので準備ができ、不安や緊張が軽減された」と語る。さらにラダーを活用した自己評価で、「業務習得の実感や、モチベーションの維持につながったと感じている。研修内容のフィードバックも客観的に行いやすく、実務能力の向上につながった」との受け止めだ。
ラダーを通じた面談やフィードバックにより、課題を客観的に把握しやすくなったのもメリットの一つといえる。評価基準が共有されたことで、育成方針を検査科全体で確認できる環境が整いつつある。
中堅技師ラダーで自己評価を実施
同病院では、中堅検査技師向けのクリニカルラダーや、役職別のキャリアラダーも整備している。
中堅検査技師向けのクリニカルラダーは、各部門で日常的に求められる実務能力を数段階に設定し、異動時や年度末の自己評価に活用している。各部門の専門性を高めるだけでなく、非常時の部門間での相互サポートに必要な最低限のスキルを確認する役割も担う。渡辺技師長は、「ラダーを見ながら自身のレベルを把握し、課題や目標を確認する。業務知識や自己研鑽の積み重ねが見えやすくなり、人事評価にも役立てることができる」と説明する。
役職別ラダー、マネジメント能力を整理
一方、役職別のキャリアラダーでは、現場の検査実務ではなく、技師長や副技師長、主任といった役職ごとに求められるマネジメント能力を整理した。業務管理や人材育成、組織改善、経営貢献、トラブル解決能力などの項目で、院内の医療安全や感染対策活動への参画なども明示している。キャリアアップの目安や力量を客観的に評価するツールとして、面談や人事評価の参考材料としての活用が進む(図3)。
若手人材確保へ環境整備
秋田県内には検査技師養成校がなく、次世代を支える若手人材の確保は大きな課題となっている。渡辺技師長は「体系的に検査実務を学べる環境は、若い世代にとって魅力の一つになると感じている。秋田で育って他県で勉強し、検査技師として戻りやすい環境づくりを進めたい。学会参加や認定資格など自己研鑽の支援にも力を入れていきたい」と語る。
3種類のラダーが稼働して約2年。新人向けラダーは少しずつ軌道に乗り始めた一方で、中堅や役職別ラダーの定着には中長期的な検証が求められている。渡辺技師長は「課題はあって当たり前。つくって終わりではなく、長期スパンでのアップデートが重要」と話す。検査技師に必要な知識やスキル向上を目指す、地方の中規模病院検査室の取り組みは始まったばかり。未来を見据えた組織基盤づくりの検証と改善は、今後も続いていく。
MTJ本紙 2026年4月1日号に掲載したものです。
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