Up to Date! 臨床検査エキスパートレビュー # 一般02
尿沈渣中好酸球の再評価——最新知見からみた急性間質性腎炎(AIN)診断での位置づけ


AIN診断における尿中好酸球の限界
急性間質性腎炎(AIN)は、入院患者における原因不明の急性腎障害(AKI)の10~15%を占め、診断のゴールドスタンダードは、斑状の炎症性浸潤を伴う腎生検を必要とする。1978年、Galpinらは好酸球尿とAINの関連性を示唆し、尿中好酸球は非侵襲的な診断指標として期待された。
しかし近年の研究では、腎生検で確定診断されたデータに基づく過去の複数研究を検証し、「感度は約30%、特異度は約68%に過ぎず、尿中好酸球の有無はAINの診断において有益な情報を提供しない」と明確に結論づけた1)。さらに、1,686名の尿中好酸球スクリーニングと腎生検結果を照らし合わせた別の大規模研究では、好酸球尿が見られた患者のうち、実際にAINであったのはわずか16.6%であり、好酸球尿の感度は20.0%、特異度は83.3%、陽性予測値(PPV)は16.7%、陰性予測値(NPV)は86.2%であった2)。また、同報告の著者らは「不適切な薬剤中止やステロイド導入のリスクを伴うため、AINのマーカーとして使用すべきではない」と強く警告している。
一般検査のエキスパートレビュー
わが国の尿沈渣検査においても、尿中好酸球はAINを示唆する所見としてかつては扱われてきたが、現在では「参考所見の一つ」という考え方が主流である。
これは、表12)に示すように、症例数は少ないものの本研究において尿中好酸球はAIN特異的ではなく、糸球体腎炎など多様な疾患で出現するため、病態特異性に乏しいことが最大の理由である。すなわち、陽性でも診断確定には使えず、陰性でも除外できないという、単独診断マーカーとしての限界を示している。
| 腎生検による診断(N = 18) | N(%) |
| ANCA血管炎 | 4(22.2) |
| アミロイドーシス | 3(16.7) |
| 急性間質性腎炎 |
3(16.7) |
| IgA腎症 |
2(11.1) |
| 膜性腎症 |
2(11.1) |
| IgA血管炎 |
1(5.6) |
| 感染関連糸球体腎炎 |
1(5.6) |
| クラスIVループス腎炎 |
1(5.6) |
| 慢性疾患の所見のみ | 1(5.6) |
〔Sousa SILE, et al : J Bras Nefrol, 48 : e20250322, 2026より改変〕
この知見は極めて重要で、同報告の著者らも警告している通り、AINは薬剤中止やステロイド治療の適応判断が予後を左右する疾患であるが、尿中好酸球を根拠に診断すると、不必要な薬剤中止や免疫抑制療法の導入を招く危険性がある。特に高齢者や多剤併用患者では、原因薬剤の中止が原疾患の悪化につながる可能性もあり、診断精度の低いマーカーへの依存は有害となりうると考えられる。
尿中好酸球の出現から何が読み取れるのか?
特に目視鏡検を重視するわが国の尿沈渣検査では、好酸球自体の有無よりも、「どのような炎症細胞が、どのような背景所見とともに出現しているか」を総合的に評価することが重要と考えられる。
なぜなら、表2に示すように、βラクタム系抗菌薬などによる典型的な薬剤性AINでは、末梢血好酸球増多や尿中好酸球が出現しやすいが、NSAIDs関連AINでは、むしろリンパ球主体となり、尿中好酸球は出現しにくいことが知られている。これらの知見は、AINにおける尿中好酸球の低い感度を裏づけている。
| 所見 | 典型的な薬剤性AIN | NSAIDs関連AIN |
| 発熱 | 多い | 少ない |
| 発疹 | 多い | 少ない |
| 好酸球増多 |
多い |
少ない |
| 尿中好酸球 | 出やすい |
出にくい |
| ネフローゼ蛋白尿 |
比較的少ない |
比較的多い |
NSAIDs:non-steroidal anti-inflammatory drugs(非ステロイド性抗炎症薬)
したがって、尿中好酸球が出現した場合には、末梢血好酸球増多、白血球円柱の有無、尿中TNF-αやIL-9などの新規尿バイオマーカー、薬剤服用歴などの背景とともに考察することで、薬剤性AINやアレルギー性腎障害を疑うきっかけにはなるかもしれない。
引用文献
1)Koirala P, et al : The rise and fall of the urine eosinophil. ACP Hospitalist, May 29, 2024(https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/acph-20240529-the-rise-and-fall-of-the-urine-eosinophil)
2)Sousa SILE, et al : Analysis of urine eosinophils and kidney biopsy findings. J Bras Nefrol, 48 : e20250322, 2026
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