キャリア・学び

きらり臨床検査技師 [第27回]子甫  徹さん(馬場記念病院検査部)
救急を読む力——迅速・的確な心電図判読で命をつなぐ

2026.03.18 06:00 会員限定記事を示すアイコン



医師の働き方改革に伴うタスクシフト・シェアの拡大で、救急現場でも臨床検査技師の活躍が期待されている。こうした中、馬場記念病院(大阪府堺市、300床)では開院当初から、救急外来で臨床検査技師が心電図検査などに携わり、チーム医療を支える欠かせない存在となっている。心電図のエキスパートである同院検査部副主任の子甫徹さんは、検査を通じて他職種と連携して救急患者の重症度・緊急度のトリアージなどを支援。その一方で、さまざまな認定資格を取得して研修会などで技術を伝えるとともに、学会参加や仲間との自主勉強を続け、研鑽をかかさない。その思いは全て「目の前の患者さんを助けたい」である。


 

大学病院で鍛えられた“所見力”

―どのようなキャリアをたどってこられたのでしょうか。

国家資格を取って最初の2年間は、任期付き職員として大阪市立大学医学部附属病院(現大阪公立大学医学部附属病院)に勤めました。生理検査を担当し、心電図や呼吸機能検査、脳波検査をしっかり学びました。任期を終え、そのまま生理検査を専門として当院に入職して今に至っています。

―最初に大学病院を選ばれたのはどうしてですか。

臨地実習先の施設だったので、そこで私の学び方とかを見て、採っていただけたんだと思います。大学病院は専門分野がある程度固定されるので、最初から生理検査を専門としました。心電図も脳波も自分で所見をつけるんです。今は自動診断で出てきたものをそのまま臨床に返してる病院がほとんどだと思うんですけど、補助ツールである以上、最終判断は人が行う必要があります。大学病院では、自動診断に間違いがあれば訂正して医師へ報告しました。

大変でしたが、それで鍛えられました。呼吸機能検査や脳波検査も学ぶ時間が結構あったので、じっくり習得することができました。

―そもそも臨床検査技師を目指されたきっかけはなんだったんですか。

知人が臨床検査技師の仕事をしていて、面白そうだなと思いました。もともと高校で化学の授業が一番好きだったこともあり、その知識を生かすことができるのではないかと考えて専門学校に進みました。

学生時代に「海遊館」(大阪市にある水族館)でアルバイトをして初めて知ったのですが、臨床検査技師って実は水族館の中でも必要とされている仕事なんですよ。

アザラシやイルカのエコーを撮ったり、ペンギンの採血をしたり。もしかしたら、臨床検査技師になったら動物の方の仕事もできるんじゃないかなと淡い期待を持って入ったんですけど、実際、病院で働いてみたら、人間相手の方が面白いと思うようになりました。

救急・カテ室・オペ室へ広がるフィールド

―現在の検査室での役割を教えてください。

心電図、呼吸機能、脳波のほか、心血管エコー、神経伝導と幅広い検査を担当しています。負荷心筋シンチグラフィーやカテ室(カテーテル室)での心電図・バイタルモニタリング、オペ室(手術室)での神経モニタリングと、検査室から出て多職種で診断・治療に当たる仕事もしています。

また、後輩の育成だけでなく、2年ほど前からは副主任として検査室のマネジメント業務も担っています。スタッフみんなが意欲を持って検査に従事できるようにするにはどうすればよいか、マネジメントの研修を受講したり、本を読んだり、ユーチューブなどを見て勉強しています。

マネジメントは検査とは全く違う仕事ですので試行錯誤の連続ですが、検査室のみんなに支えられながら、日々向上を目指しています。

―救急現場へは当初から参画されたのですか。

当院は、開院当初から救急外来の心電図は臨床検査技師が行っています。病院の理念が「患者さま第一」「地域医療への貢献」なので、多職種で心を一つにして業務に取り組んでいます。ですので、チーム医療が最も発揮される救急現場で、臨床検査技師も24時間365日、自然な流れで心電図を担当しています。

また、研修医や若手医師に対して、エコーの技術サポートを積極的に行っています。しっかりとした技術と知識を持って正しい検査結果を報告できるよう、積極的に講習会や学会に参加して技術を研鑽し、資格取得にも努めています。

研修医に心エコーの読影をアドバイス
研修医に心エコーの読影をアドバイス


認定資格はこれまで、日本臨床検査同学院の呼吸機能検査(2級)、日本不整脈心電学会の心電図専門士、日本臨床神経生理学会の認定技師(脳波・筋電図分野、術中モニタリング分野)、日本超音波医学会の超音波検査士(循環器、血管)などを取得しています。

近年は心電図検定ブームで検定対策の講演をお願いされることもあるので、それまで受けたことがなかったのですが、2024年に日本不整脈心電学会・心電図検定のマイスターも取得しました。

院外では、大阪府臨床検査技師会学術部の生理検査部門の部門員として、心電図を中心に技師会で講演の機会をいただいています。最近ではカテ関連の学会で、臨床工学技士や診療放射線技師、看護師とも交流して刺激をもらっています。

命の現場で問われる判断力と覚悟

―救急現場に携わる中で、活躍の場を広げてこられたのですね。

救急現場では命の危険にさらされている患者さんが目の前にいますので、迅速に重症度・緊急度をトリアージする必要があります。多職種のチーム医療の中で、臨床検査技師も的確に行動しなければならない。そうでなければ、目の前の患者さんを救うことはできません。

臨床検査技師は診断、治療、看護に携わっている自覚を持つことが一番大事だと思います。救急での業務を通じて私もそれを実感し、医療人であることを強く自覚するようになりました。

具体的な症例を挙げると、意識消失で救急搬送された患者さんがいました。来院時はバイタルも安定しており、入院して経過観察という方針になりました。

私が心電図を記録すると、QT時間が著明に延長していました。今は落ち着いていても、致死性不整脈が起こる可能性があると判断し、「すぐにモニター心電図を装着して、入院後も厳重に管理した方がよいと思います」と医師と看護師に伝えました。

その後、病室へ移送するためエレベーターに乗った際、心室細動が発生しました。すぐに対応できたことで大事には至りませんでした。事前に注意喚起できていたことが結果的に功を奏しましたが、波形を自分の目で読み、異常を疑う大切さを改めて実感した症例でした。

救急外来やオペ室で仕事をしていると、看護師やコメディカルだけではなく、研修医や専門外の医師からも検査の知識・技術が必要とされていると日々実感しています。

―今後の目標はありますか。

大それた目標はありませんが、検査室の中、病院内での活動、病院外での学術活動など、自分に与えられた目の前の活動を一つ一つしっかりこなしていきたいと思います。

思い入れのある研究会の一つに、大阪の「心電図自主勉強会」があります。私の心電図の師匠たちが20年ほど前に立ち上げ、大阪らしいボケありツッコミありのアットホームな勉強会です。

コロナ禍で休止状態でしたが、復活の要望もあり昨年再開しました。オンラインが盛んになっている時代の流れに逆らって、対面式で和気あいあいと勉強しています。その場で質問がたくさん出て、時には笑いが起きるような勉強会は、他に経験がありません。これからも勉強会を続け、後輩たちが活動を引き継ぎたいと思ってくれるようにしたいと思っています。

自主勉強会の打ち上げで仲間と
自主勉強会の打ち上げで仲間と

AI時代にこそ必要な“人と人”の力

―若手の臨床検査技師へメッセージをお願いします。

どんどん検査室の外に出て活躍してほしいと思います。特に救急外来では、検査室で経験することのない緊急性の高い症例に出くわします。プレッシャーのかかる現場ではありますが、命の危険にさらされている患者さんを目の前にすると、自分たちの検査の重要さを実感し、医療人としての自覚が芽生えます。

また、働き方が多様化し、AIの導入も避けられないこれからの時代は、より一層、人と人とのコミュニケーションが大事になってくるのではと感じています。

検査室、病院の外に出ていろんな人と接し、患者さんのためになる検査をつくり上げていってほしいと思います。

 

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